ワンダーホルン(音声合成)とは (ワンダーホルンとは) [単語記事]

ワンダーホルン（音声合成）とは、歌唱用の音声合成技術の一つである。
開発、及びライセンス提供元は“NTT アドバンステクノロジ社(NTT-AT)”。

概要

NTTが2000年 9月に発表した「ホルン法」を元に作られた歌声合成技術。発表は“2004年 2月6日”。
VOCALOIDと同年代で登場した音声合成技術として密かに知られていた存在である。

当時の音声合成技術が苦手としていた「歌声」や「抑揚のついた音声」の表現に趣を置いているのが特徴。
テキストの読み上げで利用されていた“波形重畳方式”や“コーパスベース音声合成”ではなく
急激な抑揚の変化で生じるピッチの変化に耐えられる“正弦波重畳方式”を採用。
声に含まれる特殊なノイズ成分をミックスすることで歌声特有の倍音成分の再現に成功したという。
その他にも、ビブラートやこぶし、しゃっくりといった「歌唱スタイル」調整機能も組み込まれている。

しかし発表当初は企業向けの価格設定がされており、とても個人が手を出せる金額ではなかった。^[1]
そのため、DTMerなどから語られているワンダーホルンは以下の「Studio」が一般的である。

それでも一個人がワンダーホルンに触れられる機会が全くなかったわけではなく、
かつて存在した“うたばら.com”や“歌え！ルーツ飲んでゴー！”のサイトで体感することが出来た。
後者はキャンペーンの甲斐もあって結構注目を浴びていた様子。認知に繋がったかはともかく。
また、2008年 12月に発売された“ミュージックプロ V5”にも「歌じまん2」として搭載されている。

なお、VOCALOIDと違って公式的なイメージキャラクターは存在しない。

2017年 1月15日にて販売終了。公式サイトも消失(リンク切れ)済み。
関連するコンテンツも軒並み配信停止しており、さながら絶滅危惧種の音声合成技術となりつつある。

ワンダーホルンStudio(ステューディオ)

2006年 3月29日より発売された、歌声合成用MIDI編集ツールとしてのワンダーホルン。
価格は音声 DBとのセットで52.500円(本体価格は31.500円)。音声 DBは男女各３種＋子供１種＋α。

特徴として読み込んだMIDI データから点状の周波数グラフを自動生成し、
生成された周波数グラフを編集することで「歌唱スタイル」を調整することが出来る。
この周波数グラフは複数のテンプレートが存在し、指定した任意の範囲で登録することも可能。
合唱機能によりコーラスが比較的簡単に設定できる点も長所とされていた。

しかし単体ではノート入力ができない(別ソフトでMIDI データを作成する必要がある)点や、
ドラッグ操作による音程調整が出来ない点、複数の編集モードの切り替えが面倒な点など、
当時のライバルであるVOCALOID2と比べるとエディタの使い勝手で劣るという声もあった。

肝心の音声 DB(ボーカル)は独唱用で7種、合唱用を含めると計14種とラインナップは豊富なのだが、
いずれの音声 DBもやたら力んで一本調子に歌ってしまいやすいクセがある。
そのせいか、力強い歌唱表現は得意なものの、ウィスパーのような繊細な歌唱表現は難が残る。

余談だが、オーダーメイドで音声 DBを作成してくれるサービスも行われていた。
…作成には実質百万円近い費用が掛かるが^[2]。ぶっちゃけネタにしかされてない。

試用版も配布されていたが、機能制限として再生中に独特のスクラッチ音(通称：ヒヨコ)が逐一混じる。

2017年 1月15日の販売終了に伴い、現在は(試用版も含めて)入手不可能。
ちなみに前述したミュージックプロ V5も既に公式サイトが消失しており、
Studio共々Windows8以降の動作保証がないという危うい状況に立たされている。

ニコニコ動画でのワンダーホルン

まったく認知されていない。筋金入りの合成音声マニアでもない限り聞きつけてこない。
タグ全体の風速も弱く、最も再生数が多い動画でも10万どころか1万再生も程遠いくらいである。

作品の投稿者も極めて限られており、試用版を含めても十名も居ないほどで
製品版に至ってはその半数以下。ユーザー同士のコミュニティなどある筈もない。
~~というかユーザーが少なすぎて音声合成エンジンとしての性能がマトモに計れてない節すらある。~~
他の動画サイトも概ね同じような状況であり、お世辞にも流行していたとは言い難い。

それでも音声合成技術として一部の層から一目を置かれていたのは間違いなく、
中島みゆきらしく歌い上げるF1 DB(試用可能音声)の姿は一定の評価を得ている。

もっとも、複数の音声 DBが含まれていても初音ミクの四倍近い価格は「高い」と常々言われており、
発売以降エディタや音声合成エンジンの改良はおろか新規音声 DBの追加すら行われておらず、
マーケティング的にも話題性や購買意欲を事欠かせる要素は多く見受けられる。
結局VOCALOIDの対抗馬になれず沈んだのは、単なる宣伝不足だけではないのかもしれない。