夏の桀王はこのことを聞き、恐れ、学者である羿を軒轅の剣を持って十の太陽を討つために送った。九つの太陽は地に墜ち、ただ一つが逃げ延びた。しかし墜ちた烏は大地を火の海に変え、夏も同じく滅びたのであった。
蛇について - SCP財団より,2022/08/02閲覧
SCP-2481とは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
本項を読む上では、『ダエーバイト文明』『サーキック・カルト (ナラカ)』『壊れた神の教会 (メカーニズム/メカニト)』『羿』について触れておかねばならないだろう。先に挙げた3つはシェアード・ワールド『SCP Foundation』のなかに登場する文明及び宗教であり、それぞれ個々に詳述すればそれだけでニコニコ大百科上でも何ページにもわたる解説を要しよう。故に、概略のみを記しておくことに留意されたい。『羿』は古代中国の伝説に語られる弓の名手であり、同名の者が2人いる。こちらはその双方について述べておこう。
ダエーバイト文明は古代、南シベリアを中心として、ユーラシア大陸を支配していた巨大な文明であり、非人間実体『ダエーワ』を指導者とする呪術を用いた文明である。初出はSCP-140 (未完の年代記)に出てくる、現実改変によって徐々に復活を果たす帝国としての登場であった。女権主義的な文明であり、人間、とりわけ男性は基本的に人身御供や奴隷として使われるなど立場は非常に低かった。後にサーキック・カルトの開祖となるイオンはダエーバイトにおいて奴隷であった (ただし有能であったために司祭や錬金術師に使える召使であり、自身も魔術師として後に開花することになる)。
このダエーバイトの圧政に耐えかねた人間たちは、叛乱組織を生む。彼らは、蛇神ヤルダバオートやその使徒アルコーンの力を喰らったと自称する『崇高なるカルキスト・イオン』を指導者と仰ぐ。このイオンが起こした思想、ナラカ (ナラッキャ)は、ダエーバイトへの抵抗を続け、最後ナラカにより弱体化したダエーバイトは都市国家レベルにまで落ちぶれたところをチンギス・ハンに征討される。
こうして勝利したナラカは生きている有機物質で構成される文明、アディウム帝国を建国した。そしてアディウム帝国は今度は自らが征服者として世界中の文明に侵攻をはじめた。彼らを前に、機械の神、MEKHANEを信仰するメカーニズムという宗教は立ち上がる。メカーニズムの信奉者であるメカニトたちは、もはや人でなくなったイオンと、にくにくしくおぞましいアディウム帝国、そしてナラカたちをみて、彼らを「にくの」カルト、サーキック・カルトと呼び蔑むようになった[1]。
指導者ブマロのもと、メカーニズムはサーキック・カルトをギリシャのギャロス島で打ち破り、MEKHANEは自らのパーツを持ってヤルダバオートをイオンを異次元に幽閉した。しかしこの時MEKHANEもまた壊れてしまい力を失った。ブマロはMEKHANEを再構築するため、メカーニズムによる教会、『壊れた神の教会』を設立した。壊れた神の教会の信徒たちは、今日も機械のアノマリーを収集し続けている。やがて力を取り戻し再び来るイオンと、サーキック・カルトに立ち向かうため――。
メタ的に説明すると、ダエーバイト、サーキック・カルト、メカーニズムはいずれもアジアの習俗をSCPコミュニティがアブラハムの宗教の故事に落とし込むための設定として産み出されたものである。故に、この3者の話はアジア一帯を舞台にするにも関わらず、非常にキリスト教やグノーシス主義のそれに酷似している。
古代中国には、羿という名前の弓の名手が二人語られている。堯の時代の羿、通称『大羿』と、夏の時代の羿、通称『后羿』である。
まずは大羿の話をしよう。大羿は堯の時代の弓の名手であり、神様でもあった。彼は帝夋と羲和の間に生まれた息子である10体の太陽 (火烏) について相談を受けていた。いわく、本来ならば交代に1日で1体ずつ地上を照らす彼らだったが、10の太陽が同時に出現してしまったのだ。このせいで地上は灼熱地獄と化し、作物は全て枯れ果て、人々は苦しんでいた。大羿はこれを収めるため、10の太陽に向かい威嚇射撃を行った。しかし彼らは聞いてくれなかったので、仕方なく1体を残し、残る9体の太陽を射落とした。これにより地上波再び平穏を取り戻した。
しかし帝夋は自分の息子を射殺した大羿を疎んじ、大羿とその妻・嫦娥の神籍を剥奪した。これにより彼らは不老不死ではなくなったが、大羿は西王母の元を訪ね、不老不死の薬を2人分貰うことができた。これで再度夫婦ともに不老不死になれる――はずだったのだが、この不老不死の薬は2つ飲めば神に戻ることができる。嫦娥は大羿の分も奪って自分だけで飲んで神に戻ってしまった。
