どすこいとは、
- 相撲取りが言う言葉として著名なものの一つ。しかしテレビで相撲取りを観ていても聞いたことが無い言葉としても著名
- 京極夏彦の小説。
- 読売ジャイアンツの山口俊投手の渾名。父親が元大相撲力士であることに由来。
である。本稿は2.について記述する。
概要
地響きがする――と思っていただきたい。
時代ものからミステリからホラーから、誰でも聞いたことがあるような小説のパロディを可能な限り下らなく、そして全ての話を(無理矢理)相撲取りに関係させるという、まさにこれはひどいが似合う小説。
収録されている7つの話はループしており、作者の名前も「南」極夏彦とかに毎回変わる。“前の話を書いていた作者が次の話の登場人物になる”というのがパターン。また、登場人物の名前は1話目の元ネタ「四十七人の刺客」に肖って赤穂浪士と吉良上野介らの姓を使っている。
ちなみに6話目の作者が京極夏彦である。つまり、7話目の登場人物は…?
各話ごとに元ネタ小説の表紙のパロディ(帯付き)までご丁寧に挟んである凝り様。単行本は祖父江慎による物凄い拘り(本文が全部傾いていたりする)を見ることが出来る。そして表紙絵と漫画を担当しているのはしりあがり寿である。
多面的過ぎる小説家と鬼才ブックデザイナーとシュールギャグ漫画家が出会うととんでもないことになる良い例。
各話タイトル
- 四十七人の力士(元ネタ→「四十七人の刺客」池宮彰一郎)
- パラサイト・デブ(元ネタ→「パラサイト・イブ」瀬名秀明)
- すべてがデブになる(元ネタ→「すべてがFになる」森博嗣)
- 土俵(リング)・でぶせん(元ネタ→「リング」「らせん」鈴木光司)
- 脂鬼(元ネタ→「屍鬼」小野不由美)
- 理油(意味不明)(元ネタ→「理由」宮部みゆき) 注:(意味不明)までがタイトルである
- ウロボロスの基礎代謝(元ネタ→「ウロボロスの基礎論」竹本健治)
単行本には池宮を除く元ネタ作者達からのコメントが帯に書かれており、遠まわしな恨み事が書いてある(勿論冗談で)。そして作中では京極が軽いノリで謝罪(こちらも勿論冗談めかし)をしている。
読むにあたって元ネタを必ず読む必要はないが、読んでおくとより一層楽しむことが出来る。一時期は『ウロボロスの基礎論』だけやたらと入手困難になっていたが、2018年に文庫化されたので、2020年現在は元ネタは全て容易に入手可能。
欲を言えば、京極に関係する小説家や各社編集者などの情報も知っておくと更に楽しめる(主にウロボロスが)。
なお、単行本版のオビ裏に竹本健治は「『純正音律』では覚悟してね(泣)」というコメントを寄せているのだが、実際その後2006年に出た『ウロボロスの純正音律』には京極夏彦が登場する。そっちで京極がどういう扱いになったかは是非『純正音律』を読んで確かめていただきたい。
関連商品
単行本は2000年、ノベルスは2002年、文庫は2004年、いずれも集英社刊。
各形態でタイトル末尾が変化しているのは、
単行本は後々文庫になる為未完全(京極は文庫化の際にかなり手を加えることで知られる)だから“(仮)”、
ノベルスは単行本より安いから“(安)”、
文庫はこれ以上別の形態で出すことはないから“。”、
と一応意味がある。
またこの作品はギャグ小説であるため、勿論ギャグの消費期限がある。それを踏まえて上の画像で右に行くほど(新しい形態で発売されるごとに)ギャグが新しいものに変わっている。作中でも小説という媒体がいかに即席の笑いの保存に向かないということを嘆く箇所がある。じゃあこんな小説書くなよ。
関連項目
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