予祝とは、以下の意味を持つ。
1の概要
古来から、日本にはあらかじめ期待する結果を模擬的に演じると、実際にその結果が得られるという考えがあった。そのことから、豊作や大漁・子だくさんなどを予め祝うことによって、豊作などを祈願するという行事・神事が日本には存在し、それらのことを予祝と呼んでいる。いわば験担ぎのようなものである。
例えば、福岡県豊前市の国玉神社で行われているお田植祭りは、まだ田植え前の3月に行われる祭りであるが、その内容は種まきや田を耕すなどの一連の農業の作業を演じるものである。これは、未来の農作業を演じることによって豊作を祈願するという予祝行事なのである。
その他、粟や稗の衰退によって現在では行われなくなったが、かつては東日本では粟や稗が豊作になって垂れている様子を木の枝で再現したり、小正月に神棚や屋外、神社に飾ってあらかじめ粟や稗の豊作を祝う「粟穂稗穂」があった。東北地方でも、庭先で田植えや収穫を演じ豊作を祈る「庭田植え」という行事があり、現在も行われている。
・・・このように、予祝は神社などでも行われるれっきとした神事・祭り・伝統行事であって、スピリチュアルや新興宗教のものではないのだが、一部のスピリチュアルなどの信奉者などによって語られることもある。なので、そのような分野のこととして語られたり、引き寄せの法則などと結びつけられて「〇〇を〇〇すると願いが叶う」などと予祝に似たおまじないのようなことを行うよう言う場合もある。(よくあるのは、紙に願い事をもう叶った体で書くなど)
2の概要
この言葉を良くも悪くも有名にしたのが、2019年より阪神タイガース監督に就任した矢野燿大であろう。
2021年まで
矢野は二軍監督時代から予祝に傾倒していたが、試合前に選手の活躍予想を書いたりシーズン前から優勝を前祝いする、シーズン中に優勝旅行について語るなど、本来の意味からややかけ離れた思想を持っていた。これらの思想は個人的な親交がある予祝メンタルトレーナーに影響を受けたとされる。とはいえこの時点では在阪マスコミの空騒ぎに通じるところもあり、矢野の指導を受けた選手が好成績を残したことや監督としても3年連続Aクラスを達成、「矢野ガッツ」とも呼ばれる積極的に選手を鼓舞する姿勢が好意的に受け止められ、「マスコミ受けも上手いポジティブ思考のおっちゃん」との見方が一般的だった。
2022年
前年の歴史的V逸でたがが外れてしまったのか、矢野は春キャンプ前日に退任を表明。一軍監督就任から3年経ち選手にも浸透したのか、サプライズでキャンプ中に胴上げが企画・実行される(後述)。矢野もこれに応えたのか外部から講師を招いて数時間の予祝セミナーを連日開催、勝利を願って試合前の「予祝ハイタッチ」も取り入れられるなど、明らかにおかしな方向へ向かい始める。これらの予祝も虚しく阪神は開幕から記録的なペースで黒星を積み重ね、徐々に批判の声が集まり始めていた。
4月15日、NPBワースト新記録の勝率6.3%・6連敗に沈む阪神は読売ジャイアンツを本拠地・阪神甲子園球場で破り、漸く長いトンネルから抜けた。鮮やかな逆転勝利に全国の虎党が湧いた…のだが、試合後のインタビューで矢野が取った行動に注目が集まる。
「ちょっと時間大丈夫ですか?あの~今日僕の友達の文字職人の○○(当記事では伏せている)さんに今日来ていただいて、365枚ある札の中から、漢字を一文字引き当てるんですけど、僕がチームにイメージしながら引いたのが、「波」という字でした(後略)」
と徐に「文字職人」の書いた色紙を取り出し、感謝を述べると共に作品に込められた内容や予祝の大切さについて説明し始めたのである(この文字職人や前述のメンタルトレーナーは事実上の新興宗教団体に所属している)。選手への労いやファンへの感謝よりも先に予祝関連の話を持ち出したことで一気に胡散臭さが増した他、試合前の円陣で選手にも色紙を披露していたこと・翌日には自作の色紙をこれまた選手に披露していたことが判明。チーム全体がスピリチュアル方面へ向かいつつあることはプロ野球ファンを震撼させた。
予祝コピペ
キャンプ中の胴上げについて。コピペとして使われることが多いが実話である[1]。
西勇「僕は予祝を持ってきました。ルーキー、桐敷、意味分かるか?」
桐敷「…」
西勇「未来の姿を先に喜び、祝ってしまうことで現実を引き寄せることを予祝と言います。みんな予祝で、ただ一つできてないことがある。分かる?テル、馬場」
西勇「糸井さん、分かりますか?」
糸井「一つしかないやないか!優勝に向けて練習してるわけでしょ。でもこれは練習してないと思うねん(Tシャツに書かれた『胴上げ』の文字を見せ)今から監督を胴上げしようかなと思います。いいですか?これは予祝です!」
とりわけ「ルーキー、桐敷、意味わかるか?」がコピペとして使われることが多く、桐敷拓馬が毎回困惑させられている。なお企画者の西は31歳・糸井は40歳のベテラン。糸井はこの年限りで引退した。
その後
阪神は4月下旬にやっと安定して勝てるようになると、交流戦で勢いに乗り最下位を脱出。8月初旬までは勝ち続け一時は2位に浮上したが、その後は失速し3位に終わる。クライマックスシリーズでもファイナルステージで敗退。矢野はやや不本意な形で宣言通りチームを去ることになった。なお、騒動以降色紙が公の場に姿を現すことはなかった。
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関連項目
脚注
- *阪神・矢野監督 感謝の“予祝”超異例「うれしいサプライズ」発案の西&糸井は絶妙“漫才” 2022.02.24(Thu) https://www.daily.co.jp/tigers/2022/02/24/0015087193.shtml
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