アレクサンドラ構文とは、とある文章についてネット上で用いられる通称である。
本記事では、同様によく言及される「アミラーゼ構文」についても扱う。
「アレクサンドラ構文」と呼ばれる文章は、以下のものである。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文章は「開隆堂出版」による中学3年生向けの英語教科書『Sunshine English Course 3』において、「Alex」という単語の「註」として掲載されていたものだという。
そして、この文章は読解力を評価・測定する目的のテスト「リーディングスキルテスト」の中で、文の構造を正確に把握する「係り受け解析」の能力を測るための問題文として以下のような形で引用された。
以下の文を読みなさい。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
お時間のある方は、実際にどの選択肢が最も適当であるかを考えて、以下のニコニコQで回答してみてほしい。
同テストは「一般社団法人 教育のための科学研究所」が提供しているもので、「事実を他者に伝達・共有するための文書を初見で読んで正確に理解できる」という実用的な能力を測ることを目的として開発されている。
その目的のために、同テストの問題に使用される文章は実際の教科書、新聞記事、辞書・事典等から引用されているのである。
この問題は「正答率が低い」ことで話題となり、世間によく知られるようになっている。
例えば、2017年1月30日の読売新聞に掲載された「読解力が危ない」という連載記事にて、「埼玉県戸田市で中学生を対象に行われたテストにおいて、上記のAlexandraの問題では正解となる「①Alex」を選択できたのは45%であり、つまり半数以上が正解できなかった」という出来事が紹介された。
また、「教育のための科学研究所」の代表理事・所長であり、「リーディングスキルテスト」の開発者の一人である「新井紀子」氏は2018年2月に『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という書籍を東洋経済新報社から出しており、この書籍内でも上記の問題が紹介されている。そして同書籍は数十万部を売り上げるベストセラーとなっている。この書籍も広まるきっかけとなっているかもしれない。
同書籍によれば、全国中学生(235名)の正答率は38%、全国高校生(432名)の正答率は65%だったという。元の教科書が対象読者としている中学3年生(105名)に絞っても正答率は51%と、やっと半数になる程度であった。
なお、いつの時点でのどのような中学・高校生を対象とした結果であるのかは同書籍内で詳細が明示されていない[1]が、高校生については「進学校に通う高校生」であるという。
新井紀子氏は2025年にネット上で「アレクサンドラ構文」の呼称が広まった(後述)ことをきっかけに、リーディングスキルテストの公式サイト内に掲載された以下の記事において追加解説も行っている。
そこでは、高校生で「68%」と中学生の「38%」より成績が改善していることについて「中学より高校の方が入試を経ている割合が上がるので単純な比較ができない」といった意味の注意点を述べている。対象の学校に関する詳細なデータは提示していないものの「上記の結果は、「県立高校の上位3校程度の中での平均値」だとお考えください。」とも述べている。
そのうえで、「高校入学以降は(現状の教育では)読解能力があまり上昇しなかった」という過去の研究結果を踏まえて、「「アレクサンドラ構文」の成人日本人の正答率は50%を下回ると推定されます」とも記している。とはいえ、あくまで「現状の教育では」であって、新井紀子氏らは有効なトレーニング方法も提唱している。
ネット上でも、2017年当時のSNS「Twitter」(旧称。2025年現在では「X」)にて、前述の読売新聞の紙面を紹介した投稿が注目を集めていた。
(2017年に話題となったときのまとめ)その後も散発的に注目を集めており、例えば以下のように2021年にも話題となっている。
本記事のタイトルにも採用した「アレクサンドラ構文」という呼称が広まったのは2025年5月5日のXポスト
が注目を集めたことがきっかけのようである。それ以前にもこの呼称を使っていた例はわずかにあったようだが、広まってはいなかった。
