八九式重擲弾筒とは、大日本帝国陸軍が開発・運用した火器である。
概要
歩兵小隊の支援火器として開発され日中戦争から第二次世界大戦終戦まで運用された。『擲弾筒』はグレネードランチャーを指し手榴弾も使用できるが実態は『迫撃砲』である。
なお、『八九式』は皇紀二五八九年(1929年・昭和4年)の事だが実際に装備品として制式化されたのは皇紀二五九二年(1932年・昭和7年)である。
開発に至るまで
この火器が開発されたのは大正10年(1921年)に制式化された『十年式手榴弾』の存在が大きい。
この手榴弾は通常通りの腕による投擲だけでなく、当初は三八式歩兵銃に装着して発射する(ライフルグレネード)運用も想定されたが構造上無理があると判断され、専用の発射機『十年式擲弾筒』が開発された。
しかし、使用する『十年式手榴弾』の射程と命中精度に問題があるとされより実用性を求めて開発されたのがこの火器である。
構造・運用
外観は筒（砲身）それより少し細い棒(支柱)そして後述の仇名に繋がる分割された竹筒状の板(台座)からなり『十年式擲弾筒』と同様の外観をしている。但し全長と重量では上回る一方、十年式の様に分解機構はなくかつ砲身にはライフルが刻まれている。
前述の通り十年式は手榴弾を発射するために開発され、八九式も同様に手榴弾を撃てるがそれよりは専用に開発された『八九式榴弾』が多用された。この榴弾は最大射程800mに達するが有効射程は120m程度、炸裂時の危害半径は10mと云われるが炸裂音が野砲弾級と言われ敵兵を混乱させるのに役立っていたと伝えられる。また、煙幕弾や威力を抑えた演習弾も用意されていた。
射撃に当たっては台座を地面に付けて擲弾筒を概ね45度に傾け、支柱に備えられた撃発装置の位置を調節して射撃距離を調整して榴弾を砲口から装填して引き金を引く、という一連の動きを多くて2名、場合によっては1名の兵士が己の手足と経験による勘で行う。
欠点としては迫撃砲でよく使われる『砲口から装填＝発射(墜発)』方式で無い事から装填した事を忘れて次の弾を装填する事故を起こしやすい事と、八九式榴弾の信管に動作不良が多く、『発射したら途中の枝葉に触れて爆発し敵に損害を与えられない』、『斜面に着弾したら不発だった』といったケースが伝えられている。
しかし、通常の迫撃砲が基本的に数個の部品を組み立てなければ攻撃態勢を整えなければいけないのに対し八九式の場合は極端な話『弾を入れればすぐ撃てる』、『手榴弾の3倍の威力』、『慣れれば水平射撃で正面から敵を粉砕できる』を備えた簡素かつ高威力な兵器だった。
海外において
敵対した中華民国国軍(共産党勢力を含む)では鹵獲した八九式や欧米から提供された迫撃砲を基に『二七式擲弾筒』(中華民国暦27年＝1938年制式化)を開発すると共に鹵獲した八九式を運用していた事が伝えられている。
一方で連合軍、特にアメリカ軍では『ニー・モーター(膝撃ち迫撃砲)』の二つ名で知られる様になった。
何故かというと台座の形状が太腿にフィットする為に『膝を立てた状態で太腿に当てた状態で発射する』と誤解されてその通りにしたアメリカ軍兵士が重傷を負った信じ難い話が伝わっている。
実際、『八九式重擲弾筒』もしくは『ニー・モーター』で画像検索を行うと太腿に当てた状態で射撃姿勢をとっているアメリカ軍兵士の写真が複数ヒットする。
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関連項目
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