クルセイダーとは、
- 十字軍。異端・異教徒討伐を旗印に教皇の呼びかけで動員された軍団のこと。
- 1950年代~70年代にかけて運用された米国の艦上戦闘機。→F-8
- WW2時の英国巡航戦車。
- バトルテックに登場する65tメック。LRM15とSRM6を各2門装備と言うミサイル偏重の装備が特徴。
本項では3を解説する。
概要
米のプライベートベンチャーによるクリスティー戦車を拡大改良したMk.Ⅲ巡航戦車。それを補佐する重巡航戦車として開発がスタートした車両である。元々この目的で本命視されていたカヴェナンターがとてつもないポンコツ戦車になってしまったため、予備案として用意されていた本車が大戦前半の英国主力巡航戦車として活躍している。性能的な限界から大戦中盤以降は前線を退いた。
開発の経緯
低姿勢・装甲強化・高速性の確保と欲張った設計を小さな車体に盛り込んだカヴェナンターにはやはり不安があったのか、カヴェナンター開発開始後にカヴェナンターをちょっと拡大したような仕様の戦車の開発が決定されている。クルセイダーは開発開始こそカヴェナンターより少し遅れてはいたが並行して開発が行われており、カヴェナンターが想像以上にポンコツだったから改良してクルセイダーになったわけではない。現に試作車両は1940年4月9日とカヴェナンターよりも6週間も早く完成している。この計画は極力カヴェナンターと部品を共通化することも盛り込まれており、結局カヴェナンターの転輪をひとつ増やし水平対向エンジンをV12エンジンに取り替えたような車両として完成したのである。
構造
おおむね大戦前~大戦初期に求められた性能を具現化したようなスペックであり、防御力に致命的な問題がある巡航戦車と機動力・火力に重大な問題を抱えていた歩兵戦車(というか、マチルダⅠ)の両方の鬱憤を晴らすかのような設計である。
主砲はお約束の2ポンド砲であり、大戦初期の戦車戦において問題となっていた「砲塔が小さすぎて砲手と装填手が砲塔に入れず、車長が全部こなさなきゃいけなかった」を解決する大型砲塔を装備することで実質的な戦闘力は大きく向上することが見込まれた。さらに初期型には本体正面に7.92mm機銃を装備する銃塔が設けられている。
防御力は正面装甲が最大40mm。37mm級対戦車砲が当たり前だった時代においてはまずまずの装甲である。
機動力も高く、ノーマル状態で路上最高速は43km/h。ガバナー(調速機。駆動系に負担をかけないための速度リミッター)を解除すれば60km/hくらいは出たということであり、またサスペンションの構造が不整地向きでアメリカからレンドリースされたM3中戦車よりも砂漠での行動力は高かったと言われている。しかし機械的トラブルも多く、「36時間連続で無故障であれば奇跡」とまで皮肉られるくらいの駄々っ子だったのも事実だったようだ。
配備と運用
カヴェナンター同様、欧州情勢が風雲急を告げていたことから正式な採用前に既に量産計画は動き出しており、1940年5月にはクルセイダーの本格生産が開始されている。しかしこの時点でドイツ軍は既にフランスへの侵攻を開始しており、クルセイダーによる戦車部隊の編成が間に合うのはアフリカ戦になってしまう。
アフリカ戦においてクルセイダーの主な敵となったのはドイツ軍のⅢ号戦車であり、既に50mm砲と正面装甲60mmを装備していたⅢ号戦車は1ランク上の戦闘力を持っていたためクルセイダーは苦戦を強いられた。Ⅲ号戦車の砲撃は1000メートル前後でクルセイダーに致命傷を与えられるのに対し、クルセイダーの砲撃は500メートル以下でなければⅢ号の正面装甲を抜けないため、対抗するにはかなりの戦術的巧緻が必要だったのである。この状況をなんとかすべくクルセイダーも改修を重ねて増加装甲の装備や6ポンド砲の搭載を実行したが、砲塔内部の容積が不足したためまた車長が全部やる一人砲塔に戻ってしまい、総合的な戦闘力は2ポンド砲タイプのほうがマシだったという話すら有ったりする。
とはいえ、当時に制式化されていた英軍巡航戦車でまがりなりにも戦車として使い物になるのはクルセイダーしかなく、英国の中東支配が失われればユダヤ教・イスラム教の聖地だらけのエルサレムもナチス・ドイツの手に落ちてしまうことになる。その場合の被害は想像を絶するモノになっていたかもしれない、と考えると、「十字軍」の名を持つこの戦車がこの地でドイツ軍の侵攻を食い止めるために戦ったのはおおいなる歴史の皮肉というべきか。
1943年以降、アメリカから送られてくるM4シャーマンや後継の巡航戦車・クロムウェルに代替されてアフリカ戦限りの現役となったが、その後も牽引車の代用として17ポンド砲などの大型火砲の移動の迅速化に貢献し最後まで祖国の危機を救うために奮闘を続けたのであった。整備兵も。
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