『グラスゴーの奇跡』とは、2012年ロンドン五輪のサッカー競技において、U-23日本代表がU-23スペイン代表を1-0で撃破した出来事である。
試合の行われた場所がグラスゴー(スコットランド最大の都市)であること、そして1996年のアトランタ五輪でブラジル五輪代表を1-0で破った「マイアミの奇跡」を彷彿とさせることから、マスコミによってこの名称がつけられた。ただし、後述のように試合内容を鑑みると奇跡というほどの差があったわけではないという説もあり、呼ばれ方はジョホールバルの歓喜になぞらえて「グラスゴーの歓喜」、或いはそのどちらも使わない「グラスゴーの衝撃」ともされている。
五輪開会式に先立つ2012年7月26日、男子サッカー競技はイギリス各地で予選リーグ初戦の8試合を行った。
これは男女とも試合間隔の都合で、サッカー競技は開会以前から競技が始まるスケジュールのためである。
すなわちこの試合は全ての競技に先立って行われるものであり、後に続く自国の各競技者に弾みをつけるうえでも重要な一戦であった。
しかし日本初戦の対戦相手であるスペインはフル代表が世界ランキング1位、そしてW杯やEUROを連覇している印象も強く、その系譜に連なるスペイン五輪代表は圧倒的な優勝候補として目されていた。
スペインと同グループの各国にとってスペイン戦は「避けられぬ嵐」であり、如何に身をかがめて被害を減らし、その他の対戦国から勝ち点を稼ぐかこそが(世論としては)決勝トーナメント進出への課題だったのである。
日本×スペインの試合は、そのような状況下のグラスゴーに開始した。
GK:1 権田修一 DF:2 徳永悠平、4 酒井宏樹→12 酒井高徳(後半29分)、5 吉田麻也(Cap)、13 鈴木大輔 MF:3 扇原貴宏→8 山村和也(後半41分)、10 東慶悟、16 山口螢、17 清武弘嗣、7 大津祐樹→15 齋藤学(後半0分) FW:11 永井謙佑 サブ:18 安藤駿介、8 山村和也、6 村松大輔、9 杉本健勇、14 宇佐美貴史
オーバーエイジ枠の吉田麻也と徳永悠平がスタメンに名を連ねた。
まずは日本ボールからでキックオフ。(日本時間26日22時45分)
試合開始早々、日本はチャンスを得ながらもペースを掴みきれずに開始数分でスペインペースとなる。
しかし、初戦の相手がスペインだったのが逆に幸いしたのか、スペインも初戦を落としたくないために積極的な行動は思ったよりあまり見せなかった。
開始から十数分が経過し、日本とスペインはパスを中心としながら、それぞれお互いの隙を衝こうとするもイマイチ好機が掴めないでいた。
すると前半25分、右サイドでボールを受けたマタがドリブルで突進。中央に切り込んで左足で強烈なシュートを放つ。ボールはゴール右に飛ぶが、GK権田がファインセーブでこれを防いだ。右からのコーナーキックはGK権田がパンチングでクリア。スペインはこの試合最初の決定機となった。
その2分後、ボールを奪った大津からDFラインの裏を走る永井へとロングボールが渡る。左サイドでキープした永井がグラウンダーで折り返し、飛び込んだ山口へと渡るが、間一髪でDFがクリアし、日本はチャンスを逸してしまう。
かに見えたが、すぐに酒井宏がボールを奪い、清武へと渡り素早いカウンター。清武から大津へとつながり、大津から永井へ。ペナルティーエリア右で受けた永井が切り返しからシュートを狙おうとするが、DFにボールを奪われてしまい、これでチャンスを逸してしまったのである。
これで、スペインへと流れが傾くかと思われたが………。
大津が右サイドを走る東にパスを送り、受けた東がクロスを上げるが、DFにブロックされて右CKに。扇原が蹴ったボールに、モントーヤを振り切った大津が右足で合わせる。このシュートによりボールはゴール左へと吸い込まれ、GOOOOOOOOOOOOOOAL!!!!!!
