有限会社知床遊覧船とは、しれとこ村グループに属する観光船の運行会社。
概要
平成13年 (2001年)創業。平成28年(2016年)に取締役が交代している。2018年の時点で桂田精一が社長を務めるしれとこ村グループに属している。遊覧船を営む事業者であるが、2020年頃からスタッフが大きく入れ替わっており、ベテランの船長などが相次いで退職。2022年4月23日時点では豊田徳幸船長以外に船長を務めている社員はいなかった模様である。
2022年4月23日の事故
2022年4月23日、知床遊覧船が所有する観光船KAZU I (カズ・ワン)は斜里町ウトロはウトロ漁港から知床岬を目指し、そこから帰港する「知床岬コース」の運行予定であった。この日は知床遊覧船にとっては当季初日運航であり、競合他社は運航開始が4月29日(ゴールデンウィーク初日)であることもあり、この日運航するのは同社の観光船のみであった。なお同社が所有する観光船は2隻あった。しかしこの時点で前述の豊田船長以外の船長はいないはずであり、豊田船長はKAZU Iのみを運航すると思っていたようだ。しかし実際には当日、臨時の船長を雇ってもう一隻、KAZU III(カズ・スリー)も運行された。
この日、斜里町には強風注意報・波浪注意報が発令されていた。午後に運行される観光船などは運行中止になっており、それどころか同業他社からは桂田社長に対して「今日は運航をやめておいたほうがいい」と忠告があったという。はたして、KAZU Iは予定通り運航された。この時KAZU IIIも70分のコースに向かっており、同じく運航されたが、こちらは定刻通り帰港している。
しかしKAZU Iのほうは帰港しないことに別の観光船運行会社の従業員が気付き、知床遊覧船事務所を訪れると、船長の携帯がつながらないことを明かされる。この従業員は、自分の所属する会社の無線アンテナで豊田船長と交信を行い、そのときはカシュニの滝にいると告げられた。このときは切迫した感じはなかったのだが、数分で状況が悪化。エンジンが止まり前の方から沈んでいるという交信を受けたこの従業員は海上保安庁に118番通報。豊田船長もまた、乗客の携帯電話を借りて118番通報を行ってた。その後、豊田船長は無線で沈みそうだと伝えたが、これが最後の交信となり、KAZU Iは乗客乗員を乗せたまま14時から15時のあいだに海へと沈んでいった。
海上保安庁だけでなく海上自衛隊・航空自衛隊も含め捜索が開始されたものの、前述の天候もあり捜索開始は遅れた。5月にはいってもなお乗客乗員のうち、未だに行方不明の方がいる状況である。
杜撰な実態
知床遊覧船はその経営実態に問題を複数抱えていたことがうかがえる。
社長の桂田精一は、元々株式会社武蔵野の経営サポート会員として、同社からしれとこ村グループの経営コンサルティングを受けていた。この武蔵野の小山昇社長をして、『桂田精一社長は有名百貨店で個展を行うほどの元陶芸家で、突然ホテル経営を任され、右も左もわからないド素人』と語られている。よって海のこともあまり理解していないだろうことも伺え、実際に元従業員も「海のことはね、それは、はっきり言って(社長には)無理なんだ」と語っている。
…にも関わらず、(COVID-19感染症による経営悪化もあるだろうが)2020年頃からベテランの船長を含む古参メンバーを追い出しており、豊田船長が船長になる。桂田社長自身はそうそう事務所に来ることもなく、船のことはベテランに全て任せっきりだったにも関わらず、である。豊田船長以外の船長はおらず、その豊田船長は多忙によるストレスもあってか、同社を去った元従業員よりも同社の経営について知らないという異様な事態に陥っていた。
加えて船体の状態も悪く、15cmほどの亀裂損傷が生じていたことが判明しているが、修理をせずに越冬している。このときの傷も今回の事故と無関係ではないだろうと考えられている。
衛星電話も修理中であるため、船長の携帯が通信手段となっていたが、地元では「ドコモ以外通じない」などとも言われており、通信手段としては不安定だったことが窺えよう。実際当日は乗客の携帯を借りて118番している。アマチュア無線も用意されていたがこれも故障していた。おまけにGPSプロッターも取り付けられていなかった。
2021年には座礁事故を起こしているが、普通事故を起こす場所ではないそうで、その当時同船に搭乗していた豊田船長が知床の海に不案内だったことは間違いないだろう。もっともホテルの業務も従事しており、操船技術を学ぶ暇もないのでは、と推察されていたが。また当時の操船していた船長自身は豊田船長ではない。これが結果として豊田船長しか残らなくなった要因でもあるのだが。
余談
- この事故が起きた2022年のゴールデンウィーク期間、各地の観光船の予約がキャンセルになるなどの風評被害が生じている。
- KAZU IIIの衛星電話はリース契約切れではずされていたことがわかっている。
- そもそもアマチュア無線では金銭上の利益となる業務用無線をしてはいけない[1]
- 船自体の特性・責任等は 船舶 の百科項目を参照。
関連リンク
- 知床遊覧船の内情
- 事故関係
関連項目
脚注
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