南海トラフとは、日本列島南側の駿河湾から四国沖の海底に連なる深い溝のことである。
概要
日本列島が乗っている大陸プレートの下にフィリピン海プレートが南側から年間数センチの割合で潜り込んでいる場所が南海トラフで、プレートの境界が溝のような地形となっている。
プレートが沈み込むことによってひずみが蓄積され、ひずみが解放されるときに地震が起こる。
南海トラフを震源地として発生した地震、発生が予想されている地震については東海地震・東南海地震・南海地震の記事も参照。
このプレート一帯では過去1400年間におよそ100年から200年の間隔で大地震が起こっていて、最近では1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震が南海トラフ地震に当たる。
その後約70年が経過していることから、次の巨大地震がいつ起こってもおかしくない状況となっている。
政府は南海トラフ地震に関する情報や、想定される震度や津波の高さを公開して注意を喚起している。地震調査委員会は今後30年以内の発生確率を「70%から80%」とし、最悪の場合は32万人以上の犠牲者が出ると考えている。
また、東海地震が予測されている静岡県では毎年定期的に地震を想定した避難訓練その他を行い、万が一に備えている。
2017年からの地震情報について
南海トラフを震源とする地震について、日本政府は2017年に対策の方針を大転換した。新しい方針は「地震予知をあきらめる」ことである。
現在の科学や観測によって完璧な地震の予知は不可能であると判断した政府は、これまで地震の発生が予測される際に気象庁が出すとされていた「東海地震予知情報」を取りやめた。その替わりに出されることになったのが、「南海トラフ巨大地震の情報」である。
この南海トラフ巨大地震の情報では観測によって得た結果から、気象庁が「平常時と比べて相対的に巨大地震発生の可能性が高まっている」という情報を発信する。いつもより地震が起こりやすいから気をつけて下さいと言う警告である。
ぶっちゃけひどくわかりにくい。しかもこれまでの「地震予知情報」が内閣総理大臣から出される「警戒宣言」に伴って出されるもので、それに付随して政府や自治体による住民への避難の呼びかけや交通規制が伴うものだったのに対して、「南海トラフ巨大地震の情報」では警戒会議の招集はしても住民への避難の呼びかけまでは必須ではなくなっている。
どうしてこうなったのかといえば、「可能性が高い」というだけでは地震がいつ結局起こるかわからないからである。また、いつ起こるかわからない地震に備えて日常生活をすべて放棄して避難していては国民生活が成り立たなくなる。確実な地震予知をあきらめた以上、これ以上の対応は取れない。しかし、これが現在の科学の限界である。
なお、各自治体は「南海トラフ巨大地震の情報」が出された場合、6割の自治体が避難勧告を出すことを検討するというアンケート結果も存在する[1]。が、逆に言えば避難指示を出さない自治体も相当数存在するということである。
AAによるイメージ
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ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
V~~''-山┴''''""~ ヾニニ彡| 地震は起こりやすい・・・・・・!
/ 二ー―''二 ヾニニ┤ 起こりやすいが・・・
<'-.,  ̄ ̄ _,,,..-‐、 〉ニニ| 今回 まだ 起きる時の
/"''-ニ,‐l l`__ニ-‐'''""` /ニ二| 指定まではしていない
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. | `ー゚‐'/ `ー‐゚―' l.=lへ|~| そのことを
|`ー‐/ `ー―― H<,〉|=| どうか諸君らも
| / 、 l|__ノー| 思い出していただきたい
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|l 下王l王l王l王lヲ| | ヾ_,| \ つまり・・・・
. | ≡ | `l \__ 南海トラフがその気になれば
!、 _,,..-'′ /l | ~''' 地震の発生は1時間後、1日後、あるいは
‐''" ̄| `iー-..,,,_,,,,,....-‐'''" / | | 100年後 200年後ということも
-―| |\ / | | 可能だろう・・・・・・・・・・ということ・・・・!
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国民への周知不足と、対策不足への非難
この「南海トラフ巨大地震の情報」が出された際、国民はどのように行動すればよいかの指針は2018年4月現在まだ出されていない。以前の「地震予知情報」の際にはきちんと日本政府からの指示が回されるようになっていたのだが、新体制の下では個別の自治体の対応に任されている部分が大きい。その結果ちぐはぐな対応による混乱も予想されるため、早くガイドラインを設定すべきだという主張も出ている。
また、日本大学がインターネットで全国の2000人にアンケートを行った結果によると、この「南海トラフ巨大地震の情報」について「知らない」と答えている人が8割以上いることが判明した。また、その内容についてもやはりわかりにくいという答えが多くなっている。
2024年8月、初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表
2024年8月8日に日向灘を震源として発生したマグニチュード7.1の地震により、同日に初の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表がなされた。
この発表の中では、「南海トラフ地震の想定震源域では、 新たな⼤規模地震の発⽣可能性が平常時と⽐べて相対的に⾼まっていると考えられます」と述べられており、国民に防災対応をとるように呼び掛けている。
幸いなことに、この臨時情報が出されてから1週間経過しても特に大きな地震は起こらず、8月15日に解除となった。
その一方で、やはり観光などへの影響はあり、特にお盆休みの観光シーズンと重なってしまったことで大きな打撃を受けた観光地も多かったようだ。
関連動画
関連項目
関連リンク
脚注
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