(2025年)この問題に誤答が多いことについて、「なぜ誤答するのかわからない」という人もいるようだ。
これについては、様々な説明がなされている。
新井紀子氏は前述の自著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』にて、アレクサンドラ構文では誤答である選択肢②~④のうち、選択肢「④女性」を選ぶ回答が多かったことに着目。
「愛称」という語彙を持たず、また「意味を知らない言葉は飛ばす」癖が付いているために、空欄のある文章「Alexandraの愛称は( )である。」のうち「愛称」に関わる部分を飛ばして「Alexandraは( )である」と読み替えてしまい、その場合であれば正答となる「④女性」を選んでしまったのではないか……、と「この誤答が多い理由」を推測している。
SNSなどでは、「飛ばした」のではなく逆に「補った」結果ではないかと推測する人もいるようだ。
穴埋めする問題文を、「Alexandraの愛称で呼ばれるのは( )である。」と無意識的に文章を補ってしまい、その場合の正答となる「④女性」を選んでしまうのではないか……というわけである。
もしこれが原因であれば、こういった「無意識的な補い」が起きにくい穴埋め文、例えば「( )はAlexandraの愛称である。」などに変更すれば正答「①Alex」がより多く選ばれるのかもしれない。
また、学習塾のウェブサイトなどでは「文章をちゃんと読んでいるようで、実際にはキーワードを拾い読みしているだけの人がいるので、その結果として誤答するのではないか」といった意見も。
穴埋め文「Alexandraの愛称は( )である。」を見た後に問題文に戻り、ざっと見渡して「関係が深そうな部分」を探すと「女性の名Alexandraの愛称である」という箇所が目に入る。文章全体をちゃんと読まずにここだけ拾い上げて、この部分にあるキーワード「女性」を当てはめてしまう……といったような仮説である。
「じっくり考えればわかりそうな問題なので、テストの制限時間を気にして焦っていたせいで誤答する者が多くなった面もあるのではないか」という声もあがる。
ただし、リーディングスキルテストは問題一つ一つには制限時間を設けず、「問題を解いたら次の問題が表示される」という形式であり「テスト全体の制限時間内に解いた問題数を分母として正解率が決まる」タイプのテストとして設計されている[2]。よって「とにかく大量の問題を急いで解く」よりも「一つ一つの問題をじっくり考えて、確実に正答していく」方が正解率が上がるテストなのだ。
ただし、受験者がその点を十分理解していなければ、やはり焦りが生じる可能性はある。
アレクサンドラ構文に類似のものとして「アミラーゼ構文」と呼ばれる、以下の文章がある。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文章は「東京書籍」による高校生物基礎教科書『新編・生物基礎』に掲載されていたものだという。
こちらの文章も、「アレクサンドラ構文」と同じく「リーディングスキルテスト」内で「係り受け解析」の能力を測るための以下の問題文に用いられた。
Aの文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
こちらも、お時間のある方は実際に以下のニコニコQで回答してみてほしい。
上記の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』によれば、「難易度がとても高かった」問題であり、テスト結果から推測される「能力値」とこの問題の正答率の関係を解析したとき、能力値が最も高い部類の人以外はほとんど正答できない問題だったとのことで「「アミラーゼ問題」は極端に上位層を識別する問題でした」とも記されている。
書籍内にはこの問題の正答率が記載されていないが、新井紀子氏も出演している以下の動画によれば「全体で16.3%」とのこと。
「高い知能を持つと思われる人々であれば楽々と正答できる」のかと言えばそうでもないようで、「某新聞の論説委員から経産省の官僚まで、なぜか③を選ぶ」とのことである。「なぜその誤答が多いのか」を考えてみるのも面白いかもしれない。
これらの問題文については、「問題文自体がよくない」といった趣旨の反発/批判の声も挙がる。
こういった「誰もがすっきり納得できるというわけではない、少し「論争」となるような要素も含まれるもの」であったことが、話題性をさらに後押ししたとも言えるかもしれない。
