戸籍とは、一個人が出生してからの身分関係を詳しく記した公的資料である。
概要
一人ひとりの項目に生年月日や各種事項(出生、婚姻など)の発生日、また生まれた市町村や親の名前などが記載されているため、遺産相続や家系調査の資料として使われることが多い。
世帯全員を記入した『戸籍謄本(とうほん)』『戸籍全部事項証明書』、またその中から特定人物のみを抜き取って記載した『戸籍抄本(しょうほん)』『戸籍個人事項証明書』が存在する。現在は世帯主と配偶者・その子のみの世帯単位での記載であるが、戦前は世帯主とその子・孫・そしてその配偶者といった家単位で記載されていた。
本籍
市区町村への住民登録とは別に戸籍を管理する市区町村を決めるにあたり本籍地の設定がある。都道府県~番地・枝番を記載してその住所を管轄する役所に婚姻届や転籍届を提出することで、提出した当日から記載者全員の戸籍を一括移動させることができる。本籍はかつて運転免許証にも記載されていたが、運転免許証にIC機能が搭載されてからはICチップ内に記録されるようになったため記載欄が削除されている。
日本では住所区画の定められた国内の土地であれば本籍地の自由な選択が認められているため、中には東京ディズニーランドや皇居、北方領土などに本籍を置く人もいる。ただし遠隔地に本籍を置いた場合、戸籍が必要になった際に郵送請求することになるなど手間が掛るので注意。
※北方領土内に本籍を置く場合、届け先は根室市役所となる。
分籍
筆頭者およびその配偶者以外の人が元々いた戸籍から離れ、新たに自分の戸籍を開設することを分籍という。
20歳以上であれば分籍元・分籍先・現住所地いずれかの役所に分籍届を提出することで分籍先に新しく戸籍が開設される。自分自身が戸籍の筆頭者となり新たな気持ちになれる等のメリットがあるが、一度分籍すると分籍前の戸籍に戻ることが出来なくなるので覚悟の上で提出することとなる。
紙媒体時代の戸籍
壬申戸籍から改製原戸籍まで5種類の異なる様式の戸籍が存在する(※壬申戸籍について詳しくは個別の単語記事にて)。和紙を使った原本に手書きか和文タイプライターで縦書き文章が記入され、バインダーで一括保管されるなど取り扱いがすべて手作業で行われていた。そのため手書きの戸籍は筆書き風の字で記入されていたり、かなり達筆な字だったりと時代や筆者によって様々。数字については漢数字(壱、弐、参、拾など)が使用されていた。また各種事項が記入されると一件ごとに首長印が押される。
請求を受けて戸籍をバインダーから探し出すだけでも膨大な時間を要しており、上質紙への複写も含め発行までに1~2週間ほどかかっていた。
戸籍全部(個人)事項証明書
1994年に改正戸籍法が施行されたことで電算化戸籍が誕生し、全市町村で戸籍のコンピューター化が行われ、原本が和紙から電子データ(磁気ディスク)へと変化した。これに伴い文字も項目別の横書きに変更されると共に算用数字を起用、手書き特有だった崩し字やクセ字が正字表記に統一されるなどスッキリと見やすくなる。また公印についても朱肉押印から黒色電子印に切り替えられ、戸籍取り扱い業務が非常に速いスピードで処理できるようになった。これまでの旧式戸籍についても原本がスキャナーで電子記録されているため、電算化戸籍と同様に検索して改ざん防止用紙にコピーすることで速やかに請求者に発行できるようになっている。
ちなみに日本で最後に電算化した自治体は東京・伊豆諸島にある御蔵島村(2020年9月9日告示)。人口が331人であり戸籍件数も少ないため紙で十分対応できていたが、電算化の流れを踏まえて導入した。
豆知識だが、電算化戸籍には全自治体共通で「IPAmj明朝」という専用に開発されたフォントが用いられる。文字化けがほとんど起こらないのが特長。
除籍と保存期間
転籍、死亡、戸籍法改正といった都合により該当者が戸籍から外れると『除籍』として扱われるが、全員がいなくなるとその戸籍は閉鎖され『除籍簿』あるいは『除籍全部事項証明書』へと切り替わる。現在の戸籍は四角枠に「除籍」と記載されるが、改製原戸籍の時代までは除籍者の名前にバツ印がつけられており、そこから離婚回数を表して「バツ1」「バツ2」という隠語が生まれた。
除籍には保存期間があり、旧保存期間は除籍年度の翌年から起算して80年であったが、2010年6月1日より一律150年へ延長された。つまり一度でも離婚すれば一世紀半にわたりその記録も残り続けることとなる。本来なら保存期間が終了しているはずの除籍を任意で保管している役所も存在するが、多くは保存期間が終了するごとに廃棄・データ消去されているため、役所に残っていない場合は『廃棄証明書』が発行される(災害などで戸籍が消失した場合も同様)。
関連動画
関連リンク
関連項目
- 壬申戸籍
- 戸籍を取得した唯一の猿
- 住民票
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https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E6%88%B8%E7%B1%8D