トイレットペーパー騒動とは、トイレットペーパーなどの衛生紙類が、デマや誇張された風説、人間の心理などにより買い占められる現象を指す言葉である。
トイレットペーパーが店に並ぶところであれば、どの国でも起こり得る現象である(台湾/アメリカ)。日本でも1973年のオイルショックを始め、今までに何度かこの現象が起こっている。
トイレットペーパーは人々の間で有事の救援物資として認識されにくいことが指摘されており(参考)、また保存性が利いておりいくら買っても腐ることがないため買い占められやすい。さらに体積が大きく、店頭に並べられる数が少ないため売り切れやすい。このため、生産企業や卸売企業に在庫があるのにもかかわらず品薄なように見えてしまうため、この現象が起こりやすい。
また、特に第1次オイルショックのときに「買い占めといえばトイレットペーパー」というイメージがついてしまっており、やたらとトイレットペーパーが注目されやすいのが原因ではないかともされる。
松本社長(トドオナダ株式会社)は「これらの記事の中でトイレットペーパーは、(同様に買い占め騒動が起きた1973年の)オイルショックの事例と並べられるケースが目立った。『デマと言えばトイレットペーパー』と、メディアが結び付けてしまっている影響もあるのではないか」と推測する。
騒動は「○○が原因でトイレットペーパーが品薄になる」というデマがきっかけとされることがある。しかし、その場合でも全員がデマを信じて購入しているわけではない。むしろ「店頭でトイレットペーパーが売り切れている」という情報を受けて、「家にそれほど多くのトイレットペーパーがないので、買い占めによる不足や、それに伴う値上げが実際に起きてしまうと困る」という心理で多めに買う人も多い。
つまり、仮に誰もデマを信じていなくても、人々が「もし買い占めが本当に起こったら困る」と不安を感じて1人1パック多めに買っただけで、トイレットペーパー騒動は起こり得る。実際、2020年のトイレットペーパー騒動のときには、トイレットペーパーを多く買った人のうち、約90%の人がデマと知っていながら余分に買ったというデータもある(参考)。ちなみに騒動発生時に通常より多く何かを買いだめしたという人は、全体の約23%にとどまっている。
しかし、消費者が余分に買わなければ、騒動によるトイレットペーパーの不足は短期的なもので収まる(後述)。
トイレットペーパー騒動に対し、売る側は購入量の制限で対応することがある。これは不安になりすぎた人や転売目的の人が1人で10パックも買っていくような行動を防止するためであって、トイレットペーパー生産の不足を受けた措置ではない。
また、大企業の店舗の場合、大量にトイレットペーパーを入荷し「一人10パックまで」とすることで、逆に在庫の豊富さをアピールして不安感を和らげる方法がとられることがある(参考)。
買い占めに関わる日本の法律は「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(買い占め等防止法)」があり、買い占めが起きた場合の政府の行動指針や企業の売り惜しみの禁止を規定している。
消費者の買い占め行動自体を取り締まる法律は現在の日本には存在しない。
トイレットペーパーや洗剤など定期的に買う必要があるものは、特に何もなくても常日頃から「残り1ヶ月分ぐらいの量になったら買う」「詰め替えパックを余分に買う」などして、ある程度の量を保管しておくと困らずに済む。
もしトイレットペーパーの不足という情報が出回ってきても、家に数ロールしかない人が本当に困ってしまうので、トイレットペーパーを買わずにその人に譲ることが求められる。やむを得ず買う場合も1パックに抑え、必要最小限の数にしたりする必要がある。
トイレットペーパーを1パック分だけ買えば、人数が多くなければ1家族あたり2週間~1ヶ月程度の需要は満たされるので、買いに行く人数はだいたい1~2週間ぐらいで元通りになる。
個⼈差はありますが、⼀般的なトイレットペーパーの平均的な利⽤量は、過去のデータをみると、⼀週間程度で1ロールを利⽤しています。これをもとに計算すると、1か⽉では4ロール程度を利⽤しており、4⼈家族の場合には、1か⽉で16ロール程度を利⽤しているのが実態です。
また、トイレットペーパーは生産してからすぐ全部店頭に送るわけではなく、需要の増加に備えて生産企業や卸売企業の倉庫などに在庫分が置かれており、トイレットペーパーは1週間に3回程度、店によっては毎日店頭に供給される。
トイレットペーパーが売り切れているからといって、店員の人に入荷時期を尋ねたり、苦情を言ったりしてはいけない。トイレットペーパーが無いのは店の責任ではなく、入荷の情報も店員は把握していないし、同じようなことを何度も聞かれて疲弊していることも多い。
