プロテウス級給炭艦とは、アメリカ海軍が運用していた軍艦の艦級である。
概要
1910年代にアメリカ海軍が自軍向けに4隻建造した艦船用燃料用の石炭等を輸送する補給艦。艦名はジュピターを除きギリシャ神話の神名からとられている。
4隻中3隻が大西洋で航行中に失踪=行方不明となり、1隻は空母⇒水上機母艦へ改造され太平洋で戦没、という複雑な経緯を辿った艦級である。
諸元・特徴
本級は広義でいえば鉱石運搬船の一種であるため石炭だけでなく鉄鉱石なども輸送することができた。そのため任務の合間を縫って民間企業にチャーターされ民間向けの石炭、鉱石を輸送することもあった。
全長 | 165m(プロテウスのみ159m) |
全幅 | 19.8m |
排水量 | 19,000t |
最高速度 | 15kt/h |
プロテウス
1913年7月に就役後、大西洋、太平洋で補給任務に従事し、1924年に退役後、1940年までモスボールされ、翌年3月にカナダの企業に売却された後、11月に大西洋を単独航行中消息を絶った。
ネレウス
1913年9月に就役後1922年まで大西洋で活動。1940年までモスボールされ翌年2月にカナダの企業[1]に売却、12月に大西洋を単独航行中消息を絶った。
サイクロプス
1911年に就役後、大西洋を中心に活動。1918年3月に大西洋を単独航行中消息を絶った。
どうしてこうなった
消息を絶った。=船体どころか乗組員・漂流物の類も発見されなかったということであり原因は不明である。ただ幾つかの仮説はある。
ドイツ関与説
3隻が消息を絶った1918年と1941年はそれぞれ第一次世界大戦、第二次世界大戦の最中であり、3隻の失踪に敵対していたドイツが関与していたのではないか、という疑惑が出るのは当然であった。
とりわけ、サイクロプスはかなりその疑いが濃かった。というのはサイクロプスの艦長がドイツ系でかつ時のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世を尊敬していたことが広く知られており、更に以下の事柄が疑いを濃くした。
- サイクロプスは補給物資を輸送後、帰りに艦船用装甲板製造に不可欠なマンガン鉱石1万500tを積載していた。
- サイクロプスに便乗した本国への帰還者の中にドイツとのつながりを疑われた在ブラジルの大使館員がいた。
- 失踪する直前にカリブ海・英領バルバドス島へ入港し燃料・食料を補給⇒帰還前に十分積んでいる筈なのに。
- バルバドス島は予定の航路から大きく外れていて補給の際にはイギリスおよび現地米領事館員の立ち入り拒否。
このことから艦長が船を乗っ取ってマンガン鉱石を手土産にドイツへ向かったのではないかと思われたが、ドイツ側にその記録はない[2]。ではドイツ海軍(Uボート、仮装巡洋艦[3]etc)に撃沈されたのでは、との疑いも出たがプロテウス、ネレウスも含めて該当する記録はドイツ側及び同盟国に残っていない。
船体トラブル説
この場合、プロテウスとネレウスは失踪当時艦齢30年に近いため老朽化という理由が成り立つ一方、サイクロプスは艦齢7年程だが失踪前に主機関の一つが重度な故障をしたことが記録されており片肺運転⇒故障⇒?⇒沈没と繋げれなくもない。
ジュピター
本級の内で1番長寿だったのがジュピターだが彼女の艦歴は他の姉妹とはまた違った生涯となった。なお、艦名はローマ神話のユピテル=ジュピターからとられている
給炭艦時代
1913年に就役後、程なく勃発した第一次世界大戦においては給炭任務だけでなく欧州への物資輸送にも従事した。
そして1920年3月に退役し、2年をかけて後述する改装を実施した。
航空母艦『ラングレー』
1922年3月、ジュピターは天文学者で3代目スミソニアン博物館館長の名を冠したCV-1=アメリカ海軍初の航空母艦『ラングレー』として生まれ変わり、7か月後に初めて飛行機を発艦、着艦させた。そして以後12年間空母艦先の運用研究、パイロットの育成に従事した。
艦名の理由
艦名の由来となったサミュエル・P・ラングレーは1903年にアメリカ軍から得た5万ドルの予算を元に有人飛行機『エアロドローム』を制作しているが失敗に終わっている。
そしてその年にライト兄弟が有人飛行機による人類初飛行を成功させている。では何故、艦名を『ライト』にしなかったのかという疑問が浮かぶのだが、当時健在だった弟オーヴィル・ライトとスミソニアン側の対立があったためである。
最期
1937年、『ラングレー』はオーバーホール兼飛行甲板を削減して水上機母艦へ改装された。
元々航空母艦と言ってもプロトタイプのため艦上構造物を取り外して代わりに飛行甲板を張る程度=船体は改造せず機関は石炭炊きのままだったので速力は15kt/h止まりだった。これでは主力戦闘部隊への随伴は難しく、後発艦には大きく水をあけられていた。
そして太平洋戦争中の1942年2月27日、オランダ領であったジャワ島へ戦闘機を輸送中、日本海軍陸上攻撃機の空爆を受けて航行不能となり友軍駆逐艦の攻撃により自沈処分となった。
関連作品
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関連項目
脚注
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