解雇かいこ)とは、使用者が、雇用契約を解約することである。使用者側の都合により、一方的に雇用関係を解消することを指し、労働者の合意は必要としない。
解雇が大規模に行われる様子を、「リストラ」と言われている(厳密には誤った言葉の使い方である。「リストラ」の本来の意味は「再構築」である。)
ニコニコ動画では本来の意味、またはそこから転じて、下記の例も含めて様々な形の単語でタグに使用されている。
芸能人などに対する「解雇」の概念と誤用
その契約形態や、言葉の意味から、主に使用者と会社員(給与所得者)やパートタイマーとの間において労働契約が一方的に解消が使用される際に使用される言葉である。
しかしマスコミ報道などでは、芸能プロダクションに専属する芸能人などに対して、不祥事などで事務所とのマネジメント契約を解除するに至った際に、マスコミを含めて「解雇」という言葉が誤って使用されるケースがまかり通っている現状にある。
芸能人に支払われる報酬は、駆け出しの頃などを除けば通常完全歩合給(フルコミッション)を基本としている。また仕事をする時間も一定ではない。このような環境で、芸能プロダクションが所属芸能人を雇用する形態を取ると、労働基準法をはじめ様々な法律に抵触する恐れが極めて高くなってしまう。
仮にタレントを雇用した場合、全く仕事が無いタレントに対しても最低賃金または基本給の6割以上の固定給を支払うなどの制約が生じるため、売れっ子タレントの報酬に回せる報酬がその分少なくなってしまったり、休暇や労働時間の管理なども必要となってくる。芸能人の立場から見ても、給料制だといくら売れても手元に入るギャラが頭打ちになってしまうというデメリットが生ずる。
このため、芸能プロダクションに所属する芸能人を一種の自営業者(自由業者)とみなし、「専属マネジメント契約」という一種の委任契約を結ぶケースが大半となっている(ただし一部のプロダクションにおいては例外が存在する)。
しかしながら、芸能プロダクションは所属芸能人に対して強い拘束性や排他性を有する契約内容となっており、所属タレントは事務所が用意してきた仕事を遂行する義務を負わされているなど、ある面においては「労働契約」としての側面も有する契約内容であることは確かである。
このような関係から、芸能人とプロダクションの間に労使関係が存在すると誤認している者が多いことも、不祥事などが原因で芸能事務所との契約を解消された際に「解雇」という言葉がまかり通る理由の一つになっていると言えよう(双方で締結されている契約の内容に則って言うならば、「契約解除」と言うのが正しい)。
なおプロスポーツ選手も同様、事業性の有無(選手ひとりひとりが個人事業主と扱われること)、所属する団体に対する従属性の二重構造(プロ野球の場合、球団と日本野球機構それぞれに対して従属性があり、なおかつ選手自身にも個人事業主としての側面がある)があることなどから、チームが所属選手を解雇するといった表現も厳密には誤りであると言える(選手なら「退団」、監督・コーチなら「解任」といった言葉の方が適当と言える)。
その他の誤りやすい用法
- ×公務員が不祥事を起こして解雇 → ◯「免職」である。
- ×取締役が経営責任を問われて解雇 → ◯「解任」である
(会社役員は株主からの委任を受けて会社を経営している立場にあり、雇われているのでは無いため) - ×コンビニ店員の不始末の責任をとって、同時に店長も解雇 → ◯「フランチャイズ契約の解除」
(コンビニの店長の大半は個人事業主であって、雇われ店長ではない。ただし直営店を除く) - その他、芸能人などと同様に一社専属で業務の委託を受けている者が取引先からの契約を打ち切られる場合も解雇ではなく「契約解除」というのが正しい。
(例)生命保険外交員、電気・ガス・NHKなどの集金人、販売人(ヤクルトレディなど)、各種士業・サービス業、特定の元請工事業者一社に専属して働いている工事現場などの労務者(いわゆる「一人親方」)、各種技術職・プログラマーetc…
これらの者は、皆従業員を持たず、自分の体ひとつで働いていることや、その会社を名乗って仕事をしていることが多いため、その会社等の従業員と思われがちだが、実際はそうではなく皆が「一人事業主」なのである。
即ちその企業とは業務請負(委任・委託)契約を結んでおり、雇用契約は結んでいないということである。 - プロスポーツ選手も上記の例と同様であるが、唯一相撲界だけは例外で、「力士は日本相撲協会に勤務するサラリーマン」という立場にある。
よって、力士が不祥事などを起こして引退した場合に限り「解雇」と表現するのは、正しい用法となる。 - その他特殊な例として、住宅販売業者に勤務している者については、内勤に関する事務は「従業員(雇用関係有り)」、セールスに関する事務は「事業主(雇用関係なし)」という特殊な契約を結んでいる業界もある。
編集者としては、一般市民に限らずマスコミがこれらの誤用を連発して、誤解を広めている点も問題視されるべきではないか、言葉の意味をちゃんと認識しておかなければいけないんじゃないか、と思うところである。
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