また、品不足についての情報の拡散も慎重に行う必要がある。それがたとえ「~で不足するというのはデマだ」という誤りを訂正する情報であっても、過剰に拡散してしまえば「他の人がデマを信じて買ってしまうかも」という不安を呼び起こしてしまう。ある程度すでにデマと指摘されている情報であれば、無視するのがよいと思われる。
1973年10月16日にオイルショックが発生し石油価格が上昇した。このとき、中曽根康弘通商大臣が10月19日に「紙節約の呼びかけ」を出した。
紙の原料であるパルプの価格上昇などもあって、紙の価格はオイルショック以前から上がっていた。そこに10月に発生したオイルショックも加わり、それによる出版物の原料としての紙価格の上昇や供給不足を懸念し、紙の需要量を減らすために呼びかけを出したと思われる(紙の製造には石油もエネルギー源として使われており、これは他の工業でも同様の話である)。
1970年代に入ると,原木不足と公害規制により再び用紙不足が顕在化し,72年半ばごろから需給逼迫と価格高騰に見舞われた。そればかりか,同年末には第4次中東戦争を契機とした石油不足問題(いわゆるオイルショック)も加わって,業界の存続にかかわる問題と化した。
この用紙不足問題に対処するため,書協・雑協は各種調査,説明会,相談斡旋所の設置,節約のよびかけ,関係当局への陳情などを行っている。73年6月の書協会員社対象の用紙事情調査によれば,用紙を希望どおり入手できないとする社が60%に達し,価格は約20%上昇したというものであった。そのため書協・雑協は連名で,73年7月30日付で中曽根康弘通産相と日本製紙連合会(製紙連)金子佐一郎会長に対して,安定価格による安定供給,出版用紙の確保について要望書を提出した。
紙不足への対応は上記のように出版業界からの要請もあったようで、特段トイレットペーパーに限った話ではなかった。実際、1972年時点での紙の用途別出荷率については新聞が32.8%、印刷が21.3%、出版が17.0%、紙袋が10.2%であり、紙製品は5.2%に過ぎない[1]
また、「希望どおり入手できない」「価格が20%上昇」という言葉に見られるように、不足はしていても、ある日突然トイレットペーパーを含む紙の供給が0になってしまうような状況ではなかった。実際、トイレットペーパーの統計を見ても、生産量は大きく変化しておらず、在庫量は減少気味だったがそれなりにあった[2]。
しかし、この情報が一因となって民衆の間で「紙が無くなる」という噂が流れ始め、紙製品であるトイレットペーパーの買い占めが始まってしまう。
トイレットペーパー騒動の発端は10月29日の奈良市西郊のスーパーとも、11月1日(または10月31日)の大阪千里ニュータウンのスーパーとも言われ定説がない(参考)。しかし、大阪千里ニュータウンでの騒動が新聞に載ったことで、さらにそのパニックが関西全域、さらには全国的に拡大してしまった。
2日には政府が買いだめの自粛を要請したが、かえってそれが「トイレットペーパーが本当に無くなるかも」としてかえって民衆の不安感を上げてしまう状態になっており、さらに塩や洗剤など他の製品にまで買い占めが飛び火してしまった。
同月12日にトイレットペーパーが買い占め防止法の対象となったあたりから徐々に騒動は落ち着きを見せ始め、翌1974年の1月末に政府がトイレットペーパーの標準価格を設定したことで、3月ごろにはトイレットペーパー騒動は完全に収束した。
2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、それに伴う物資不足や物流の滞りを予想した東日本の人々がトイレットペーパーなどの各種日用品を多く買った。そのため、トイレットペーパーが一部の店で売り切れの状態となった。
今回はだいたい2週間ほどで一人当たりのトイレットペーパーの購買金額は元に戻っている[3]。
2020年2月ごろから日本で新型コロナウイルスが広まった。その際、2月末にトイレットペーパーの買い占めが発生している。
発生当時、騒動が拡大した主因はTwitterでの2月27日のあるツイートが拡散されたためとされており、「新型コロナウイルスが蔓延する中国からの輸入が減少するため不足する」という噂が広まったとされていた。この噂は多くの人から事実と異なると指摘されている。そもそもトイレットペーパーは国内での生産が大半である(参考:p.5-6)上、原料のパルプ・木材も複数の国から輸入しており(参考:パルプ)、中国に輸入を頼っているわけでは全くない。
また、これとは別に「トイレットペーパーの原料である紙をマスクの製造に回すため不足する」という噂も流れた。しかし使い捨てマスクは不織布で、原料はポリエステルなどの化学繊維であり、紙ではない(参考)。
