蚕(カイコ)とは、カイコガの幼虫である。哺乳類以外で人間に家畜化された珍しい動物である。ただ成虫も含めてカイコともいう。
概要
カイコガ(Bombyx mori)というガの仲間の幼虫で、蛹になるときの繭から生糸が取れる。
幼虫は桑の葉を餌とする。卵から孵化した当初は6mmほどだが6週間程度で7.5cmほどになり、蛹となる。孵化した当初は黒い姿だが、脱皮後には白くなる。
見た目は柔らかな触角と体毛が生えて愛らしいが、成虫は飛翔能力がほぼ無く、なにも食べずに長くても10日で死んでしまう儚い存在でもある。
東アジアのクワコ(Bombyx mandarina)が祖先とされ、古くから中国で飼育されてきた。甲骨文にもカイコの記述がある。日本だけでも約600種類と多様な品種があり、遺伝子組み換え技術で開発された品種もある。
完全に家畜化しており、野生の種は無い。幼虫、成虫ともに自力で生きる力がなく、野生に回帰する能力を完全に失っていると言われる。普通の芋虫は吸盤のような足で葉の上を自由に這い回るが、カイコガは自力で葉っぱにへばりつくことができない。そのため、室外の桑の葉に乗せても一晩で地面に落ちて全滅してしまう。自力の移動もほとんどせず、頭の回りに食べられる葉がなければそのまま餓死する。そのため野生化する心配が無いが、人類滅亡すると道連れなることがほぼ確定しており、人類が蚕の世話をやめてしまえば絶滅してしまう。
実は食用にも用いる。繭を茹でた後の蛹は養蚕業者のおやつ担っていたらしい。また、実験動物としても知られ、遺伝学・生物学へ貢献してきた。よく蛍光色に光ったり蜘蛛の糸を吐くように改造されている。ネズミやハエのような脱走の心配が全く無いので管理しやすく、安心して好きなだけ改造できてしまうのである。
漢字として
蚕(テン)はカイコの意味の蠶(サン)とは本来別の字であったが、のちに俗に蠶の意味で使われるようになった。それぞれについて説明する。
蚕・蠶
- 意味
- カイコ、カイコを飼育する、侵す、という意味がある。
- 〔説文解字〕の本字は蠶で〔説文・巻十三(段注本)〕に「絲(いと)任(は)く蟲なり」とある。〔広韻〕に「絲吐く蟲なり。俗に蚕に作る」とある。唐代以後、俗に蚕の字を蠶の意味で使うようになった。
- 字形
- 形声で声符は朁。甲骨文には象形の字も
- 音訓
- 音読みはサン(漢音、呉音)、訓読みは、かいこ。
- 規格・区分
- 常用漢字であり、小学校6年で習う教育漢字である。JIS X 0213第一水準。1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。
- 語彙
- 蚕衣・蚕月・蚕室・蚕食・蚕績
異体字
- Unicode
- U+8836
- JIS X 0213
- 1-74-36
- 部首
- 虫部
- 画数
- 24画
- 蠶は、〔説文〕の本字。JIS X 0213第二水準。
- 𧉏は、〔竜龕手鑑〕にある蠶の俗字。
- 蝅は、〔干禄字書〕にある蠶の俗字。JIS X 0212補助漢字。
- 𧌩は、〔字彙補〕に「蠶字の省文」とある異体字。
- 䗝は、〔玉篇〕にある蠶の俗字。
- 䗞は、〔直音〕にある蠶の異体字。
- 𧑯は、〔直音〕にある蠶の異体字。
- 䘉は、〔康煕字典〕にある蠶の異体字。
- 蠺は、〔字彙補〕にある蠶の俗字。Unicodeにも蠶の異体とある。JIS X 0212補助漢字。
- 𧕽は、〔正字通〕にある蠶の俗字。
- 簡体字も蚕。
蚕(テン)
異体字
- 𧉂は、〔字彙〕に蚕と同じとある異体字。異構の字。
関連動画
関連静画
関連生放送
関連項目
- 1
- 0pt