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オートプシー・イメージング(Autopsy imaging)とは、死後画像診断である。以下、それぞれの単語の頭文字をとって 、「Ai(エーアイ)」と表記する。
Autopsyとは剖検、imagingとは画像、直訳すると「画像解剖」となる。死因究明に不可欠な「死亡時医学検索」の手段はいままでは「解剖」しか存在しなかった。しかし、日本の年間死亡者約百万人に対し、総解剖数はわずか三万人である。解剖率…たったの3%か、ゴミめつまり、残りの97%の死者は、死因不明のまま弔われていることになる。この「死因不明社会」に対する特効薬が「Ai」なのである。その方法は「遺体の内部の画像を撮影する」たったこれだけ。これだけで、多くの死因を究明できるのである。
死因不明社会とは、読んで字のごとく、「死因が分からない社会」のことである。「死因なんて分からなくても別にいいだろ 、死人が生き返る訳じゃねーし」なんて言ってると、下のような事になる。
つまり、死因不明社会は、医療の質の低下、治安の悪化に直結するわけだ。
いよいよ本題、Aiについての話。Aiを実施すれば、前述の様々な問題を解決することができる。施行は簡単。今までは 検案→解剖となっていた死亡時医学検索。この間に検案→Ai→解剖と、Aiを間に挟んでやるだけでいい。ね、簡単でしょう? 遺体の撮像では、コンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI)が主に用いられる(ちなみに日本には諸外国平均の6、7倍の数のCT・MRIが設置されており、Ai施行には充分過ぎるほどの環境が整っている)。CTでは30%、MRIでは60%程度の割合で死因を究明することができ(解剖では75%程度)、主に放射線専門医、それ以外では一般臨床医が診断する。Aiは、ずさんな死因究明制度に光を当て、死因不明社会への処方箋となるのだ。
ここで一度、Aiの利点を整理してみる。
Aiの実施によって、これだけの恩恵が得られるのだ。しかも、画像情報の蓄積やCT・MRIの進歩によっては、さらなる飛躍が期待できるようになる。
このように素晴らしい検査方法であるAiだが、もちろん問題も抱えている。解決済みのものも含めて列挙してみよう。
病棟では死者が横たわったベッドに患者を寝かせますが、誰も文句言いませんね。 By 白鳥圭輔(ジェネラル・ルージュの凱旋 274ページより)
通常診断機器でAiを行うことが患者に対する配慮に欠けるならば、同じ理由で、死者が寝たことのあるベッドも変えなければならない。ベッドではシーツを替えているから清潔といっても、Aiでも遺体を滅菌布でくるんで検査するので、こちらも清潔そのものである。
解剖が社会のコンセンサスを得ているのに、なぜエーアイは得られないのか、ということを聞きたいんだ。遺体損壊を伴う解剖と、遺体に影響を与えないエーアイと、どちらが倫理的問題を含んでいると考えているのか? By 速水晃一(ジェネラル・ルージュの凱旋 262ページより)
遺体を損壊する解剖が社会に受容されている以上、非破壊検査であるAiが倫理的な問題をはらんでいるとは言えない。Aiに倫理問題があるならば、解剖も倫理委員会を通せという話になるだろう。ちなみに、現在は30道府県以上でAiが倫理審査委員会を通過している。よって、Aiは倫理問題なしと認定できる。
以上の三点のうち、二点が解決済み、残りの一点の費用拠出問題をどう解決するかが今後の課題である。
こうした場合、「Aiと解剖って、どっちが優秀なん?」といった比較論になりがちだが、これは正直、どっちが優秀とかそうでないとか、一概には言えないのだ。Aiと解剖は次元の違う検査なので、比較が不可能なのである。むしろ、前に述べたとおり、Aiは解剖の良きパートナーなのである。Aiが導入されると解剖が不要になってしまうと考える人が少なからずいるが、Aiでも死因不明だった症例は解剖に回されることが多くなるので、むしろ解剖は増加が見込まれている。Ai情報によって、解剖情報の質はアップする。解剖は一部分に的を絞って検査することにかけては効果抜群なのだが、逆に全体をくまなく検査することが苦手という弱点がある。しかし、Aiは、その全体検査が大得意なのだ。さらに、Aiによって頭部の検査が簡単にできる。頭部の解剖は体幹部の解剖とは別に承諾を取るので、頭だけは解剖しないでくれという遺族も多かった。そのような症例でも、Aiなら非破壊検査だから大丈夫。対して、解剖がAiの助けになることもある。Aiで検出されなかった病変が解剖で検出されれば、Aiの診断能の限界を知ることができる。Aiと解剖は互いに互いの弱点を補っているのだ。
ここまで読んでくれた人なら、Aiの有用性は理解できたと思う。Aiが普遍化すれば、必ず医療関係者・患者双方にとって役立つシステムになる。悪徳医師や悪徳法曹や犯罪者や虐待親は困るかもしれないが。まだ普遍的な導入までは至っていないが、市民がそれを望みさえすれば実現可能だ。これからのAi、そして医学の進歩に期待しよう。
大人気シリーズ「田口・白鳥シリーズ」。いずれの作品も作中でAiが活躍する。
海堂尊がAiを提唱してからのアカデミズム闘争の軌跡を記した大ボリュームの闘争記。ヨシタケシンスケのユニークな挿絵も必見。
死因不明社会の現実と、その処方箋たるAiについて、「田口・白鳥シリーズ」でお馴染みの白鳥圭輔と、「螺鈿迷宮」に登場したジャーナリストの別宮葉子が対談形式で分かりやすく解説。
提唱者の海堂尊と共に、山本正二を始めとした5人の専門家たちがAiを語りつくす、最新のAi書籍。
掲示板
10 ななしのよっしん
2016/04/05(火) 09:24:52 ID: 7D+wiJ39ya
これ記事の内容書籍からのほぼ転載じゃん
規約上やっていいのこれ
11 ななしのよっしん
2022/01/02(日) 22:37:08 ID: 7zjroXWZc/
利用規約で該当するのは第5条だろうけど、特に編集方針については規定がないな。
転載について規定があるのは「ニコニコ大百科:編集時のマナー」の方だが、こちらは無断転載やWikipediaからのコピペ以外は特に規定がない。
もちろん一冊まるまる無断引用で丸写しとかすれば著作権には引っ掛かるだろうけど、現時点ではそんな書き方にはなっていないので、問題はなさそう。
この要約自体が一字一句違わず海堂尊の本一冊からのコピペとかだったらアウトだけどね。
12 ななしのよっしん
2023/07/01(土) 14:46:49 ID: I5DoUAGQ6i
家族を亡くして「原因わからんけど死んでます」と言われてそっかーで済ます人が多いとは考えづらいが
「解剖して切り刻んだらわかるかも!」にオッケーって即答できる人が多いとも考えづらい
でも「CTなりMRI撮ったらわかるかも!」ならとりあえずそれでって人は多いんじゃねーかなと思う
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最終更新:2025/12/09(火) 04:00
最終更新:2025/12/09(火) 03:00
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