なにかおかしい。なにかがおかしい。考えては駄目だ、解決しようとしないで、近づきすぎています。何も言うべきではなかった。何も言ってはいけない、すまない。
SCP-4972 - SCP財団
より,2022/08/15閲覧
SCP-4972とは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『Something is Wrong (なにかおかしい)』。「SCPなんてだいたいなにかおかしいだろ」と思うだろうが、わざわざこのメタタイトルが付くくらいにはなにかおかしいのが今回のオブジェクトである。
SCP-4972は、サイト-22にある適応収容チャンバー (Adaptive Containment Chamber、以下ACC) 内に存在すると推定される物体、実体または現象である――というのが、SCP-4972に唯一存在する説明である。この内容から分かる通り、財団はSCP-4972とはなんなのかはまったくわかっていない。わからないから危険であるかどうかさえわからないので、オブジェクトクラスもUnknownということになってしまっている。
SCP-4972の存在が最初に見つかったのは、サイト-22の定期的なシステムスキャン中であった。前回チェック終了後に、未使用とされているはずの区域が大幅に電力を消費していることがわかり、行ってみるとACCがそこに発見され、SCP-4972を収容していることを示す記号が記されていた。
ACCは、脅威レベル赤の危険なアノマリーを安全に格納するために設計された実験的収容チャンバーである。赤の脅威レベルが付与されるアノマリーは予測不可能かつ大規模な被害 (往々にしてK-クラスシナリオに相当するもの) を齎すものであり、これを安全に格納できるならたしかに素晴らしい研究である。しかし、SCP-4972が発見された当時、ACCはまだプロトタイプさえ完成していなかった。加えて、サイト-22の職員はなぜACCがこの区域に輸送されたのかをまったく説明できなかった。なにしろ、そんな記憶が無いのである。また、「そもそもなんでサイト-22の該当区域がそれまで未使用だったのか」も。
財団はACCの起源をたどるべくアーカイブを閲覧したが、以下のO5-6のメッセージのみが残っていた。
適応収容チャンバーの封鎖を解かないでください。チャンバーに入ったり、何かを取り出そうとしたりしないでください。チャンバー内を観察しようとしないでください。内容を推測しないでください。内容について考えないでください。
O5-6(コマンドコード ████-████-████-████)
SCP-4972 - SCP財団
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だが、このO5-6本人にきいても、そのようなメッセージを残したことはない、とやはり記憶はなかった。また、コマンドコード自体は使われなくなった古いものが使われていた。サイト-22職員及びO5-6の記憶を直接復元する試みも失敗に終わっている。SCP-4972の性質を確認するため、カレ博士は以下のような実験手順を策定した。
まず、すべての試験はDクラス1人だけで実施される。この試験の経過を監視する記録装置は存在しない。全てのセキュリティ担当者は入室時にACCから視線を外す必要があり、また防音ヘッドギアを着用する。
Dクラスが内部にとどまる時間は事前に指定され、この時間が経過するまで解放されない。時間になってもDクラスが退出しないならばACCは封じ込めたままになる。退出したDクラスは除染され、身体異常のスキャンを受けた後、カレ博士にインタビューを受ける。このインタビュールームは密閉され、インタビュアーとDクラスは別々の区画にわけられる。実験終了後、Dクラスに問題がないとわかればクラスA記憶処理を実施する。
1回目の実験では女性のDクラスがACCに入った。彼女は120秒後にACCから退出。Dクラスは特に違和感を感じず、ただの部屋だった、と説明する。その後ACCの内部についての説明が少々入るが、おかしいことはなにもなさそうだ。とにかく、彼女はなにも違和感を感じず、2分間立ち止まって、ドアをノックして、ひどい朝食の騒音のようなものがあったけどそれだけであった、という。
カレ博士は一瞬、『ひどい朝食の騒音』とやらに違和感を覚えたようだが、特に掘り下げることはなかった。カレ博士は面接室のドアから退出し、Dクラスも奥の壁から出ていく。……壁?
