計算尺とは、乗除計算や三角関数などの計算に特化したアナログの計算器である。
概要
計算尺は対数の原理が用いられており、加減算はできないが複雑な乗除計算を有効数字3~4桁の概算で行うことができる。かつて技術者などの間で手頃な計算器として愛用されていたが、時代の流れと共に電卓などの代替品が台頭し普及したため、現在ではほぼその役目を終えた。
学生にも手軽に扱える一般用から事務用、電気通信用、土木工学用など様々な分野の計算に対応した計算尺がヘンミ計算尺を初めとする多数のメーカーから発売されていたが、現在も販売中のものはごくわずかである。
構造
竹尺に透明なプラスチック又はガラス製のカバー(カーソル)が付いたような外観のものが一般的である。尺の真ん中はスライドできるよう切れ目が入れられており、上下の固定された尺(固定尺)と真ん中の動く尺(滑尺)に刻まれた目盛りを合わせ、さらにカーソルを動かし赤いカーソル線を合わせて答えを読み取る。
計算尺には目盛りが刻まれているが、普通の物差しのように等間隔ではなく常用対数の1~10までに対応する間隔で刻まれている。よって目盛りが0ではなく1から始まり、また1から10に行くにつれてだんだんと間隔は狭まっていく。これらの目盛りを上記の動作ですり合わせることで乗除算を常用対数の計算(A×B→logA+logB)で代用できるのである。
余談だが、計算尺本体のポピュラーな素材は竹(主として孟宗竹など)である。これは、尺の長さが狂えば計算結果に大きく影響するという計算尺のその性質上本体は極力熱膨張に強い素材でなければならず、温度変化による体積の変化が少ない素材として竹が適していたためである。
各尺の役割
計算尺は用途によって様々な目盛りが刻まれているが、その中でも特に使う頻度の高いものを列挙する。
C尺、D尺
滑尺の下(C)と下の固定尺の上部(D)に左から1~10までの常用対数に対応する間隔で目盛りが振られている。基本的な乗除算を初めとして最も頻繁に用いる尺である。
CI尺
C尺を左右逆にした尺。乗算と除算でC尺と使い分けることでより簡便に計算することができ、目外れなども起きにくくなる。
CF尺、DF尺
C尺及びD尺を√10だけずらした尺。CI尺同様計算の簡便化に用いられる。
A尺、K尺
A尺はD尺の目盛りの値を二乗した値が振られており、ちょうどD尺を半分に縮めて二つ並べた風になっている。同様にK尺はD尺の目盛りの値を三乗した値が振られている。これらの尺をD尺と対応させることで簡単に二乗、三乗の値や平方根、立方根を取ることができる。
計算の一例(例:2×3=6)
例えば物差し2本を用意して1+2などの簡単な計算をしようと思ったらどうするだろうか?答えは簡単、二つの値分だけそれぞれ尺をずらして対応する目盛りを読めばいい。計算尺の場合は2本の物差しに振られた間隔がcmでなく常用対数に従って振られているだけで本質的には同様の事を行っているのである。
①滑尺をずらしてC尺の始点(1の目盛り)をD尺の2に合わせる。
②次にC尺の3の目盛りまでカーソルを移動しカーソル線を合わせる。このカーソル線を合わせた位置に対応するD尺の目盛りを読むと2×3の解である6が求められる。
どうしてか?
①の動作で滑尺がlog2だけ右に移動する。その移動した位置にC尺の始点を合わせ、そこからさらに②の動作でlog3だけ右にカーソルを移動させる。この一連の動作を終えた後のカーソル線とD尺を見比べてみるとD尺の始点とカーソル線を結ぶ距離はlog2+log3となる。よって、カーソル線が示すD尺上の目盛りはlog2+log3=log(2×3)=log6となる。
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関連項目
- ヘンミ計算尺株式会社
(現在は計算尺の製造、販売は行っていない)
- 計算尺推進委員会
(使い方や原理、作り方の解説サイト)
- 計算尺愛好会
(各メーカーの計算尺の資料館)
- デジタル計算尺
(Windows上で計算尺をシミュレートできるソフト)
- 対数
- 電卓
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