旧石器時代とは、世界史及び日本史における時代区分。世界史ではおおよそ330万年前から1万年前までの時代をさす。日本史ではおおよそ4万年前から1万年前の後期旧石器時代のことをさすことが多い。
名前の由来は研磨技法によって作られた磨製石器(新石器)が登場する以前の、打製石器(旧石器)を中心とする文化から。
旧石器時代という時代区分について
旧石器時代は、石材を打ち欠いて作る打製石器を主な利器として使用する時代をさす。そのため冒頭で示したような、最古の石器群から新石器文化の到来までの長大な期間が旧石器時代として区分されている。
これは、もともと人類史の全貌や実年代がわからない頃に、デンマークの考古学者トムセンがヨーロッパの考古遺物の時代区分を石器時代・青銅器時代・鉄器時代と3期に区分したことに由来する。その後、石器時代研究が進む中で、イギリスの考古学者ジョン・ラボックによって石器時代が旧石器時代と新石器時代に細分された。この区分が現代まで継承されているがために、このような長大な時間幅を有する時代区分となっている。
そのため、現代では以下のように旧石器時代をさらに3区分することが多い。
- 前期旧石器時代(330万年前~30万年前)
- 所謂原人の時代。ハンドアックスと呼ばれる比較的大型の石器が主流。
- 中期旧石器時代(30万年前~4万年前)
- 石核と呼ばれる母岩を打ち割って得た薄い欠片をさらに加工して作る剥片石器が登場した時代。所謂旧人(ネアンデルタール人)が生息していた時代と被る。
- 後期旧石器時代(4万年前~1万年前)
- 石刃と呼ばれる細長い定型的な剥片を量産する技法(石刃技法)が確立され、それをさらに加工した石器(ナイフ形石器等)が主流となる時代。新人(ホモ・サピエンス)の登場時期と被るとされている。
日本における旧石器時代
日本列島において、人類の痕跡が確実に確認されているのは約4万年前の後期旧石器時代からである。この頃になると、台形様石器や局部磨製石斧を伴う包含層が確認されている。各地の発掘調査の成果から、日本列島の石器群はおおむね台形様石器→ナイフ形石器→槍先型尖頭器→細石刃と変遷していくことが明らかになっている。とはいえ、列島内部でも石材産地やその特性、気候や地理的条件によって細かな技法や文化は異なっており、詳述はしないが複雑な様相を示していることが明らかとなっている。その後、1万6000年前頃から土器が使われはじめ、縄文時代へと移行していく。
一方、それ以前の話となると、議論が分かれる。日本においても、前中期旧石器時代が存在するといわれていた時期もあったが、それらのほぼ全てが一人の男による捏造であった(旧石器捏造事件)。捏造事件以後に前中期旧石器時代のものと目される石器が発見・報告されているが、その存否には議論がある。だが、事件を受けて考古学界では前中期旧石器を追い求める動きが完全に停滞しており、類例の増加が見込めず議論は進んでいない。
日本における旧石器時代は更新世の最終氷期に当たる時代で、現代よりも大幅に平均気温が低かった。そのため、針葉樹林帯が発達していた上、現在よりも海水準がかなり低かった。そのため、主な食料はマンモスやナウマンゾウといった大型動物であった。彼らは、こうした動物を追いかけつつ、石器製作に適した石材産地を季節ごとに点々としながら生活していたと考えられている。
とはいえ、日本の旧石器時代やその暮らしについて、判明していることは多くはない。というのも、この時代のものは殆ど石器以外出土しないからである。そのため、研究者は遺跡から出た石の破片をすべて接合してみたり、その接合関係を図面に起こしてみたりなどと、狂気としか思えない作業を地道にこなしつつ、理論を洗練させて研究に臨んでいる。ぜひ、博物館を訪れた際には、よくわからないからと素通りせずに、彼らの努力の結晶である「石器接合資料」や当時の洗練された技術の結晶である旧石器を楽しんでほしい。
打製石器はだせー石器ではないのである。
日本の主な旧石器時代の遺跡
- 白滝遺跡群(北海道) 国指定史跡
- 日本最大級の黒曜石産地遺跡。出土した石器やその接合資料は国宝に指定されている。
- 金取遺跡(岩手県) 遠野市指定史跡
- 8.5~6.8万年前とされる地層から確実な石器が出土している。中期旧石器時代にさかのぼれる可能性がある。
- 岩宿遺跡(群馬県) 国指定史跡
- 日本で初めて旧石器時代の存在が明らかにされた遺跡。相沢忠洋が発見し、明治大学のチームが調査。
- 野尻湖遺跡群 (長野県)
- 湖底やその周辺から解体されたナウマンゾウの化石や植物遺体が石器とともに出土している。
- 根堅遺跡(静岡県)
- 1万8000年前の化石人骨(浜北人)が出土。本州唯一の旧石器人骨。
- 砂原遺跡(島根県)
- 12~11万年前とされる地層から石器が出土している。中期旧石器時代にさかのぼれる可能性がある。
- 福井洞窟遺跡(長崎県) 国指定史跡
- 洞窟内に何重にも堆積した遺物包含層から、細石刃の編年と土器の共伴を確認
- 白保竿根田原洞穴遺跡(沖縄県) 国指定史跡
- 2万7000年前の人骨と墓域を検出。全身をほぼ残すものもある。
関連項目
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