意外にも日本が先制点をあげた。この瞬間日本全国では狂喜乱舞であった。
しかし、1点だけでは不安である。
その後も38分に相手DFのパスミスでチャンスを得、清武がGKデ・ヘアと1対1となりシュートを放つが惜しくもゴール右に外れてしまう。
それでも前半41分、42分と立て続けにチャンスを得るが、結局得点には結びつかなかった。前半41分にイニゴ・マルティネスが一発レッドカードで退場となり、後半の45分は相手は1人少ない10人で臨むこととなった。
後半、足を痛めていた大津に替えて、左MFのポジションに齋藤学が投入される。
後半は人数に分がある日本が、前線でのプレスからボールを奪い試合を優位に進めていくも中々追加点が奪えない。チャンスを作っては潰していく。その繰り返しである。
そんな日本を見たのかスペインはエレーラとロメウを投入する。ここから徐々に日本に歯車が狂い出す。そしてスペインは怒涛の攻勢を仕掛ける。
15分、17分、21分と日本ゴールを脅かす。これによりほぼ日本は守勢へと立たされることになった。
そんな空気を打開しようと日本は酒井宏樹に替えて酒井高徳を投入する。また、守備に不安のある齋藤と、右MFの清武をポジションチェンジすることで、後半再三崩されていた左サイドをなんとか安定させる。しかし、スペインも激しく対応し、時には日本選手に危ないプレーを強いる。
後半42分、永井が絶好の好機を得るも、結局GKデ・ヘアに阻まれて2点目をあげることはできなかった。
そして、アディショナルタイムに突入。時間は4分。
その前後からスペインは総攻撃をしかける。日本もその攻撃を巧みに防いだ。吉田、徳永を中心とした守備陣が堅固だったのが大きいであろう。
そして、試合は終了。日本はスペインを1-0で降す大金星を挙げる。正に快挙である。
この一戦は1996年の「マイアミの奇跡」を彷彿とさせた。この時の日本は1-0でブラジルを降している。
ただし、ブラジル戦の勝利はほぼ唯一のカウンターチャンスで奪った点を、運にも助けられつつGK川口を中心とした総力守備で守りきった、いわば「弱者の戦い方」だったのに対して、今回のスペイン戦では相手の退場で数的優位が作れた部分や随所に押される場面もあったものの、攻撃では中盤でゲームを組み立てフィニッシュへ持っていく戦術、守備では前線からのプレッシングと数的優位でボールを奪う「自分たちの戦い方」が最後まで出来ていたといえる。その点で神がかり・偶然性の高い「奇跡」ではないと主張するものも多い。
数多くのチャンスを決めきることが出来なかったという今後の課題を見出すことも出来ており、「マイアミの奇跡」から16年間の日本サッカーの進歩を確かに感じることが出来た一戦でもあった。
なお、アトランタ五輪では、予選リーグでは2勝1敗であったが、得失点差で泣き予選敗退となった。マイアミの奇跡の二の舞にならないことを皆で祈っていたのだが…(後述)
日本がスペインに勝利した事は海外では驚きと賞賛を持って迎えられた。
「大津祐樹のゴールで、日本が10人のスペインを破る」ガーディアン紙 イギリス
オリンピックのメダルを彼らの最近のカタログに加えるというスペインの目論見は、早々に頓挫した。彼らは反撃する機会を与えられなかった。
「スペイン0-1日本:かませ犬が相手の舞台上で優勝候補を破る」ミラー紙 イギリス
パスとプレスの王者が得意舞台で日本代表にハートを盗まれ屈した。
全国紙エル・パイスの電子版「オリンピック・サッカーでは強い者が勝つとは限らないが、初戦で敗退したことは、スペインに大きな失望を与えた」と伝えながらも、日本のプレイには賞賛を送った。
「日本がスペインを驚かす」LaVozdeGalicia紙 スペイン
チームにとっては残念な初戦だが、順当な結果
「日本がメダル候補のスペインを相手に番狂わせ」Welt紙 ドイツ
ブンデスリーガのボルシアMGに所属する大津祐樹が今大会で初のセンセーションを巻き起こした。本命と見られていたスペイン代表に、日本は驚きの勝利を導くシュートを放った。
「スペイン、五輪で暗雲」ビルト紙 ドイツ
日本が欧州にこうやるんだと示した!五輪の試合で、はるか東の国がスペインを1-0で破った。
「スペインが日本に敗れる」SPOX紙 ドイツ
五輪男子サッカーで初のセンセーション。開会式の前日、スペインの五輪代表が日本を相手に1-0で敗れた。
「スペインは日本戦での衝撃的な敗戦に苦しむ」CNN
ワシントン・ポスト紙「日本が五輪男子サッカーで大番狂わせを演じた。スプリントと狡猾さをみせ、メダル候補のスペインを1-0でやぶった。」
「ジャイアントキリングに沈んだスペイン」TheWest紙 オーストラリア
木曜、ハムデン・パークにて欧州王者のスペインを相手に1-0の衝撃的な試合をし、日本は五輪サッカー史上で最大の番狂わせの一つを演じることとなった。
7月29日に行われたグループリーグ第2戦、対モロッコ戦では、日本は永井のゴールにより1-0で勝利。これにより予選グループ2位以上が確定、グループリーグ第3戦の対ホンジュラス戦では0-0の引き分けとなり、グループリーグを1位で通過する。中田英寿や中村俊輔らを擁し「黄金世代」と呼ばれた2000年シドニー五輪以来の予選突破・ベスト8が決定した。準々決勝のエジプト戦も3-0で勝利し、準決勝・3位決定戦では敗れたものの、最終的な成績は、1968年メキシコ五輪以来44年ぶりのベスト4となった。
がしかし、同組のもう一つの試合では、スペインがホンジュラスに0-1でまさかの敗北。3試合目を残し予選落ちが確定してしまった。第3戦目もモロッコ相手に0-0、3試合で1点も取れずの予選リーグでの敗退となり、「実はスペイン五輪代表は強くないんじゃないの?」「日本の勝利も奇跡ではなく順当だったのでは?」という意見も増えている。
掲示板
124 ななしのよっしん
2012/08/11(土) 00:40:54 ID: 86x0IqXDMu
なんでお前らは「よく頑張った」とか「感動をありがとう」とか言えないの?
日本が頑張ったから勝ったでいいんじゃないの?
そんなことをネットでグダグダ言ってるならサッカーでもしてろよ
125 ななしのよっしん
2012/08/15(水) 17:04:34 ID: wIEw7+Irzt
>>124
日本が頑張ったことは事実だし、凄いと思うよ 当然感動もした
ただ、それとこの勝敗をどう捉えるかは別の問題だよね
むしろ「奇跡だ」「偶然だ」ってもてはやすのは、それまでの先人の努力や
スコアラー含むチームスタッフの分析や献身、そして何より実際に戦った選手の実力を
軽視してるのと同じことなんだけど、理解できてますかね
126 ななしのよっしん
2012/08/24(金) 06:24:24 ID: SuP9GNS+JE
決勝T進んだ頃には既に死語になったよね
というかマスコミがなかったことにした感じがする
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/05(金) 22:00
最終更新:2025/12/05(金) 22:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。