障害競走とは、競馬における競走形式の一つである。
概要
コースに設置された障害を越えゴールを目指す。一般的な馬術競技のそれとは異なり、飛越方法は問われないが、横をすり抜けたりしてはならない。
イギリスではグランドナショナルのように大人気レースが存在しているのだが、日本では平地競走で結果を残せなかった馬の行く先というイメージが強かった。
だが、レース体系の変更などにより若干地位の向上が見られる。
競馬を開催しているが障害競走は実施していない国の方が多い。国際競馬統括機関連盟(IFHA)の分類において障害競走はパートIVとされているのだが、ここに記載されているのは日本を含め10ヶ国のみである。IFHAの加盟国・準加盟国・一部の協定署名国を合計すると70ヶ国なので、わずか7分の1ということになる。一方で競馬のレベルが高いとされるパートI国では16ヶ国中8ヶ国と半数が開催しており、ある程度競馬の規模が大きくないと資金力の面で難しいというのもうかがえる。
日本の障害競走
日本では、障害競走が行われているのは中央競馬(JRA)のみで、地方競馬での実施はかつては存在したものの廃止されている。また中央競馬の10競馬場のうち、北海道の2場(札幌競馬場・函館競馬場)での実施は一時存在したものの廃止されている。
実施する場合、一場あたり1日1レースのみの開催となることが多い。ただし近年では騎手不足をカバーする側面もあってか、1日2競走の施行が行われることもある。
障害競走は重賞であっても中山グランドジャンプ以外はメインレースとして開催されず、中山大障害は第10レース、東京ハイジャンプは第9レース、その他の重賞は第8レースに開催される。[1]
また2023年は猛暑対策として夏季開催の障害重賞、新潟ジャンプステークス、小倉サマージャンプは第4レースとなった。
上記の通り、日本では注目度が下降傾向にあり、競走数自体が減少していたり、1984年に平地重賞競走の格付け制度(GI・GII・GIII)が導入されても障害重賞競走には導入されないなどの格差が生じていた。
そこでJRAは、1999年からレース編成などを大幅に改革することとなった。
- 障害重賞競走に「J・GI」「J・GII」「J・GIII」の格付けを導入
- 一部のオープン特別競走を重賞競走に格上げ、特別競走も増設
- 障害特別競走・重賞競走に「ジャンプ」の名称を採用(中山大障害は除く[2])
- 国際競走の導入(2000年に中山グランドジャンプで導入、2001年からはペガサスジャンプステークス、2011年からは中山大障害も)
- ファンファーレに障害競走限定曲を新設
一方で実情に応じた改定も行われている。1999年に馬の格付けを3段階から2段階に削減(=「未勝利」か「オープン<1勝でも経験のある馬>」の2クラスのみ)。また2014年から、第3場(中山・東京・京都・阪神以外)の開催が存在する日で障害競走の主要オープン競走の実施がない場合は、原則第3場で障害競走を開催することとされた。
上記の通り、格付けは「未勝利」と「オープン」しかないが、この「オープン」は負担重量により事実上のキャリアパスが定義される。
- 未勝利 - 基準重量(春シーズンは4歳59kg・5歳以上60kg、それ以外は3歳58kg・4歳以上60kg、牝馬2kg減)
- 別定SB - 基準重量に対し、収得賞金400万円超300万円ごと+1kg
- 別定SA - 基準重量に対し、収得賞金700万円ごと+1kg。中山新春ジャンプステークス・三木ホースランドパークジャンプステークス・清秋ジャンプステークスに関しても見習騎手の減量がないことを除き同規則
- 牛若丸ジャンプステークス・春麗ジャンプステークス・秋陽ジャンプステークス・ - 基準重量に対し、J・GI勝ち馬+5kg、J・GII勝ち馬+3kg、J・GIII勝ち馬+1kg、収得賞金400万円以下-1kg
- ペガサスジャンプステークス・イルミネーションジャンプステークス - 基準重量に対し、J・GI勝ち馬+3kg、J・GII勝ち馬+2kg
- J・GIII及びJ・GII - 基準重量に対し、J・GI勝ち馬+2kg、J・GII勝ち馬+1kg
- J・GI - 基準重量+3kg
概ね、ここで書いてある上の方から下の方へとキャリアパスが流れていく。
コースについて
東京、中山、阪神、京都、小倉競馬場にはダートコースのさらに内側に障害専用のコースがある。障害コースにはゴール板が設置されていないため、最終コーナーなど[3]で芝やダートコースの直線に入ってゴールする。中山、阪神、小倉、福島競馬場にはトラックの中央を斜めに横切る襷コースが存在し、競走途中に左回りと右回りが逆になる。[4]
障害には、以下のようなものがある。
- 生垣障害 - 生垣。かき分けて飛び越える。
- 竹柵障害 - 竹の柵。かき分けが困難なので完全に飛び越える。
- 水濠障害 - 生垣の先に水濠があり、ここに入ってしまうと体勢が崩れてしまうため、遠くへ飛ぶ必要がある。
- 坂路 - 下って上る坂道。中山競馬場にのみ存在
- バンケット - 福島競馬場と小倉競馬場のものは上って下る坂道。京都競馬場のものは1段高いところにあるステップ。上記の坂路もバンケットと呼ばれることがある
- グリーンウォール - 人工物で作られた竹柵のようなもの。
日本の障害重賞
- 2月:小倉ジャンプステークス(J・GⅢ)小倉競馬場・芝3390m
- 3月:阪神スプリングジャンプ(J・GⅡ)阪神競馬場・芝3900m
- 4月:中山グランドジャンプ(J・GⅠ)中山競馬場・芝4250m
- 5月:京都ハイジャンプ(J・GⅡ)京都競馬場・芝3930m
