HANA-BIとは、北野武が監督・主演の映画である。
キャッチコピーは「その時に 抱きとめてくれるひとがいますか」。
概要
北野は第4作『ソナチネ』以降、海外での認知度・人気は非常に高かったが、この作品でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したことで、「世界のキタノ」と称されることになる。
北野映画の多くはエンターテイメント性が薄く、激しくも乾いた暴力描写、死を感じさせる空気などが日本の観客に受けず興行的に大失敗し続けており、それは『ソナチネ』の圧倒的な欧州での人気の後も変わらなかった。
しかし、金獅子賞という、見える形での大評価を今作で獲得したことで、日本国内でも「再評価」が行われることになった。
これを「手のひら返し」と呼ぶ向きもあるが、それ以前(特に第3作『あの夏、いちばん静かな海』の時点)でも国内の巨匠や映画評論家の中には好意的な評価を表す人間も少なからずおり、日本の映画界が必ずしも彼に冷たかったというわけではない。
本作は、冷徹で乾ききった暴力描写・“キタノ・ブルー”で映し出される豊かな風景という『ソナチネ』に通じる作風を持ちながらも、そこに夫婦愛をはじめとする情緒的な展開が加えられており、北野映画の中でも“入りやすい”作品とされる。
が、一方で、『ソナチネ』や『アウトレイジ』など、北野映画の中でも、人間的な情緒の一切を排してとにかく非情でアナーキーな暴力性のみを映し出す作風に魅せられたファンは、今作に対して拒絶反応を示すこともある。
あらすじ
刑事・西の妻である美幸は数ヶ月前に幼い子供を亡くし、失意のまま体調を崩してしまった。西は凶悪犯の張り込みの最中に、同僚・堀部の好意に甘え、病院にいる美幸を見舞う。
だが、西はそこで医師から、美幸が不治の病にかかっていることを知らされ、さらに堀部が犯人に撃たれたことを知らされる。堀部は命こそ取りとめたが下半身不随になってしまう。罪悪感と動揺が、西を襲う。
やがて犯人は別の場所で発見され、西は犯人を追いつめる。しかし逮捕の焦りから、失態を演じ、後輩の田中が殺されてしまう。西は犯人を射殺し、何度も銃弾を撃ち込んだ。
西は警察を辞めた。田中や堀部に対する罪悪感のためであった。
しかし職を失った一方で、自分のために車いすの生活となった堀部の画材道具のための資金、殉職した田中の妻や余命いくばくも無い妻・美幸のための生活資金を工面しようとし続けていた。
西はヤクザから借金を重ね、そして返済に困るようになる。思い余った西は銀行強盗をやり、その金で借金を完済、さらに田中の妻や堀部に送金する。
西は、余ったわずかな金で妻との逃避行を始める。
しかし、ヤクザが利子をせびりに執拗に追いかけてくる。逃避行を邪魔されたくない西は追いかけてくる者を皆殺しにする。
だが、その身を案じて追いかけてきた後輩・中村に、彼らの死体を見つけられてしまう。
強盗と殺人を犯した西、不治の病を抱えた美幸。
2人とも、道は閉ざされてしまっていた。
逃避行の果てにたどり着いた砂浜で、2人の旅は終わりを迎えた。
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関連項目
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