『THE WORLD』オレだけの時間だぜとは (ザワールドオレダケノジカンダゼとは) [単語記事]

あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね
この記事を読もうとするって事は逆に「ネタバレ」されるかもしれない
という危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね…

『覚悟して来ていない人』なら、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」を1巻から第7部「STEEL BALL RUN」23巻（通算103巻）まで読む事をオススメします。

『THE WOL RD』オレだけの時間だぜとは、ディエゴ・ブランドーの新たな世界である。

『THE WORLD』オレだけの概要だぜ

漫画ジョジョの奇妙な冒険 Part7「スティール・ボール・ラン」に登場する、ディエゴ・ブランドーの台詞。

親友ジャイロ・ツェペリを失いながらも、物語のラスボスであるファニー・ヴァレンタイン大統領との闘いに決着をつけたジョニィ・ジョースター。彼の半身不随で動けなかった脚は動かせるようになり、もうSBR レースでの目的は果たされた。最後にやるべき事は海に流されたジャイロの遺体を探し、祖国へ送り埋葬してやる事。

しかし、ジョニィは異変に気付く。ヴァレンタイン大統領がレースを利用し手にしようとした『聖人の遺体』が、くるんだ毛布ごと何者かに盗まれていた事を。何者かがジョニィとヴァレンタインの闘いの近くで潜み、遺体を馬に載せて消え去ったのだ。そしてその馬の足跡はジョニィの見覚えがあるSBR レース参加者の誰かの物だった。

決着をつけるためジョニィはジャイロの捜索をスティール夫妻に任せ、犯人を追う事にする。スティーブン・スティールの情報によると、大統領はSBR レースのゴール地点であるマンハッタン島・トリニティ教会の地下に遺体を保管するための「シェルター」を建設していた。つまり聖人の遺体を知る容疑者はシェルターに向かうために現在もレースに参加している者である。

容疑者の足跡を見つけ追跡するジョニィだが、家の陰に隠れた一瞬見失い、見つけたかと思えば鉄のフェンスを乗り越えていて、ジョニィのスタンド「タスク」の射程のギリギリ届かない距離を保っていた。それでいながら、今まで生き残っている参加者の中では犯人は見当もつかない。

ようやくタスクの射程圏に追いつき、狙いを定めたその一瞬、犯人は隠れる場所も何もない道で姿を消してしまったのだ。しかも、足跡は途中で途切れている。そいつが自身の後ろを走っているのに気づき、振り向いて狙撃するが、そいつの姿は…

我われはこの男を知っている！
いや！その顔とその世界を支配する幽波紋を知っている！

『THE WORLD』
オレだけの時間だぜ

そいつとは、ヴァレンタイン大統領との闘いで死亡したはずの、ディエゴ・ブランドーだった（足跡に見覚えがありながら見当もつかなかったのは、すでに死んでいた事から容疑者から外していたからだろうか）。しかも、そのそばに立つスタンド能力は「ジョジョの奇妙な冒険」をここまで読み進めた読者なら忘れもしないであろう、第3部で復活したディオ・ブランドーがジョースターの肉体と共に得たスタンド能力『ザ・ワールド』そのものだった。そして時は止まり、止まった時の空間でディエゴはジョニィに向かってナイフの雨をばらまく。かつてDIOがやったように…！！

このディエゴ・ブランドーとは、ヴァレンタイン大統領の平行世界を行き来するスタンド「D4C」によって平行世界から連れてこられたディエゴなのだ。タスク ACT4の能力から逃れられないヴァレンタインは生きているディエゴのいる平行世界に行きつき、もしジョニィを説得できなかった場合、聖人の遺体でアメリカの未来を幸福にする支配者の地位をこのディエゴに託したのだ。

悪く言えばヴァレンタイン大統領の悪あがきで、しかも親友を失いながらも決着をつけたカタルシスの後に挿入された蛇足なバトルとも取れなくはない。しかし、本作「STEEL BALL RUN」は世界は違えども作品のテーマは過去から連続させようという作者の創作に対する姿勢から、登場人物の姓名や波紋の要素を受け継ぐ鉄球など、世界を一新しながらも「ジョジョの奇妙な冒険」たらしめ続けた。そして、再登場したDioことディエゴ・ブランドーはジョジョ全体を象徴すると言っても過言ではない「時を止めるスタンド」能力の一角、「ザ・ワールド」を持って再びジョースターの姓を持つジョニィに闘いを挑むのだ。第1部から「ジョジョ」を追い続けた読者にとってこれほど最高の悪あがきで胸熱な蛇足なバトルはありえないだろう。

補足解説

これまでのディエゴ・ブランドーがスタンド能力として用いていた「スケアリー・モンスターズ」は、「聖人の左眼球部」を手にした事により、フェルディナンド博士が持っていたスタンド能力を自身の才能として目醒めさせたものであり、ディエゴ本来のスタンド能力ではなかった。また、スケアリー・モンスターズによる恐竜化の身体能力向上や他の生物を恐竜化して支配する能力は、さながら第1部で発現した石仮面による吸血鬼化を彷彿とさせる。
ウルトラジャンプ掲載時のこのセリフが出たエピソードタイトルは「新たな世界」。そして扉絵のアオリは「Hello,Brand-new World.」。「世界」の名を冠するスタンドの再来をまさに表したと言える。
「THE WORLD」のスタンド像は、画風の変化もあってマッシブだった第3部の「ザ・ワールド」に比べてスリムな印象となっている。また、膝にあったハートの意匠がDioの頭文字Dの意匠に変わっているが、明確な2つのスタンドデザインの区別化というわけではなく、第6部連載当時に発売された画集「JOJO A-GO！GO！」に描き下ろされたザ・ワールドのデザインもDの意匠であり、以降、新たに第3部で登場したザ・ワールドを描く際もDの意匠というデザインになっている。
第3部では「ザ・ワールド」の時を止める能力を、花京院典明がその命を賭して解明する事ができたが、「THE WORLD」のスタンド能力を目の当たりにしたジョニィは、「まるで時間が何秒か「止められた」みたいだった！」という超速理解をやってのけた。もっとも、すでに時間を数秒巻き戻せるリンゴォ・ロードアゲインのスタンド「マンダム」と闘ったからこそ理解できたのだろう。
PS3/PS4用ゲーム「ジョジョの奇妙な冒険アイズオブヘブン」では、スケアリー・モンスターズによる恐竜化の能力を使うディエゴ・ブランドーとは別に、「THE WORLD」を使用するディエゴがプレイアブルキャラクターとして実装されている。その際のキャラクターネームは「平行世界から来たディエゴ」。