RDCとは、次のものを指す。
1.Budd(バッド)社の製造した自走式ディーゼルカー「Rail Diesel Car」。
2.Rdcstudio。動画編集のソフトで、ニコニコの「RDC」タグとしてはこれが多い。
3.株式会社アール・ディー・シー。がってん寿司などの飲食チェーンを経営する。
ここでは1.について解説する。
ちなみに台湾の鉄道の動画にも「RDC」タグが付いていることがあるが、あちらは正しくは「DR」ないし「DRC」なので混同に注意。
概要
アメリカでは、自動車の普及(モータリゼーション)で、すでに第二次大戦前より旅客鉄道は衰退傾向にあった。
しかし、戦後間もない頃は、まだ相応の旅客需要があり、鉄道各社は輸送効率の向上を図り、ディーゼル機関車による無煙化を進めていた。
そんな中、ステンレスカーでおなじみのBudd社が発表したのが、RDCことRail Diesel Carであった。
特徴
RDCは、両運転台を備えた自走式ディーゼルカーである。
ひとことでいえば、「日本的なディーゼルカー」といえる。特徴を列挙すると次のようになる。
- 両運転台を備え、1両から運転できるので、閑散路線の輸送効率向上が見込める。
- 総括制御が可能なため、2両以上の長編成運転も可能。輸送需要が増えても適宜対応できる。
- 機関車牽引の列車より高性能で、所要時間の短縮が図れる。
- 原型は転換クロスシートを備え、快適な移動を可能とし、路線のイメージ向上につながる。
- ステンレス鋼のシルバーボディーのため、保守や塗装の手間と経費が削減できる。
- ステップとそれを塞ぐ折りたたみ式の鉄板を装備し、地面からの乗降と、高床ホームの両方に対応できる。
- 5種類のタイプが用意され、沿線の輸送需要に対応したものを選んで導入できる。
アメリカでは、かつてはギャロッピング・グースやガス・エレクトリックといった自走式の車両がいろいろと存在していたが、当時それらはすでに過去のものになっていた。そのためRDCは異質な存在で、一部のファンからも注目されている。
形式紹介
次の5形式が用意された。日本式の形式記号で例えると分かりやすいので、併記しつつ紹介する。
なお、各形式とも車端部にデッキがあり、そこに簡易運転台のような運転席を備えたスタイルになっている。そのため独立した運転室は存在しない。
各形式とも、屋根に巨大なクーラーのようなものを備えているが、これはラジエーターグリルである。
RDC-1
日本で言う「キハ」。全長26m。両運転台を備え、その間に客席が並ぶオーソドックスなスタイルである。座席定員90名。
RDC-2
日本で言う「キハニ」。全長26m。両運転台で、客室を備え、片方の運転室寄りに荷物室を備える。大きな荷物扉が特徴的。座席定員70名。
RDC-3
日本で言う「キハユニ」。全長26m。両運転台で、客室を持ち、片方の運転室寄りに荷物室と郵便室を備える。両デッキのドア、荷物扉、郵便扉と片側に4枚のドアが並ぶ。
RDC-4
日本で言う「キユニ」。全長22mと他の形式より短い。両運転台だが、客室は備えず、郵便室と荷物室だけを備える。
RDC-9
日本で言う「キサハ」。全長26m。運転台を備えず、客席のみの中間専用車である。厳密にはエンジンを1台搭載しているので「キハ」にあたる。座席定員94名。
RDCの活躍
RDCは1両から自走できる機動性のよさを買われ、全米各地の鉄道へ導入された。
新しく快適な列車は、通勤客やローカル線沿線住民の足として活躍し、近代化を支えて鉄道斜陽時代を生き抜いた。とはいえ多くの鉄道事業者は1970年ころに旅客営業を終えているため、それと運命を共にした車両も少なくなかった。一部の車両はアムトラックに引き継がれ、暫くの間活躍を続けた。
観光列車で知られるアラスカ鉄道でも、地域住民のローカル需要に対応するため使用されていた。沿線へ必要物資を届けたり、狩りやキャンプに出かける人を希望のところで乗降させたりするなどして、最近まで活躍を続けた。この様子は「世界の車窓から」でも2度取り上げられている。
