チェルトナムフェスティバル(Cheltenham Festival)とは、イギリスのグロスタシャー、チェルトナム近郊に位置するチェルトナム競馬場で行われる障害競走の祭典である。
4日間にわたり14のG1を含む28レースが行われ、1日あたり70,000人近い人が競馬場に訪れ、ブックメーカーの年間利益に影響を及ぼすほど馬券が売れるイベントである。その規模からイギリス最高のスポーツイベントの一つとして数えられている。
概要
「イギリスで最も盛り上がるレースってグランドナショナルじゃないの?」と思った方、それは半分正しい。グランドナショナルはイギリスで最も人気が高く、また多くのお金が賭けられているレースであるからだ。しかし、それはあくまでグランドナショナル1レースのみの話である。2018年のデータによれば、賭けられた総額の高い順に上位40位までレースを並べてみると、そのうちなんと25レースがチェルトナムフェスティバルで行われるレースなのである。つまり4日間にわたり大きな注目を受け続けるのがこのチェルトナムフェスティバルである。
この一連の競走は1860年に始まったナショナルハントミーティング(National Hunt Meeting)が前身となっている。これは当時医師であり、アマチュア騎手でもあったFothergill Rowlandsによって始めたもので、メインレースとしてアマチュア騎手による障害競走が行われていた。また当時はチェルトナム競馬場というものがなく、初回はマーケットハーボローにて開催されていた。そして、毎年開催する会場が変わることになっており、当時発足したばかりのナショナルハント委員会(National Hunt Committee)が会場の選定を請け負っていた。
19世紀終わりにチェルトナム競馬場ができあがり、関係者の尽力により1902年と1903年にナショナルハントミーティングが開催された。その後、1911年からは常にこの場所で行われることが決定し、これが今のチェルトナムフェスティバルとなった。
この後も努力が進み、1924年にはチェルトナムゴールドカップが、1927年にはチャンピオンハードルが創設され、この二つのレースは後にそれぞれチェイスとハードルの最高峰としてみなされるようになった。
施行される14のG1レースは、いずれも英愛障害シーズンの各路線の年度総決算の位置づけとなる。表にすると以下のようになる(中距離ハードルのみレースの設定がない)。
ノービスハードル | ノービスチェイス | ハードル | チェイス | |
短距離(2マイル) | シュプリームNH | アークルチャレンジトロフィー | チャンピオンハードル | クイーンマザーチャンピオンチェイス |
中距離(2.5マイル) | ベーリングビンガムNH | ゴールデンミラーNC | フェスティバルトロフィー | |
長距離(3マイル以上) | スパNH | ブロードウェイNC | ステイヤーズハードル | チェルトナムゴールドカップ |
・4歳馬限定:トライアンフハードル ・牝馬限定:メアズハードル ・平地:チャンピオンバンパー
またそのほかのハンディキャップ競走も英愛通じて最高峰の舞台の一つであり、どの多数の出走馬を集める。
スケジュール(2024年)
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1日目(3月12日) - チャンピオンデー
施行 | 競走名 | 格 | 出走条件 | 施行コース・距離 | 総賞金額 |
---|---|---|---|---|---|
1R | シュプリームノービスハードル | G1 | 4歳以上ノービス | ハードル旧2m87y (約3298m) |
13.5万£ |
2R | アークルチャレンジトロフィー | G1 | 5歳以上ノービス | チェイス旧1m7f199y (約3199m) |
17.5万£ |
3R | ウルティマハンディキャップチェイス | PH | 5歳以上 | チェイス旧3m1f (約5029m) |
12.5万£ |
4R | チャンピオンハードル | G1 | 4歳以上 | ハードル旧2m87y (約3298m) |
46.5万£ |
5R | ディビットニコルソンメアズハードル | G1 | 4歳以上牝馬 | ハードル旧2m3f200y (約4005m) |
12万£ |
6R | フレッドウィンタージュベナイルハードル | PH | 4歳 | ハードル旧2m87y (約3298m) |
8万£ |
7R | ナショナルハントチャレンジカップ | G2 | アマチュア限定 5歳以上ノービス |
チェイス旧3m5f201y (約6018m) |
12.5万£ |
1日目は"Cheltenham Roar"と形容される、観客による大きな声援で始まる。この日のメインレースはチャンピオンハードル(Champion Hurdle)で、ハードルの頂点を決めるレースとなっている。
また、ナショナルハントチャレンジカップ(National Hunt Challenge Cup)はナショナルハントミーティング時代のメインレースで、チェルトナムフェスティバルの中で最も歴史のある競走である。
2日目(3月13日) - フェスティバルウェンズデー
施行 | 競走名 | 格 | 出走条件 | 施行コース・距離 | 総賞金額 |
---|---|---|---|---|---|
1R | バリーモアノービスハードル (ベーリングビンガムノービスハードル) |
G1 | 4歳以上ノービス | ハードル旧2m5f (約4225m) |
13.5万£ |
2R | ブラウンアドバイザリーノービスチェイス (ブロードウェイノービスチェイス) |
G1 | 5歳以上ノービス | チェイス旧3m110y (約4928m) |
18.1万£ |
3R | コーラルカップ | PH | 4歳以上 | ハードル旧2m5f (約4225m) |
10万£ |
4R | クイーンマザーチャンピオンチェイス | G1 | 5歳以上 | チェイス旧1m7f199y (約3199m) |
40万£ |
5R | グレンファークラスクロスカントリー | C2 | 5歳以上 | CC3m5f56y (約5884m) |
7.5万£ |
6R | ジョニーヘンダーソングランドアニュアルチェイス | PH | 5歳以上 | チェイス旧1m7f199y (約3199m) |
12.5万£ |