2回目に入ったのは男性のDクラス。彼は5分間内部にとどまっていた。彼は入る前に通常の人間の能力を超えた現象の知覚を可能にするための認知療法を数度受けている。彼はいい意味でやばい、と非常に気分が良さそうにしていた。彼はACCに入ったという話をしたと思えば、すぐに幼い日に見ていた『バーナード・ザ・バウンシング・バニー』というテレビ番組の話をしはじめる。それは元気ウサギのバーナードというキャラクターが中心となっている番組らしい。空気はまるでアイスクリームのようにすくい上げられ、それは夢のような心地であったと。この番組の説明や自分の幼少期の思い出をひたすら語るDクラスの話を、カレ博士はメモを取りつつ聴いている。ひとつ話が終わると10秒、次は1分、次は7分、次は5時間、そしてウサギの名前を再確認して、それについて634年間メモを取った。カレ博士は面接室のドアから退出し、Dクラスも同じ側のドアから退出した。
最後に入ったのはカレ博士。……あれあなた自分で「Dクラスだけが入れる」って決めてなかったっけ。カレ博士は6時間ACCに入っていた。このときサイト-22は別件の収容違反が起きており、ACCに割り当てられていた警備員はその違反を止めるためにいなくなっていた。カレ博士はこれ幸いと無許可試験に及んだと見られている。レスティ博士はカレ博士にどうしてそんなことをしたのか強い語気で尋ねる。
しかしカレ博士の様子は、どこかおかしい。私はどちらですかとよくわからないことを言い始める。なにかが起こる前に知らせないと、何かを話さなければというが、出てくるのは開けるべきではなかった、言葉を持っていない、多すぎる、削らないと、私は何を言っているんだ、泡風呂のようだ、ととにかく支離滅裂になっている。
拡散、拡散、ええと、希釈、そうだ、それが言葉だ。それがそうだ – これを書いては駄目だ、これを書いては駄目だ!近づきすぎる!
SCP-4972 - SCP財団
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最後には、なにかおかしい、考えようとしてはダメだ、何も言うべきではない、といい、手を見下ろして叫び、ここはどこだと錯乱した。2人めのカレ博士が観察窓に近づいて、前屈みになって大きく笑い、ガラスをリズミカルに叩くと7秒後に床に沈む。レスティ博士は面接室のドアから出るが、カレ博士は出ない。
SCP-4972がなんなのか、わかるであろう情報は何もない。ここでは、「存在する」「存在しない」の2パターンに分けて考えていこう。
SCP-4972が存在する場合、SCP-4972はとりあえず「理解しようとすればするほど、逆になにかを理解できなくなる」ものであると考えられる。知らないままであれば何の問題もないが、ちょっと知ると「壁」とか「問われている内容」とかそういった概念が吹っ飛び (だからDクラスは壁抜けしている) 、最後は「自分とはなにか」すらわからなくなり、カレ博士は自分とレスティ博士の区別もままならなくなり、しまいには増えたりした。のろろ☆メーデーの本オブジェクト解説動画
でも霊夢が「分かる」とは「分ける」ことであると示すように、境界を理解できなくなることで、結果なにもかもわからなくなったのだと考えられる。
では、ACCはこれにどう有効に作用しているのだろうか。おそらくACCは内部に収容されたものを理解しようとすることをそもそも阻害することで、K-クラスシナリオを防ぐ意味合いがあるのだろう。上述のテストログはいずれも明らかに異様な点が多いのだが、それらについてカレ博士や、これをおそらく引き継いだであろう職員 (おそらくはレスティ博士) はまったく疑問視していない。疑問視するとはすなわちわかろうとする行為なので、それを妨害するのがACCの役目ということなのだろう。そしてこれをはたしたあと、O5-6はACCそのものとSCP-4972に関する記憶を自分を含め消去することで最悪の事態を防いだということになる。
逆に言えばそんなものをカレ博士が理解しようとしたのがそもそも間違っていたのであり、ひとりカレ博士だけが苦しむことになるのだろう。なお、カレ博士の概念自体が崩壊した証拠として、本報告書に載っているカレ博士の肖像が、ただの黒塗りであるということがあげられる。
今度は「存在しない」場合。SCP-4972というものはそもそも存在せず、ACCは「非存在」を収容しているということ。これは本報告書のディスカッションでも挙げられている仮説である。
この場合SCP-4972は存在しない「世界終焉の危機」を収容、もとい危なくない形に「修正」しようとしてバグってしまったため、それによって実験のためにACCに入った人もバグってしまったというものである。
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最終更新:2025/12/16(火) 00:00
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