植物とは、古典的には生物のうち動物でない方を指す。草木の類(種子植物やシダ植物)のように、根が生えていて自分の力で活動的に動きまわったりせず(固着性)、緑色をして光合成を行い(独立栄養)、細胞壁を持つ真核生物。
しかし、様々な微生物が知られてくるとこの定義では不都合が多くなり、より狭い意味に限定されるようになった(後述)。
定義
最も初期のリンネによる生物分類ではあらゆる生物が動物と植物の二界に分けられていた(2界説)。キノコやカビなどは光合成を行わない従属栄養であるが、「菌類」として植物の方に含まれていた。
しかし、顕微鏡の発達で様々な微細な生物(微生物)が知られてくると、光合成生物でありながら運動性を持っていたり細胞壁がないものが多数見つかった。細菌は最初は菌類の同類と考えられていたが、あらゆる生物は細胞が基本単位であるとする「細胞説」が固まると、動植物のような独立した細胞核などの細胞内小器官を持たない細菌類を植物に含めることは不都合となり「原核生物」として分けられた。さらに、多細胞菌類のキノコの類も菌糸を体の基本的な構成単位とすることなどから植物とは系統が異なると考えられ、酵母など単細胞菌と一緒に「真菌類」または粘菌(変形菌)などを含めて「菌類」とされた。真菌にも動物にも植物にも属さない真核生物は「原生生物」となった(4界説、5界説)。
その後、かつては植物に含まれた藻類のうち、ミドリムシなどは鞭毛虫が緑藻類を取り込んで独立栄養能力を得たものだということが知られるようになった。また、コンブ・ワカメのような褐藻や珪藻は紅藻を取り込むことによって光合成能力を獲得したものであることが明らかになった。この結果、「藻類」という分類的枠組みはバラバラに解体されている。
そういう訳で、現在ではコケ植物、シダ植物、種子植物からなる「陸上植物」のみが狭義の植物と定義される。
ちなみに、古くは藻類に含まれる事があった藍藻に関しては、系統的には原核生物である細菌(バクテリア)に属するので「シアノバクテリア」と呼ばれている。陸上植物と緑藻、紅藻はシアノバクテリアを細胞内に取り込むこと(細胞内共生)により光合成能力を得たと考えられることから「アーケプラスチダ」(一次植物)といい、広義の植物とされる。さらに一次植物を取り込むことによって光合成能力を得たミドリムシや褐藻・珪藻類などは「二次植物」と呼ぶこともあるが、この意味での「植物」は「光合成による独立栄養能力を得た真核生物」という意味になり、系統上の分類ではなくなる。
なお、ある種のウミウシは餌の藻類から葉緑体を消化管細胞に取り込み,その光合成でも栄養を得る(盗葉緑体)ことが知られているが、あるいはこれらの動物も遠い未来には葉緑体との細胞内共生を完成させ「植物」に進化することがあるかも知れない。
植物と生態系
植物は地球の生態系において、主要な生産者である。植物は太陽エネルギーを用いた光合成によって無機物から有機物を生成し、栄養としている。その他の生物は食物連鎖のどこかで植物が生成する有機物の栄養に依存して生きている(従属栄養)。また、植物が光合成によって生成する酸素(O2)は有機物を効果的にエネルギーに変える(好気呼吸)に不可欠である。
植物などの光合成生物以外の独立栄養生物は、温泉の熱水噴出口などに生息する化学合成菌(細菌や古細菌)だけである。そのため、植物の存在なしには大半の生物が生存不可能である。
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