7R | チャンピオンバンパー | G1 | 4歳以上6歳以下 | NHF旧2m87y (約3298m) |
8万£ |
この日のメインレースはクイーンマザーチャンピオンチェイス(Queen Mother Champion Chase)である。エリザベス女王の母が80歳の誕生日を迎えるのを機に、それまでの障害競走への貢献に感謝して現在の名前がついている。
また、この日は日本では見られないクロスカントリー形式の障害競走が行われる。コースの中を縦横無尽に駆け、様々な障害を越えていく様はこれでまた違った面白さがある。実はこのコース上にはエイントリーで使われているナショナルフェンスが1つ置かれており、2回飛越する。
また、障害競走なのに障害が一つもない「障害馬限定平地競走」(ナショナルハントフラットレース、伝統的にはバンパー(Bumper)ともいう)のG1が最終競走に行われる。
3日目(3月14日) - 聖パトリックサーズデー
施行 | 競走名 | 格 | 出走条件 | 施行コース・距離 | 総賞金額 |
---|---|---|---|---|---|
1R | ターナーズノービスチェイス (ゴールデンミラーノービスチェイス) |
G1 | 5歳以上ノービス | チェイス新2m3f168y (約3976m) |
17.5万£ |
2R | ファイナルハンディキャップチェイス | PH | 5歳以上 | ハードル新2m7f213y (約4822m) |
10万£ |
3R | ライアンエイアーチェイス (フェスティバルトロフィー) |
G1 | 5歳以上 | チェイス新2m4f127y (約4139m) |
38.8万£ |
4R | ステイヤーズハードル | G1 | 4歳以上 | ハードル新2m7f213y (約4822m) |
32.5万£ |
5R | プレートハンディキャップチェイス | PH | 5歳以上 | チェイス新2m4f127y (約4139m) |
12万£ |
6R | ドーンランメアズノービスハードル | G2 | 4歳以上牝馬 ノービス |
ハードル新2m179y (約3382m) |
10.5万£ |
7R | フークウォルウィンキムミューアチャレンジカップ | C2 | アマチュア限定 5歳以上 |
チェイス新3m2f (約5230m) |
7.5万£ |
3日目は聖パトリックサーズデーである。3月17日の聖パトリックの祝日とは別日であったとしてもそう呼ばれる。
この日のメインはチェイス中距離路線の頂点であるライアンエアーチェイス(Ryanair Chase)[1]とハードル長距離路線の頂点であるステイヤーズハードル(Stayer's Hurdle)である。
この日はアイルランドの祝祭の名前がついているのもあって、ギネスというアイルランドの酒がいたるところで売られていたり、アイルランドの音楽が流れていたりする。
4日目(3月15日) - ゴールドカップデー
施行 | 競走名 | 格 | 出走条件 | 施行コース・距離 | 総賞金額 |
---|---|---|---|---|---|
1R | トライアンフハードル | G1 | 4歳ノービス | ハードル新2m179y (約3382m) |
13.5万£ |
2R | カントリーハンディキャップハードル | PH | 5歳以上 | ハードル新2m179y (約3382m) |
10万£ |
3R | スパノービスハードル | G1 | 5歳以上ノービス | ハードル新2m7f213y (約4822m) |
13.5万£ |
4R | チェルトナムゴールドカップ | G1 | 5歳以上 | チェイス新3m2f70y (約5294m) |
62.5万£ |
5R | セントジェームズプレイスフェスティバルハンターチェイス | C2 | プロ・アマ混合 5歳以上 |
チェイス新3m2f70y (約5294m) |
5万£ |
6R | リベルタインメアズチェイス | G2 | 5歳以上牝馬 | チェイス新2m4f127y (約4139m) |
12万£ |
7R | マーティンパイプジョッキーズハンディキャップハードル | C2 | 見習騎手限定 4歳以上 |
ハードル新2m4f56y (約4075m) |
7.5万£ |
4日目はチェルトナムフェスティバルで一番盛り上がる日で、この日だけは事前に入場券を購入しなければ入ることができない。
この日のメインレースはもちろんチェルトナムゴールドカップ(Cheltenham Gold Cup)であり、チェイスの頂点を決めるレースとなっている。また、その次のレースのセントジェームズプレイスフェスティバルハンターチェイス(St James's Place Festival Hunters' Chase)は、ゴールドカップと同じコースを使用して行われるアマチュア騎手に解放されたレースである。なので、このレースは「アマチュアゴールドカップ」とも呼ばれる。
上の表についての補足事項
- 格のうち「PH」となっているものは格付けが「プレミアハンディキャップ(Premier Handicap)」であることを表す。イギリス独自の格付けでこれは以前「G3」と表記されていたものが変更されただけである。意味は以前と変わらず、一定の水準を満たしたハンデキャップの重賞レースであることを示す。
- 格のうち「C2」となっているものは「Class 2」に分類されていることを表す。非重賞競走、非リステッド競走の中で一番格が高い。
- 出走条件に「ノービス」がつく場合はノービスのみ出走できる。
- 出走条件に「見習騎手限定」とあるレースがあるがここでいう見習騎手とは、26歳以下かつ75勝未満の騎手のことである。
- 全て芝コースで行われている。
- 施行コース・距離に「チェイス」「ハードル」がつくものは、チェイス用のコース、ハードル用のコースであることを表す。
- 施行コース・距離に「新」「旧」とついているものはコースが新コースか旧コースかを表す。旧だからといって放置されているとかもう使われていないとかではない。
- 施行コース・距離に「CC」とついているものはコースがクロスカントリーであることを表す。
- 施行コース・距離に「NHF」とついているものは障害競走馬専用の平地競走であることを表す。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
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