『寮長は料理上手』とは、吉村佳による4コマ漫画である。
『コミックキューン』(KADOKAWA)にて2016年10月号より2019年12月号まで連載された。単行本は全4巻。ジャンルの分類上4コマ漫画作品であるが、ほぼ毎回通常のコマ割で描かれる部分もある。
ウェブコミックサイト『ComicWalker』および『ニコニコ静画 (マンガ)』でも、コミックキューンから約3週間遅れで連載されていた。どちらのサイトでも第1話と第2話は常設公開、最新話は約1か月の期間限定配信。
概要・あらすじ
海に面した風光明媚な温泉町、衣浜(きぬはま)を舞台に少女たちの日常を描く。高校入学を期にこの町の元温泉旅館の寮「伍色館」(ごしきかん)へと引っ越して来た主人公、小花悠里(おばな ゆうり)は、同い年で文武両道、しかも「料理上手」な寮長、姫市原麻耶(きしはら まや)と出会う。
天真爛漫で誰にでも親切な悠里は、副寮長で高校2年生、活発な性格の矢倉文香(やぐら ふみか)、小学2年生だけどしっかりものの堀切実和子(ほりきり みわこ)、中学2年生で引きこもりがちだが実は勉強も運動もできる坂虎口直(さかこぐち なお)といった寮生をはじめとする町の人々(と寮に住むカピバラのローズ)とどんどん打ち解けていく。そしてそれまでは寮長としての寮生活、学校生活の両面で生真面目に責任を果たそうとするばかりだった麻耶にとっても、悠里と生活する伍色館は心休まる憩いの場となっていく。
メインの女の子達の描写はもちろんのこと、寮での生活を豊かに彩る上質な作画の料理も見どころ。
『のんのんびより』などの作品で知られる漫画家のあっとは本作を絶賛しており、単行本第2巻の帯には「こっちの田舎も楽しそうなのん」とふきだしで話す宮内れんげが描かれた。
主な登場人物
伍色館の寮生
- 小花悠里(おばな ゆうり)[1]
- 本作の主人公。高校1年生。高校入学を期に東京から一人で伍色館に引っ越してきた。衣浜の高校に通うことに決めたのは、祖母が子供の頃一時期住んでいたことがありその話を聞いたため(祖母は悠里の受験前に他界)。お風呂が大好き。高校にはインフルエンザで一週間遅れの入学であったが、学校に最初に来た日の1時間目からクラスに馴染み、また近所の人を助けて農作物を貰うなど社交性が高い。運動神経もよく、視力・聴力もいい。中学の時はあまり勉強をしていなかったが、高校入学後は本人なりに頑張っている。よくデフォルメされた絵柄で描かれ、この時の外見をウサギやハムスターに似ていると周囲から思われる。
- 姫市原麻耶(きしはら まや)
- 高校1年生。地元の名家の娘。伍色館の寮長で寮の炊事も担当し、とても料理が上手い。学校でも成績優秀、学級委員長でかつ生徒会に入っており、同級生からは「姫」と呼ばれる。薙刀部に所属し、朝から熱心に練習に打ち込む。悠里と出会うまでは寮や学校で責任を果たそうとするあまりどこか余裕のない生き方をしていたが、悠里の人となりに触れ、次第に心にゆとりを持てるようになっていく。
- 矢倉文香(やぐら ふみか)
- 高校2年生。副寮長だが年功序列で自分がトップだと主張する。寮に入ったのは「寂しいから」。学校では演劇部で衣装班の班長を務める。実家はテレビCMも放送する有名な人形屋。小さい頃に人形の服を作っていたため裁縫が得意。悠里や麻耶よりやや背が低い。子持ちの姉がいる。
- 堀切実和子(ほりきり みわこ)
- 小学2年生。麻耶の従姉妹で、悠里より1年早く伍色館に入寮した。一人称は「ぼく」で、丁寧語で話す。父親は海外に勤めており、また「お母さんはいない」と話している。書道を習っており年のわりにしっかり者であるが、『カピバラ動物園』というテレビ番組が好きという子供らしい一面もある。
- 坂虎口直(さかこぐち なお)
- 中学2年生。寮の「芍薬の間」という部屋に住んでいる。山村出身で大人数が苦手で、部屋に引きこもりがち。だがゲームが好きなので、自室のテレビではなく談話室の大きなテレビでやりたがっている。学校の出席日数は少ないが、模試で全国10位をとるなど成績は優秀で進級できた。山育ちということもあり運動も出来る。
- ローズ/カピ子
- 伍色館に住むカピバラ。寮の人々は「ネズミ」「カピ子」と呼んでいたが、悠里によると自身では「プリンセスローズ」を名乗っているらしい。悠里からは「ローズさん」と呼ばれるようになる。喋りはしないが人語を解し、寮の掃除や洗濯もする。
その他の人々
- 御前愛理(みさき あいり)
- 中学2年生。父親が悠里の母親と再婚する予定。家に使用人がいる名家のお嬢様。4歳の時に悠里の母のバレエ教室で悠里と出会った。離れた学校に行った悠里のことを非常に気にしており、資金を出して悠里の学校の先生に林間合宿の記録ビデオを作らせた上、その後自身で伍色館まで悠里の様子を見に行った。悠里が麻耶と仲良くなっていたのを見てやきもちを妬く。
- 町屋豆腐のお姉さん
- 悠里が衣浜に住み始めた頃から買出しに行っている豆腐店の女性。夏に海の家で豆乳アイスを販売し、悠里は浜辺で売り子のアルバイトをした。
- 姫市原鞆絵(きしはら ともえ)
- 麻耶の祖母。伍色館を旅館にした人物。麻耶が小学生の頃は薙刀の先生などもやっていた。年末に帰省する前の悠里と浜辺で出会う(が、悠里は麻耶の祖母とは気付かなかった)。
- 姫市原小牧(きしはら こまき)
- 麻耶の姉で大学生。古式ゆかしい家風の姫市原家には不似合いな派手ないでたちをしている。
舞台
- 衣浜(きぬはま)
- 「海と温泉のまち」という標語が掲げられている。市町村などの行政区分は不明。温泉町沿いの海岸、渡し船で行く無人島と海水浴場が二つある。「衣浜温室みかん」などの名産品がある。作中に描かれる背景や設定などから、モデルは愛知県蒲郡市と思われる。
- 伍色館(ごしきかん)
- 元は麻耶の祖母の旅館だったが、現在は寮となっている。「寮生は助け合う」という寮則がある。炊事、洗濯、掃除、買出しなどの当番があるが、炊事はほぼ麻耶が担当している。温泉があり、カピバラ用の温泉もある。
- 衣浜高校(きぬはまこうこう)
- 悠里たちが通う高校。ほとんどの生徒は中学からの内部進学。1年生は岐阜の飛騨高山での林間合宿へ行き、飯盒炊爨や現地観光をする。秋に学園祭週間があり、体育祭、芸術祭、文化祭などを行う。イギリスに交流校がある。
関連リンク
関連項目
脚注
- *名字の読みはニコニコ静画の第1話では「こばな」と記されているが、単行本では「おばな」となっている。