これに比べると山岡さんの鮎はカスやとは、雄山の鮎のテンプラを食べた京極さんの台詞である。
概要
漫画『美味しんぼ』の台詞。8巻第4話として収録された「鮎のふるさと」に登場。コラ画像ではなく、実際に言っている。
海原雄山が作った鮎のテンプラを食べた京極万太郎が、涙を流しながら言った台詞。京極はこれより前に山岡士郎の作った鮎のテンプラを食べており、台詞の「山岡さんの鮎」はそれを指す。なお、雄山だけでなく士郎もこの場に同席している。
こんな旨い鮎は食べたことない…
いや、そやない、
何十年か前に食べた記憶がある。
旨い、ほんま旨い…これに比べると山岡さんの鮎はカスや。
料理を作った他人に対して言ってはいけない台詞ではあるが、おそらくあまりにも雄山の鮎が美味しすぎてタガが外れ、思わず口から出てしまったのだろう。
しかし、それにしても作った本人を前にして、比較対象に挙げて「カス」と呼ぶのはなかなか容赦が無いため、話題に挙げられることがある。SNSでは「何かを褒めるために何かを貶す」という好ましくない発言の例として引き合いに出される場合もある。
発表当時でも言葉の強さが気にされていたのか、アニメ版の台詞は「山岡はんのとは比べ物にならん」とマイルドな表現に差し替えられている。また、帰る間際にも京極が「山岡はんのも十分旨かったですよ。すまんことでした、せっかくご馳走してもろたのに」と申し訳なさそうな顔で謝る場面が追加されている。
背景
ケガで入院した京極のお見舞いに山岡士郎と海原雄山が現れ、士郎が退院後の京極に食べさせる鮎のテンプラをめぐって喧嘩になってしまう。そして喧嘩をなだめていた京極が「わかったわかった、こうなりゃ仕方おまへん」と言い、流れで鮎のテンプラの料理対決で決着をつけることになる。
全快祝いの日、士郎は最良の材料と最高の技術をもって鮎のテンプラを出し、会の出席者から高い評価を得る。京極も「おう、これは思った通りの味!」「こんな旨い鮎のテンプラは食べたことないわ」と喜ぶ。
そして雄山が出したテンプラについても他の出席者は「甲乙つけがたい」「引き分け」という評価だったが、京極だけは「なんちゅうもんを食わせてくれたんや・・・」と感激し、涙を流しながら前述のセリフを語る。
その後、雄山が使った鮎は京極の故郷である高知の四万十川のものだと雄山本人の口から語られる。京極は何十年も帰っていない故郷の味を無意識に思い出して感極まっていたのだ。
そして、雄山が「料理は人の心を感動させてはじめて芸術たり得る」と士郎を叱咤する場面に話が続く。
山岡が作ったテンプラは客観的に見れば「カス」と言えるような酷いものでは決してなく、その年で最高の鮎を自分で聞き込みをして現地(京都・保津川)まで行って仕入れ、鮎のサイズ・調理法も味と香りが引き立つ最良のものを使っている。決して京極の思いを無碍にして作っていたわけではない。
実際京極以外からの評価は「互角」で、味に微妙な差がある程度だった。食材と技術で見れば双方とも一級品を使っていたのではないかと思われる。
ただ、雄山は今回の食事の主役になっている京極の故郷の四万十川の鮎を使い、京極の心を大きく動かした。
そもそも以前、士郎は京極の経歴を調べ上げ、別の料亭で土佐のイワシの丸干しを出して喜ばせており、「食い物は心」とも言っていた(1巻第3話~4話、雄山もこの回でイワシの件を挙げて「それならいったいどこの川の鮎が京極さんに喜ばれるかわかりそうなもの」と指摘している)。
しかし、対決の時点では良い食材と技術を追い求めるあまりにそのことを忘れてしまっており、四万十川の鮎を食材の候補にすら挙げられず、対決後の雄山の説教に対しても何も言い返せなかった。
なお、初期の京極は言動に棘のある側面があったが、話が進むに連れてその言動は鳴りを潜め、温厚な性格が強調されるようになっていった。
原作漫画・アニメ
関連項目
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