なお、上記ツイートを行った人物より前にも「中国での生産不足からトイレットペーパーが不足する」という投稿は存在している(参考)。また、上記ツイートへのリツイート・いいねは1桁程度のみであり、「そもそもこのデマが実際に正しい情報と信じられ拡散したのか」という点についても疑問が持たれる。
今回の騒動の原因はデマに加え、予想が困難な状況のなか極力外出を控えるために、今のうちに日用品を準備しておこうという心理が働いた可能性も挙げられる。
実際、上記のツイート以前からすでに「トイレットペーパーが品薄」という情報がTwitter上で見られた(参考)。中には「ひょっとしたらトイレットペーパーとかも品薄になるのでは」「何があるかわからないから今のうちに買っておく」「たくさんの人がトイレットペーパーを買っていた」という投稿も見られる。
特に、2月27日には全国の公立小中高校の臨時休校要請があったため、家で過ごす子供の分の日用品の需要が増加した。そのため、デマへの不安と需要のピークが一致し、一時的に品薄になったという要因もあると思われる。
また、メルカリなどのフリマアプリでの転売目的の買い占めも影響した可能性がある。実際、当時はメルカリに多くの高額なトイレットペーパーが出品されていた(参考)。これを受け3月3日以降のトイレットペーパーの出品については、著しく高い価格の商品については規制がかけられた(参考)。
ただし、最も直接的に消費者の買いだめ心理に影響したのはテレビメディアの報道とされる。「デマが広まった」というより、「デマが広まってトイレットペーパーが不足している」という情報がテレビや店頭の状況から、より広範囲に拡散されたと言った方が正確かもしれない。
私たち(関谷直也・東京大准教授ら)がサーベイリサーチセンターと行った調査では、そのうわさをSNSで知ったという人は10%にすぎません。半数近くはテレビでそのうわさの存在を知り、また品切れの状況をテレビや直接見て知っています。トイレットペーパーに限らず買いだめは他国でも起きており、一つのうわさが原因ではないのです。
橋元教授(東京大学大学院情報学環・学際情報学府)は「(こうした消費者行動を)煽っている1つの責任はマスメディアにある」と指摘する。繰り返しトイレットペーパーなどの一部での品不足をマスメディアが頻繁に報じると、読者・視聴者は「これが世間の人々の現在の非常に大きな関心事だ」と判断する。これは社会心理学で「議題設定効果」という説に当たる。
(略)
橋元教授は「結局、事態を鎮静化するのに最も効果的なことはマスメディアが報道を自粛すること」と説く。さらに「小売りの入荷の具体的なスケジュールを提示すること」「(消費者心理の対策では)実際に(トイレットペーパーなどが)不足して大きなダメージを受ける人の身の上を思いやることだ」と指摘する。
この記事の存在自体もトイレットペーパー騒動に加担したかもしれない…。
騒動発生時の2020年2月末には、トイレットペーパーについては日本で通常通りの量が生産されていた。実際、店頭でもすぐに供給されるという張り紙が多く張り出されており、トイレットペーパーが供給された地域もすぐ出始めた(参考)。
3月2日、3日に入ると全国的にトイレットペーパーが供給される店が増え、徐々に収束に向かい、3週間後にはTwitterでもトイレットペーパー不足の情報はほぼ見られなくなった。
掲示板
153 ななしのよっしん
2022/10/30(日) 02:29:23 ID: tuBYMMjh8u
店に設置されてる4つある個室のトイレットペーパー全部パクられて人間の心の闇を感じた
次にトイレに入る人の気持ちなんて何一つとして考えてない恐ろしい闇だ
私はその闇に直面して水に流せるポケットティッシュだから許してくださいと流した
まじで許さんぞ
154 ななしのよっしん
2022/11/12(土) 03:45:26 ID: jHB3cI/HLE
>>151-152
オイルショック世代が
「紙なんかそうそう無くならないとは知ってるが、買い占めが起きてからでは遅いので先手を打つしか無いんだ」
って言ってるインタビューを見て、あ、これゲーム理論でやったやつだ!ってなったわ
嘘から出た実と言うか何と言うか・・・
155 削除しました
削除しました ID: gzLsHi3q67
削除しました
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最終更新:2024/04/20(土) 07:00
最終更新:2024/04/20(土) 07:00
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