よくある反発/批判としては「アレクサンドラ構文やアミラーゼ構文も、穴埋めさせる文章も、理解しづらく、誤答を招く文章、悪文になっている」「『理解しづらく、誤答を招く悪問』を出しておいて『誤答するのは能力が足りない』などと言うのはいかがなものか」といったもの。
新井紀子氏も、アレクサンドラ構文については上記書籍内にて「多くの生徒が理解できない文章だったということは、元の教科書においても註として意味があったとは言えない」といった趣旨の指摘をしている。理解しづらい文章であることは間違いないだろう。
しかし「実際に教科書などに掲載された文章」であったことからもわかるように、この程度の『理解しづらい』文章は現実として世の中にありふれている。
「リーディングスキルテスト」は世の中に実際にある「理解しづらい文章」を読み解く能力を測るテストであるとも言えるのだから、「理解しづらい文章」を使っていることを「悪問だ」として責めるのは筋違いの話ではある。
また、「日本語の読解力を問う問題に英語や外来語の化学用語が混ざっているのはおかしい」「英語や化学の知識で問題の理解のしやすさに差が出てしまうから純粋に読解力を測る問題になっていない」という意見もあるようだ。
だが、実際の英語や化学用語ではない謎の造語で作り直しても成立する問題であるから、やはり根本的には読解力の問題ではある。
とはいえ、問題に含まれる語彙への理解の有無で難易度に差が出てしまうことは確かだ。
しかし「読解力とは、語彙力や、その語彙に関する知識も含んでの総合力でもある」と考えることもできるだろう。
アレクサンドラ構文を用いた問題について「アレクサンドラの愛称はアレックスだけじゃなくてサンドラやサーシャなど複数あるじゃん」といった声をあげる人もいる。
また、アミラーゼ構文を用いた問題について「むしろ化学の知識がある方が、科学的事実としてセルロースは①デンプン・②アミラーゼ・③グルコースのいずれとも形が異なるのだからどれも正解な気がして混乱する」という声もある。
確かに「アレクサンドラの愛称はアレックスだけじゃない」「セルロースはデンプン・アミラーゼ・グルコースの全てと形が異なる」という主張は、どちらも正しい。
だが、その事を理解しつつも問題文中の記載『この文脈において』を踏まえ、「この文脈での正答はこれだ」と導けるのが「読解力」ということなのだろう。
掲示板
4 ななしのよっしん
2025/06/17(火) 07:27:32 ID: pA+aDYCiIw
時間に追われる受験とかは割と引っかかるかも
個人的にはSNS社会だからこそ、この手の問題はやるべきだと思う
5 ななしのよっしん
2025/06/17(火) 08:51:30 ID: DIK5TrERuQ
このテスト全体の制限時間35分ですって
何問解いても終わらない文章問題を延々と続けたら自分も疲れて間違えそう
置かれた状況による読解力の変化とか測れないのかな
問題数固定・時間無制限・高額賞金出るなら正解率かなり上がると思う
6 ななしのよっしん
2025/10/29(水) 13:49:04 ID: ZL+g8nvAbq
アレクサンドラ構文を読んでみて思いましたが
外国人でさえ日本人の日本語は高度な本音と建前を使いこなし、かつ回りくどい文章や様々な意味や似たような語句を使って会話しているので、日本語を使いこなすのは難しい。と言ってる意味が分かる気がします
日本語の文章って割と文脈や単語の意味だけで並べ立てた滅茶苦茶な文章でも文が成立してしまうから勘違いが起きてしまったり、マウントする人種も併発してしまうのかなと思った。
例えば、ALEXは男性にも女性にも使われる略称である。さらに、alexandraは女性に使われる愛称であり、alexanderは男性に使われる愛称である
では、問題。alexandraは何の略称ですか? と文章題を補う形にすると正答率は上がるのだろうと思うし、歴史的な内容や概要も修正されたりするから、この問題文の出し方が10割正確と言えるか検証しても良いと思う
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/06(土) 07:00
最終更新:2025/12/06(土) 07:00
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