仕方がないので大羿はひとり狩りなどをして暮らしていたが、その際に逢蒙という男を弟子にした。この逢蒙という男はやがて、9人の美しい仙女と出会う。彼女らは、師が射殺した火烏の生まれ変わりであり、逢蒙に「羿を殺せば、あなたが世界一の弓の名手になれますわよ」と唆した。こうして逢蒙は大羿を撲殺してしまった。この故事より、身内に裏切られてしまうことを『羿を殺すものは逢蒙』と表現するようになったという。
后羿は、夏の時代の弓の名手。かつて同じ様に弓の名手であった大羿にあやかってこの名を名乗る。后羿は幼い頃、親とともに山に薬草を採取にでかけたが山中ではぐれ、楚狐父や呉賀といった弓の名手たちに育てられた。夏王朝の三代皇帝・太康が政治を顧みず狩猟に明け暮れていたのに乗じ、后羿は太康に反発する者たちとともに夏王朝の領土を奪い取り王となる。その後、政治的に対立した伯封を殺害した后羿は、その母であり美人であった玄妻 (純狐氏)を娶ると、太康のように政治を顧みず狩猟に明け暮れてしまった。
后羿の臣下に寒浞という男がいた。后羿は寒浞を重用し信用をおいていたが、寒浞自身は臣下の立場にとどまることを良しとしておらず、いずれ自身が王になろうという野望をいだいていた。そこに、自身の息子を殺害された玄妻が近づいて寒浞と共謀し、后羿は殺害されてしまった。皮肉にも、名前の由来となった大羿と同じように信頼していた者に裏切られ殺害される末路を迎えたのである。
なおSCP-2481は夏王朝の時代の話であるが、このオブジェクトの話で登場する羿はそのストーリーの内容から大羿とみられる。
SCP-2481 | |
基本情報 | |
---|---|
OC | Euclid |
収容場所 | サイト-143 |
著者 | SunnyClockwork |
作成日 | 2016年5月14日 |
タグ | サーキック 人間型 地下 場所 壊れた神の教会 夏王朝 彫刻 松明の子供達 歴史 爬虫類 現実改変 生物学 知性 自我 金属 |
リンク | SCP-2481 |
SCPテンプレート |
SCP-2481は中国は河南省の商王朝 (一般には殷王朝として知られる) の遺跡地下20mに存在する直径50mの球状空間。この内部は周辺環境によらず常に35℃に保たれている。
この内部にある大きな青銅の構造物であるSCP-2481-1は、立方体の面に4本の柱を取り付けたような形をしており、紀元前1800年頃に建造されたと考えられている。このころの中国の王朝と言えば、そう、夏王朝である。この装置は激しく損傷し、表面は溶け、高温にさらされたことを伺わせる。また、SCP-2481の境界線できれいに切断されており、外部では断片は発見されていない。この装置は8進数の演算装置であり、現代の電子機器の回路ボードに類似するという。
SCP-2481-2は、ベリリウム青銅でできた装置であり、概ね片方が尖った円筒形で、長さ33m、直径1mであったと推測されている。これはもともとSCP-2481-1に取り付けられていたと考えられているが、SCP-2481-1とことなり熱による損傷の痕跡はない。代わりに打撃を受けたのか、3つの大きな断片と38の細かい断片に分かれてしまっている。これを動かそうとするとSCP-2481内部の温度が上昇したり、SCP-2481-1のダメージが増加したり、後述の羿がダメージを受けたりするので、調査は殆どできていない。この装置は『軒轅の剣』と呼ばれており、羿曰く神を殺すことができる剣であるという。剣といってもこのサイズなので、実際に振り回すというようなことはなかったであろう。
そしてこの軒轅の剣の下敷きになっているのが、羿 (SCP-2481-3)である。彼はアマガサヘビの頭、鉤爪の付いた右腕、爬虫類の手、足の代わりの蛇の尾といった奇妙な外見をしており、人間の状態を保っているのは上部胴体くらいである。これは後述のとおり、夏王朝では割と普通のことらしい。下敷きになってしまったゆえか、重度の火傷を負い、左腕、喉の一部、顔の一部、大部分の臓器を失っている。しかし軒轅の剣の特異な性質故か、彼は生きている。喉がないので喋れないが、筆談は可能である。財団の言語学者はこの言語を現代中国語に翻訳することに成功している。基本的に漢族の人間には好意的だが、精神状態が不安定なため、同じことを話し続けたり、支離滅裂なことを話しており、軒轅の剣の技術的な内容の聴取には失敗している。
羿曰く、彼は夏王朝の学者であったらしく、弓は用いていない。代わりに、夏王朝の桀王 (最後の王である) の命で、第十の剣を用いて10の金烏 (後の調査でSCP-1428と判明) を倒そうとしていたという。しかし金烏に勝つことはできず、軒轅の剣の下敷きになってしまったという。
