ねじまき鳥クロニクル(英題:The Wind-Up Bird Chronicle)とは、村上春樹の小説である。
概要
「泥棒かささぎ編」、「予言する鳥編」、「鳥刺し男編」の三つのパートで構成された村上春樹による8作目の長編小説。
奇妙な鳥の彫像がある空き地の庭や枯れた井戸、満州やロシア、果ては夢の中などを旅し、世界を回すネジを追い求める探索記。
1984年6月から1986年の冬が主な季節であり、全編を通して「水」のイメージが投影されている。
世界各国で翻訳がなされ、日本においては読売文学賞を受賞するなど『ノルウェイの森』と並ぶ作者の代表作。
かつて村上が発表した短編『ねじまき鳥と火曜日の女たち』が冒頭のプロットになっている。
また、同じく短編の『パン屋再襲撃』でマクドナルドを襲撃する夫婦はパラレルの岡田夫妻だと思われる。
この他にも様々な村上作品の登場人物のゲスト出演が見受けられる。
作中において「勃起」は5回、「ペニス」と「射精」は11回、「やれやれ」は13回使われている。
あらすじ
飼い猫がいなくなり妻の帰りも遅く奇妙な女からテレフォンセックスまがいの電話が鳴り響くなど今までとは違う奇妙な日々を送る平凡な主人公。
ある日、加納という赤いビニール帽の女に電話で呼び出され、これからいろんなことが起きる。今までのことはただの予兆に過ぎないということを告げられる。
登場人物
岡田亨
禁煙に成功したが代わりにレモンドロップ中毒になった法律事務所を辞め失業中の主人公。年齢は30歳と2か月。身長は172cm、体重63kg。脈拍はかなり遅め。混乱するとアイロンがけをするという癖がある。『カラマーゾフの兄弟』の兄弟の名前を全部記憶していてマイルス・デイヴィスのサイン入り『スケッチ・オブ・スペイン』を所持。
岡田久美子
健康食品や自然食料理を専門とする雑誌の編集の仕事についている亨の妻。本業の他、ちょっとしたイラストレーションの仕事も請け負っており結構な給料をもらっている。夫に女子高生向けの詩の執筆を依頼したりしているがそこまで勤勉に働いてほしいわけでもないらしい。最近帰りが遅い。
綿谷昇
久美子の9歳年上の兄。主人公曰く「頭脳明晰でかなり不快な人物」。数年前に新しい種類の経済学の本を執筆したことにより一躍注目を集め、今ではコメンテーターとしてTV番組で弁舌を振るうなど世間ではかなりの有名人。数年前、クレタを暴力的に犯し傷つけたらしい。食中毒で死んだ久美子の姉に歪んだ愛情を向けていた。近年は政界進出を目論んでいる。
笠原メイ
空き家の庭でショートホープを吸いながらラジオを流し男性向け雑誌を読みふける16歳のJK1。5月生まれ。バイク事故により怪我を負ったことを理由に休学中。質問が大好きで透のことを「ねじまき鳥さん」と呼ぶ。やたらカツラと縁が深い。
加納マルタ
赤いビニール帽がトレードマークの奥行きの無い目をした31歳の女性。体の組成の研究をしている。豪華な名刺入れを使っているが相手側からは訪ねてこないので電話番号も住所も名刺には記載していない。なお、加納は本名だがマルタはマルタ島からとった職業上の名前である。
加納クレタ
1960年代初期的な外見をしたマルタの5歳年下の妹。姉の助手のような仕事についている。クレタは偽名だが姉の命名で自身はクレタ島に行ったことは無い。久美子と体格が似通っている。話が非常に長い。自身曰くかつては肉体の、今は意識の娼婦。
赤坂ナツメグ
金製品を纏う、人々が間違った格好をしているのが我慢ならない中年の元ファッションデザイナー。とある出来事をきっかけに「仮縫い」という特殊な仕事を請け負うことになる。
赤坂シナモン
端正な顔立ちで無口なナツメグの息子。幼い頃、とあるショッキングなモノを見たショックで口が利けなくなった。
ワタヤノボル
茶色の縞で尻尾の先が少し折れ曲がっている大柄な雄ネコ。ドロンとした目つきなどが似ていたため妻の兄の名を命名されていたが、後に「サワラ」と改名する。
電話の女
スパゲティーを茹でている時に奇妙な電話をかけてきた謎の女。
ボリス・グローモフ
「皮剥ぎボリス」の異名を持つ冷徹かつ残忍なNKGB少佐。
本田大石
結婚してから1年の間、岡田夫妻が家を訪ねていた目黒に住む神がかりな老人。久美子の両親から強い信頼を置かれている。亨が久美子と結婚することができたのも彼のおかげ。亨に「水には気を付けろ」と言い残す。
間宮徳太郎
戦時中本田さんと生死をともにしたことがある、非常に礼儀正しい隻腕の元日本陸軍中尉。本田さんの形見を配っている。
ねじまき鳥
ここ1か月くらい、毎日岡田家の近くの木にとまりぎいいいいいと鳴く、世界のネジを回すという鳥。誰もその姿を見たことは無い。
関連動画
関連項目
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