マルコム・ワイドボーン(Marcom Wideborn)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
CV.関智一(石黒監督版OVA)、高橋研二(Die Neue These)。
概要
自由惑星同盟軍人。最終階級は少将(戦死昇進による)。宇宙暦794年11月当時、27歳。同盟軍士官学校でも10年にひとりの秀才と認められていたが、794年の第六次イゼルローン要塞攻防戦において戦死した。士官学校におけるヤン・ウェンリーの同期生。
ヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムの双方を相手にした経験を持つ数少ない登場人物のひとり(「相手にする」の基準を多少広げる必要はあるが)。
経歴
宇宙暦783年、同盟軍士官学校に入学。優等生で、遅くとも二年次までの時点で学年首席という好成績を示し、「一〇年来の秀才」と称えられた。卒業時にも首席であったようである。
二年次以前のある時には、同期のヤン・ウェンリーと戦略戦術シミュレーションで対戦したが、この時は勝利を得られなかった。この時ワイドボーンは防戦に徹したヤンの陣営を相手に各種の戦術を駆使して攻め込んだものの、ヤンが事前にワイドボーン側の補給線を断っていたために退却を余儀なくされたもので、コンピューターの判定と教官の採点の双方がヤン勝利を示したのである。
とはいえ787年の卒業後も同様に高い評価を受け、以後7年のうちに大佐まで五階級を累進。794年、第六次イゼルローン要塞攻防戦では、ラムゼイ・ワーツ少将ひきいる分艦隊2500隻の参謀長・大佐として参加。しかし戦闘序盤の11月6日、帝国軍ラインハルト・フォン・ミューゼル(のちのラインハルト・フォン・ローエングラム)少将が指揮する3000隻の帝国軍艦隊との交戦において分艦隊は壊滅、ワイドボーンも戦死した。二階級特進により少将。
人物・能力
同期であるヤン・ウェンリーからは、理論的なタイプではあるものの、他人の欠点や失敗をえぐる点が同級生や下級生からの信望を失わしめていたと評される。
戦略戦術シミュレーションでヤンに勝てなかった時には、プライドを傷つけられいきりたって「まともに正面から戦っていれば、おれのほうが勝っていた」と叫んだとされ、相応の矜持を有していたようではある。ただ、ワイドボーン個人のヤン認識は明らかでないものの、戦史関連以外は「可能な限り手をぬいた」「落第点すれすれの成績をとって平然としていた」ような当時のヤン相手と考えると、よほど寛容な人物でもなければ無理もない感情の発露ともいえよう。
能力面では、10年にひとりという評価のほか、第六次イゼルローン戦での戦死時にはそのこと自体が同盟軍総司令部に特に衝撃を与えたという点などを見ても、軍内部で期待をかけられていたことがうかがわれる。階級の面でも少尉任官から7年のうちに大佐まで進んでおり、これは中尉から少佐までを一日で昇進した経歴を持つヤンとも同等の昇進速度である。
ただし戦術的には、士官学校時のシミュレーションで見せたような、正面の戦いに固執し搦め手を不得意とする傾向があったらしい。ワーツ分艦隊に「常識外の中央突破戦術」をとったラインハルトに対し、参謀長としての彼が具体的にどんな対応をとったかは明記されていないものの、「正攻法にこだわって敵の奇襲をうけ」たことが戦死時の状況として挙げられている。
メディアミックスにおける人物像
石黒監督版OVA外伝『千億の星、千億の光』では、主体性に欠けるワーツの傍でワイドボーンが積極的に進言し、ワーツが進言を命令としてそのまま繰り返すために、彼が実質的な分艦隊指揮官となっている様子が描かれている。はじめはラインハルトの動きに応じて対処していたものの、ラインハルトの兵力集中・中央突破行動に対しては「ばかな、ありえん!こんな常識はずれの」と絶句したまま、戦術的には何ら反応できないまま戦死することとなった(アスターテ会戦におけるパストーレ中将の反応に近い)。
いっぽう藤崎竜版コミックにおいては、第六次イゼルローン戦の序盤を実質ラインハルト対ワイドボーン回として紙幅を割いた。ヤンへの敗北を素直にうけとめ「自分に何が足りないのか」を自問する場面から始まり、名も知らぬラインハルトを“危険人物”と警戒する、緻密な計算と実直な作戦で作戦を主導しキルヒアイスに「戦術も堅実」と評されるなど、自信家だが真面目で有能な、まさに将来を嘱望すべき士官そのものとして描写されている。さらにはラインハルトの策略の看破までしてのける活躍ぶりを示すが、進言へのワーツの対応が遅れたために旗艦を直撃され、やはり敗北の理由を自問しながら戦死することとなる。
関連動画
関連項目
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