- 6月:東京ジャンプステークス(J・GⅢ)東京競馬場・芝3110m
- 8月:新潟ジャンプステークス(J・GⅢ)新潟競馬場・芝3250m
- 9月:阪神ジャンプステークス(J・GⅢ)阪神競馬場・芝3140m
- 10月:東京ハイジャンプ(J・GⅡ)東京競馬場・芝3110m
- 11月:京都ジャンプステークス(J・GⅢ)京都競馬場・芝3170m
- 12月:中山大障害(J・GⅠ)中山競馬場・芝4100m
海外の障害競走
海外では障害競走は以下のように細分化されている場合が多い。
- ハードル(Hurdle) - 比較的小さな障害を飛越する。障害の種類や大きさはスタートからゴールまで同じであることがほとんど。
- スティープルチェイス(Steeplechase) - 比較的大きな障害を越える。障害の種類は多様で難易度が高く、距離もハードルより長距離を走るよう設定されていることが多い。
- クロスカントリー(Cross-country) - 多種多様な障害を越える。コース自体も自然の地形を生かしたものである場合が多く起伏が激しい。また競馬場内を縦横無尽に駆け抜けるコース設定になっていることも多い。そのためラチがないことも珍しくない。
イギリス・アイルランド
ハードル、スティープルチェイスに使われる障害はかなり統一しており、特にイギリスではコースに使われるべき障害の種類、高さの下限、設置する数などが厳密に決まっている。なお、グランドナショナルなどで使われる障害は特殊仕様となっており、難易度が高いことで有名。また、障害競走を走るためのステップとしての平地競走(National Hunt Flat Racing)がある。また各地でポイント・ツー・ポイントと呼ばれるクロスカントリーの一種で、アマチュア騎手も参加できる競走が行われており、ここからキャリアを始める馬もいる。
フランス
オートゥイユ(Auteuil)競馬場がフランス障害競走の中心地となっており、ここで国内のほとんどの重賞が行われている。パリ大障害などが有名。なお日本でもなじみ深いクリストフ・スミヨン騎手がここで行われるG1競走のオートゥイユ大ハードルにて大差勝ちをしたことがある。
他の場所でも障害競走は開催されており、個人的にクロスカントリーが盛んというイメージがある。またサラブレット以外の馬が出走することも多い。
ドイツ
クロスカントリーの一種である、"Seejagdrennen"と呼ばれる競走を行っている。特徴として騎手の足がつかるほどの池を数十メートルにわたって渡るところがコース上にあり、水しぶきを上げながら渡る姿は圧巻である。
アメリカ
アメリカではティンバー(Timber)と呼ばれる独自の障害競走が行われている。生垣などの代わりに木製の柵を超えるもので当然引っかかったら落馬は避けられない。
大百科に記事のある障害馬
「平地メインだが障害競走に出走したこともある」馬も含む。日本調教馬の太字は障害重賞勝ち馬。
日本調教馬
- アイアムハヤスギル
- アップトゥデイト
- アポロマーベリック
- イロゴトシ
- ウインクリューガー
- ウインテンダネス
- オジュウチョウサン
- ギルデッドエージ
- キングジョイ
- キングスポイント
- グランドマーチス
- コウエイトライ
- ゴーカイ
- ゴースト(競走馬)
- コガネタイフウ
- サナシオン
- サムソンビッグ
- シベリアンタイガー
- シングンマイケル
- シンボリクリエンス
- スプリングゲント
- ダイコーター
- ダイワシュガー
- タガノエスプレッソ
- タカライジン
- テイエムドラゴン
- テンジンショウグン
- トーセンヴァンノ
- ニシノデイジー
- ニホンピロバロン
- バシケーン
- バローネターフ
- ビッグウィーク
- ビッグテースト
- フジノオー
- ブゼンキャンドル
- ブランディス
- ブルーショットガン
- マーベラスカイザー
- マイネルグロン
- マイネルネオス
- マイネルレオーネ
- マジェスティバイオ
- マルカラスカル
- メイショウダッサイ
- メジロアシガラ
- メジロアンタレス
- メジロパーマー
- メジロファラオ
- メジロラフィキ
- メルシーエイタイム
- メルシータカオー
- メルシーモンサン
- ヤマニンアピール
- ユウフヨウホウ
- ロバノパンヤ
海外調教馬
関連動画
↓世界一過酷な障害競走 | ↓日本の障害競走の頂上決戦「中山大障害」の歴史も |
関連ピコカキコ
中山競馬場で年に2回しか流れない(中山グランドジャンプ・中山大障害)、J・GI限定ファンファーレ。

関連項目
- 競馬
- 中山グランドジャンプ
- 中山大障害
- グランドナショナル
- ヴェルカパルドゥビツカ
- チェルトナムフェスティバル
- 笠松大障害
- 山本直也(障害競走ではお馴染みの実況アナウンサー)
- ヨーロッパ障害競走の主要競走一覧
脚注
- *メインレースにしない理由のひとつに、障害にできた影の影響を少なくするためと言われている。
- *もともとは春開催を中山スプリングジャンプ、秋開催を中山グランドジャンプとする計画だったが、伝統的な名称を残すべきという意見から秋開催を中山大障害として残し、春開催を中山グランドジャンプとすることとなった。
- *中山競馬場のみ最終コーナーで芝・ダートコースに出る内回りコースの他に第2コーナー後の芝外回りコースに出る外回りコースも設定されている。
- *かつては東京競馬場、中京競馬場、右回りコース時代の新潟競馬場にも襷コースは存在していた。
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