キーウとは (キーウとは) [単語記事]

キーウ（キエフ）とは、ウクライナの首都である。

曖昧さ回避

キエフ大公国 - 9世紀から1240年までにキエフを中心に存在した国家。
キエフ(空母) - 1970年代に就役していたキエフ級重航空巡洋艦の1号鑑。詳しくは「キエフ級重航空巡洋艦」の記事へ。
キエフ（駆逐艦）- 1940年代に就役していたキエフ級駆逐艦の一番艦。

概要

名称

「キエフ」という名称はロシア語由来であり、長らく日本でもこちらが使われてきた（例：キエフ大公国、キエフ級重航空巡洋艦）。これに対して「キーウ」はウクライナ語に近い発音となっており、2010年代ごろから英語圏ではこちらが使われるようになってきているほか、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降は日本のメディアでも「キーウ」と表記する例が見られつつあった。

ウクライナ語でのスペルはКиїв、ロシア語でのスペルはКи́ев、英語でのスペルはKy ivとなっている。ウクライナ語での発音はWikipediaで聞くことができる。

当記事では、作成時点(2022年 2月末)当時の外務省の表記であり、メディア等で頻繁に使われている「キエフ」という記事名にしていたが、3月末よりウクライナ政府の要望を受けて日本政府が「キーウ」の表記を使用する方針を明らかにし（参考）、各メディアもそれに倣う形となったため（例：毎日新聞）、4月初頭に記事名が「キーウ」に改められた。もちろんウクライナではロシア語も話されているので、「キエフ」と表記しても誤りとなるわけではない。

なお、過去の国名である「キエフ大公国」や、楽曲名「キエフの大門」などの用語については歴史学などの分野で別に議論が必要であると考えられるため、現時点(2022年 4月)では改称していない。

ソ連併合時やそれ以前はキエフ、独立以降の話をする時はキーウと呼び分けられる場合もある。
侵攻から一年経つが、30年以上キエフ呼びしていた人も多いのでキエフと間違える人も多い。

地理

ウクライナ北部にある都市。人口は約290万人であり、大阪市の人口よりも多い。黒海に注ぐドニプロ川（ドニエプル川）の両岸に市街地が広がっており、都市の中心は川の西側にある。

気温は夏が平均20℃、冬が平均-3℃。年間降水量は600～700mm程度であり、日本の東京よりやや肌寒く少し乾燥しているものの、雪はそれほど珍しくはない。

民族的にはウクライナ人が8割で、ロシア人は2割程度と少数派であるが、日常的に使う言語としてはロシア語の方が多く話されている。

後述するキエフ大公国時代からの教会建築が残る一方で、ウクライナの政治・経済の中心でもあり、多様な産業が発展している。An-124やAn-225を設計したアントノフ社の所在地でもある。３本の地下鉄や複数の大学、国際空港など、首都にふさわしいインフラも整っている。

歴史

伝説上の人物「キーイ（キイ）」が2人の弟とともに作った町であるため、「キーイの都市」という意味の「キーウ（キエフ）」という名前が付けられたとされる。実際には5世紀末から6世紀にかけて集落ができたと推定されている。

9世紀になるとヴァリャーグ（ヴァイキング）が入り、国号を「ルーシ」とするキエフ大公国が作られた。キエフ大公国はキリスト教の東方正教会を受容し、交易により栄えた。しかし12世紀ごろからは領地分割が進み、複数の公国に分かれていった。

13世紀にモンゴル帝国の軍に攻められ、キエフ大公国が滅亡し、キーウも破壊された。その後のキーウはリトアニア大公国、ポーランド王国へと帰属が変わっていく。そのころ、モンゴル系のキプチャク・ハン国からルーシ系のモスクワ大公国が自立し、勢力をつけていた。

ポーランド王国のもとでウクライナ・コサックたちがモスクワ大公国と同盟を組んで反乱を起こし、自治権を獲得する。しかし、ポーランドの戦争に勝利した後、キーウはモスクワ大公国の領土に移った。18世紀にモスクワ大公国の後継とされるロシア帝国の建国が宣言されてからも、キーウはロシアの領土とされ、次第にウクライナ・コサックの自治もロシアに認められなくなっていった。