アメリカ以外でもカナダやオーストラリアにも輸出され、また客車になった変り種もいる。
さすがに老朽化により現在はほとんどが引退しているが、テキサス州ダラスのTREでは内外を改装して現役で活躍している。オレゴン州ポートランド郊外のTRIMETでも、新型ディーゼルカーの検査時の代車として、アラスカからの中古車が時々走っている。
台湾で活躍した弟「DR2700」形
ちなみに東急車輛製造がバッド社のライセンス下で1966年に台湾向けとして製造したDR2700形は、屋根上のラジエーターグリルやコルゲーションで覆われたステンレスボディなどRDCと多くの特徴を兼ね備え、登場時はデラックスな車両として脚光を浴びた。こちらも2014年の花東線電化まで実に50年近くも活躍している。
M-497
このRDCシリーズのうち、ニコニコ動画でもっとも有名と思われるのが、ニューヨーク・セントラル鉄道(NYC)によるM-497である。
1996年当時、経営不振にあえぎつつも、日本の新幹線に触発されて高速鉄道開発を目指していたNYCは、「列車にジェットエンジンつければ手っ取り早く高速運転できんじゃね?」という突拍子もないアイデアを思いつき、実行してしまった。
M-497はRDC-3の荷物・郵便室と反対側の運転台を流線型のいわゆる鉄仮面に改造し、その上にGE製ターボジェットエンジン(B-36爆撃機と同じもの)を2機搭載する。
機関車扱いされることがあるが、RDC-3(キハユニ)が元になっているので、一応客室部分もある。
1966年に早速速度試験が行われ、183.85mph(約296km/h)という記録を出している。アメリカの鉄道では今もこの記録は破られていない。
実験は成功裡に終わり、M-497は普通のRDC-3に戻った。
残念ながら、この実験結果はNYCが経営的に更にえらいことになったため活用されることがなかったが、世が世ならアメリカの北東回廊線(ボストン~ニューヨーク~ワシントンD.C.のメガロポリス区間、現在アメリカ唯一の高速鉄道アセラ・エクスプレスが走る)で、ジェットエンジンをつけたステンレスカーが爆走していたかもしれない。
鉄道模型としてのRDC
1両から運転できる手軽さから、RDCは古くから鉄道模型としてよく製品化されていた。
まず、アメリカで一番普及しているHOゲージとしては、アサーンから低廉なキットが古くから製造されていた。中国製で価格の安いライフ・ライク社からも、PROTO 10000シリーズとして安価ながら実物の雰囲気をよく捉えた完成品が出ている。
次に、模型と言うよりは鉄道玩具として普及しているOゲージ製品としては、最大手のライオネル社が製品化している。小柄なショーティーモデルである。
それから、日本でもっとも普及しているNゲージは、古くはCON-COR製品があったが、2000年代初頭に日本のKATOが製品化。ヘッド・テールライト点灯、窓の下に収めた動力装置など日本型で培った技術がふんだんに使われている。11の鉄道会社のカラーで一挙発売し、Budd社のデモンストレーション仕様や銀色無装飾など様々なバリエーションが楽しめる。2両セットの形で一部が国内販売されたので、外国型コーナーで見かけた人もいるかもしれない。
さらに、これだけにとどまらず、特製品として前述のM-497まで発売している。DCCサウンド仕様で、ジェットサウンドが楽しめるようになっている。
さらに、最小のZゲージ製品としても、マイクロトレインズ社が完成品を発売している。Zゲージのアメリカ市場はとても小さく、そんな中でRDCが製品化されていることからも、この形式の特異性がうかがえる。
いずれも様々な鉄道会社の塗装を纏い、地域密着のRDCらしい豊富なバリエーションを楽しめる品々である。
関連動画
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関連項目
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