母たる龍・女媧は人を土から作った。女媧は陰を表す肉の神である。そんな彼女には混沌・窮奇・梼杌・饕餮・共工・祝融という6体の獣が仕えていた。
父たる蛇・伏義は文字と機械 (伏義八卦)を人々に教えた。伏義は陽を表す、金属の霊である。黄帝はこれを学ぶことでバケモノを打ち負かすことに成功した。
後の世で、禹王は禹台と呼ばれる神々を脅す塔 (SCP-2481-1) を9つ建立した。禹王は言った。「神々は父たる蛇と母たる龍の食物に過ぎず、我々はその子孫なのだから、神々など恐れるに足らない」と。後の世には、更に禹台が建立され、桀王の時代には49の禹台と、そこに取り付けて使用する神々を殺害する装置、すなわち軒轅の剣 (SCP-2481-2) が10以上作られた。
夏王朝では伏義と女媧の姿に近づくため、12歳で変身の儀式を受ける。農夫は鱗、職人は蛇の頭、学者は蛇の身体、支配者は龍となる。羿は夏王朝でも大きな貢献を讃えられ、複数の儀式を受けられたようだ。
この伏義と女媧であるが、双方ともに夏王朝の人間の祖と信じられていたわりに、あまり仲がいいわけではなかったようだ。伏義と女媧は相争い、伏義は自身の体を檻として女媧を太歳へと封じたという。
この伏義と女媧の話は、明らかに伏義がMEKHANE、女媧がヤルダバオートであることを意味している。夏王朝はすなわちメカーニズムが広く進行されていた文明ということになるが、他方で女媧 (ヤルダバオート) も信仰対象となっている。
ここまでの歴史は、SCP-2481の執筆者であるSunnyClockwork氏自身が書いたTale『作り手と獣』に詳しく書かれているのでそちらも参照のこと。
ある日、商王朝の人たちが、夏王朝を征服しようと、10の三つ足の金烏を夏王朝に差し向けた。この金烏を退けるため、桀王は軒轅の剣を使用することを忠臣たちに命じた。軒轅の剣は振り回して使う剣ではないと先に述べたが、より正確に言えば、対象の存在、心魂、はじまりからおわりまでの歴史、因果を消去する機械であった。早い話が現実改変装置である。
9本の軒轅の剣により、金烏は9体まで地に落ちたが、残り1体が逃げ延びた。そして、同時に9つも現実改変装置なんてものを操作してしまったせいで、夏王朝そのものが現実改変の影響を受け、10本目の軒轅の剣の下敷きになってしまった羿を除き、その全てが消失してしまった。あとから来た商王朝の人々は、もはや夏王朝のことを記憶すらしていなかった。ただ、壊れた軒轅の剣が明らかに危険物であることに気付いたらしく、それを地中に埋めることにした。
羿は使命を達することができなかったことを嘆いていた。しかし、財団が金烏 (SCP-1428) を収容していることを羿に伝えると、羿は大いに喜んだ。
この報告書の末尾は、シュエ・チン研究員がO5評議会メンバーに宛てた書簡で締められている。曰く、軒轅の剣は財団が生み出したスクラントン現実錨に非常に似た構造をしているのだという。軒轅の剣は一度のみ使用可能な現実改変兵器として産み出されたが、9つの軒轅の剣が同時に作動したことで、SCP-2481空間を除き、それ以外の夏王朝の痕跡をすべて消去してしまったのであろう。禹台が一部しか残っていないのに、その残骸がSCP-2481外部で発見されないのもそういうことであろう。
シュエ・チン研究員は、軒轅の剣の研究が財団の現実改変研究に役立つと提言。しかしそのためには軒轅の剣をSCP-2481空間外部に持ち出して再組立を行う必要があり、これは貴重な情報源である羿を死なせてしまう可能性が高い、としてどちらを選択するかを評議会メンバーに問いかけている。
羿はTale『蛇について』の中で劉邦に西方の猿の王国について述べている。猿の王国は夏王朝と争ったが、夏の王は猿の君主に争いは無駄であると訴え、地球を分割統治することを提案し、平和が訪れた。
しかしそこに羲和と帝俊が率いた太陽の民が10体の金烏を従えてやってきた。猿の王国の住民は夜に働き、昼に休む。夏王朝の住民は、農耕を行い水辺に住む。故に双方ともに苦しみ喘ぐ、先に立ち向かったのは猿の王国であったが、金烏に敗れ滅ぼされた。桀王は猿の王国の末路を聞いて驚き、軒轅の剣を使用することを決めたのだという。
この猿の王国は明らかにSCP-1000 (ビッグフット) のことを意味している。ビッグフットたちも夜行性の種族であるからだ。
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最終更新:2024/06/06(木) 14:00
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