錯覚(英:illusion)とは、五感による情報とそれを通した認識が、実際の物体や状態と齟齬を起こす現象である。幻覚も同様に、現実とは異なるものを認識するが、一般には区別される。誤りを特に指摘する場合は、勘違い、ともいう。
日常的錯覚
見間違い、聞き間違いなど、人間は日常的に錯覚を起こす。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と昔から歌われるように、何気ないものでも、ある種の状況に置かれると、認識に齟齬をきたすことはままある。また、空の雲を人間や龍、その他の形に見えてしまうのもよく知られた錯覚である(パレイドリア)。顔文字(例えば、(^o^))も、人間の認知能力を利用した、錯覚といえる。
人間の記憶も曖昧なもので、「玄関のカギをかけ忘れたかも?」といった錯覚も起こす。
五感の錯覚
- 目(視覚)の錯覚 - 最近は、VR技術などで応用されている。「錯視」の記事も参照。
- 耳(聴覚)の錯覚 - 「錯聴(auditory illusion)」。周波数の高い音が低く聞こえたり、右にある音が左に聞こえたり、同じ音に対する聞こえ方が変化したり、存在していない音が聞こえたりする。空耳も錯聴の一種ともいえる。バロック音楽では、一度に複数の音を出せない楽器で、異なった音をすばやく交互に鳴らすことで、あたかも複数の旋律が同時に奏でられているように錯覚させる手法(音の流れの分凝)が使われている[1] 。現代のオーディオビジュアルも錯聴を取り入れており、ステレオやチャンネルといったものは、臨場感を生み出す為に、広く普及している。
- 鼻(嗅覚)の錯覚 - 科学技術の向上により、人為的に匂いを作れるようになった。それを利用して、近年は、映画館で「匂いのVR」として、より臨場感溢れる体験を謳うものもある。
- 舌(味覚)の錯覚 - 味覚は、他の感覚器官によって影響される。例えば、鼻詰まりを起こしていると、何も味を感じなくなることはよく知られている。視覚も味覚にとって重要であり、「目で楽しむ」という言葉は、食べ物の見た目が味に影響を与えることを端的に表す。そのことを逆手に取って、「ブルーラーメン」などあえて通常の色と異なる染色を行ない、そのギャップを楽しむこともなされている。よくネタとして、「うんこ味のカレーとカレー味のうんち」という究極の二択が出されるが、味と見た目は切っても切り離せないものの1つである。無重力状態の宇宙では、味覚が鈍く感じるとされ、宇宙飛行士の向井千秋氏は、「地上で試食した時よりも、料理の味が薄く感じました。濃い味のもの、塩分の多いもの、甘いドリンクなどがおいしかった」と語っている[2] 。
- 手(触覚)の錯覚 - 触覚もまた、視覚など他の感覚器官によって、影響される。代表的なものは、ラバーバンドイリュージョン。これは、例えば、手を机の上に置き、それを何か手を隠せるもので覆う。そしてそのそばの見える位置に、本物の手と似た偽物の手を置く。そしてその偽物の手に触れると、本物の手に触れられたように感じるというものである。
販促への利用
- これは良いものですよ
- これを使わなければ××のままですよ
- 使わなければ流行に乗り遅れますよ
- みんな使っているのに、あなただけそうでないのは恥ずかしいですよ
- このチャンスは今しかありませんよ
- 有名人・アイドル・専門家が愛用・絶賛していますよ
…と直接・遠回しに伝えているCM、宣伝広告等は無数に存在する。
洗剤のCMを例に取ると「実は綺麗に見えてこんなに汚れている!」→「しかしこれを使えば安心!」といった飴と鞭の利用。購入しなければその状態で使い続ける事になる…といった生理的な嫌悪感に打ち勝たねばならないため、非常に上手い戦略といえる。
錯覚の悪用
「皆が××なのに」「あなただけ××なのは変だ」「誰も文句を言ってないのにお前だけ」と圧力をかけることで義務のない事を強制したり、権利を妨害する際にも利用される。無知な相手に対してこれが普通、恥ずかしい事だと錯覚させる事で金銭・時間・労働力を奪う人間がいる。
もちろん「誰も文句を言わない」のはその人間や集団も無知・錯覚しているからに他ならない。
詐欺としては点検商法など。あらかじめシロアリ入りの瓶や、水道水と反応して色の変わる水や試験紙等を用意しておき、無料診断・無料点検と称して異常という事実を誤認させる手口もある。
相手が誰であろうと「よく分からないけど調べるのが面倒」「自分が悪いんだな」なんて鵜呑みにすると良いカモでしかないため、必ず疑う・断るといった手段が必要となる。
常識や思い込み自体が間違っていたり、単純に法律に違反している場合もある。
関連動画
関連チャンネル
関連項目
外部リンク
錯聴が聞けるサイト
脚注
- 2
- 0pt