限定された執拗な概要について
十分後にもう一度ドアが開き、黒いスーツを着た背の高い男が入ってきた。男は「ようこそ」とも「お待たせしました」とも言わなかった。僕も何も言わなかった。男は黙って僕の向いに腰を下ろし、少し首をかしげて僕の顔を品定めするようにしばらく眺めた。たしかに相棒が言ったように、男には表情というものがなかった。
ひとしきり時間が流れた。
村上春樹初期作品「鼠三部作」のラストを飾る小説。野間文芸新人賞受賞作。
村上春樹が専業作家となり本格的な創作活動を開始させたターニング・ポイントとされる村上初の大型長編である。この作品から代表作『ノルウェイの森』を発表する約五年間に春樹はその地位を確立した一種の「黄金時代」と捉えても良いだろう。「身近な女性が突然どこかへ行ってしまう」「突然のファンタジー展開」「猫」を筆頭に村上文学の定番パターンが本作には揃っていると言えよう。
全てが交換可能なものになり歴史の重みを失った消費社会のリアルが、歴史を欠いた北海道の辺境の光景などを通じてスケッチされている。
日曜の午後のあらすじ
突然妻に別れを告げられた「僕」。そんな「僕」と相棒が経営する広告代理店に右翼の大物の秘書だと称する怪しげな人物がやってくる。代理店が制作したPR誌に掲載された写真に紛れた「星形の斑紋が刻まれた羊」を探すように、さもなければ会社を潰す、と「僕」は脅迫される。その写真を撮ったのは「僕」の古い友人「鼠」。羊、鼠、北海道、いるかホテル、いくつかのキーワードを手がかりに「僕」の冒険が始まる––––
彼女はソルティー・ドッグを飲みながら作品にまつわるエピソードについて語る
- 『羊をめぐる冒険』はそれまでに春樹が描いた中・長編の物語と比較すると、洋楽やサブカルの固有名詞やうんちくがそこまで見受けられない。
- 小説が英訳・翻訳されていく際、『羊をめぐる冒険』以前の小説を春樹は長い間翻訳を拒否していた。
関連項目を数える
- 村上春樹
- 羊
- 児玉誉士夫
- 前作(長編)→1973年のピンボール
- 次作(長編)→世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
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- 1973年のピンボール
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