『浦島太郎』とは、『桃太郎』、『金太郎』などと共に、日本で最も広く知られているおとぎ話である。
非常に有名なおとぎ話であり、以下のようなあらすじは、誰しも一度は聞いたことがあるものと思われる。
ある日、漁師・浦島太郎は、子供が浜で亀を虐めているのを見かけた。
子供を諭して亀を助けると、亀はそのお礼に、浦島を竜宮城へ連れて行くという。竜宮城では、主の乙姫に非常な歓待を受けた。
その後3年が経ち、浦島太郎が里に帰りたい旨を乙姫に話すと、乙姫は「決して開けてはならない」といいつつ、「玉手箱」を浦島に渡した。浦島太郎が浜に帰ると、浜辺は様変わりしており、知人が皆いなくなっていた。通りすがりの人に聞くと、なんと700年(300年説等、諸説有り)もの時が経過していたという。
なお、この話はマルチストーリー・マルチエンドであり、上記のストーリーは童話版(明治時代の国定教科書版)という最も知られたバッドエンドである。その他のバリエーションとしては、
などがあるが、ここでは童話版について触れる。
この物語は1300年以上前から伝わっており、しかも出典が明らかであるという希有の物語である(似たような境遇の『桃太郎』は、最古の出典が明らかでない)。
古くは古記事や日本書記での闘争話を神格化した「山幸彦と海幸彦」にまでさかのぼると言う。
しかし、後述するいくつかの疑問点を残す、極めてミステリアスな話でもある。
まず第一に、この物語は主題が不明である。通常、「おとぎ話」は(おもに仏教的)説話集であることが多く、何らかの教訓が必ず記されている。しかし、この『浦島太郎』には、一見してそれが無い。
「亀」を助けたことにより、「浦島太郎が竜宮城で歓待を受けて幸せに暮らしました、めでたしめでたし」ならば分かりやすいし、善行を積めという教訓になる。だが浦島は、竜宮城から帰った途端、突如孤独な存在となってしまった。しかも竜宮城に戻る手段も存在しない(薄情な亀である)。挙句、玉手箱で老人にされてそれでおしまいという、言うなれば踏んだり蹴ったりの展開である。なぜ「亀」を助けた主人公が、これほどの目に遭わなくてはならないのだろうか。
これに関して、次の語こそが主題だったのではないかという説がある。
ひとたび人外と触れ合った人間は、元の生活には戻れない |
つまり、浦島太郎は「人語を解する亀」という「人外の存在(=「魔」)」に触れてしまった。ひとたび「魔」に触れてしまった人間は、たとえそれがどんなに楽しい時間であろうと、もう人間の日常に戻ることは許されない。そもそも浦島は「亀」について行ってはならず、そしてひとたびついてゆく事を決心したならば、その時点で帰還を望んではいけなかった…ということである。まとめると、次の二点の主張が読み取れる。
第二の謎は、乙姫は何を思って「玉手箱」を渡したのかということである。
そもそも「開けるな」といって箱を渡すのは妙である。「開けるな」と言われれば開けたくなるのが人情だからだ。さらに「開けてもらいたくない箱を渡す」という行為も矛盾に満ちている。つまり、乙姫は最初から浦島太郎に玉手箱を開けさせる意図をもって渡したのだと思われる。
だが、その中身は「人間を急速に老化させる煙」という、あまりに無慈悲なものであった。
これに関しては「浦島が寂しくないよう、老衰で早く死なせるための善意だった」という解釈がある。しかし、これは現在なお結論の出ていない「安楽死」の問題に直結している。当然、浦島がそれを望んだ描写は無い。彼はこの仕打ちに感謝していたのか、恨んでいたのか。意見の分かれるところであり、これは非常に現代的な問いである。
あるいは「竜宮城の存在を秘するため、口封じのために玉手箱を渡した」のかもしれない。これならば玉手箱を渡す意味も分かる。しかし、即効性の毒を使わなかったのはなぜかという疑問は残る。極論、玉手箱など渡さず、その場でヒョウモンダコかイモガイ辺りを呼び出して誅殺すれば済む話である。
いずれにせよ乙姫の玉手箱は、善意なのか悪意なのかそれすら分からない。真相は海の中である。
なお、この「玉手箱を空けるな」という話は、「見るなのタブー」(「メルシナ型」)の典型例である。童話での有名な例では「鶴の恩返し」、神話での有名な例では「パンドラの箱」などがあり、日本神話、ギリシア神話、千夜一夜物語など世界各地の説話に多数の例がある。
第三の謎は、竜宮城と外界で時の流れが異なるという事実である。
『万葉集』版において、浦島は竜宮城で3年の時を過ごした。しかし外界に戻ると、700年(諸説有り)もの時が流れていた。竜宮城では、時の流れが外界に比べて約1/233程に遅くなってしまうということである。これは一体どういうことであろうか。
一番分かりやすいのは、竜宮城が光速に近い速度で移動していたという説である。特殊相対性理論のローレンツ変換の式によると、竜宮城は光速の99.9991%の速度で動いていたことになる(もちろん重力などは考えておらず、非常に粗い近似であるが)。これは「竜宮城・宇宙船説」の元になっており、「ドラえもん」にも、このことをテーマにした回がある。
なお、こうした「運動している物体の時の流れが遅くなる」現象を、この物語に因んで「ウラシマ効果」と呼ぶ。
誤解されやすいのだが、この現象は『ドラゴンボール』の「精神と時の部屋」とは全く別のものである。
竜宮城内での3年は外部で700年だが、「精神と時の部屋」内での3年は、外部での3日である(注:設定上、内部時間2年以上は入れないが)。竜宮城は時の流れが外界に比べ遅くなり(1/233倍)、「精神と時の部屋」は時の流れが早くなる(365倍)。「ウラシマ効果」では「精神と時の部屋」の時の流れを説明することはできない。
実は、海外にも『浦島太郎』とほぼ同内容の話がある。ワシントン・アーヴィング作『リップ・ヴァン・ウィンクル』(1820年作)。舞台は海でなく森、職業は漁師でなく猟師、700年経過ではなく20年経過といった相違以外、ほぼ同内容である。
あとなんかポリネシア辺りに同内容の昔話が伝わっているという話がテレビで流れる事が時々ある。多分、現地の人がなんとなく話を合わせてるだけじゃないかな。
▼まさかの田村ゆかり朗読『浦島太郎』。国語の授業がみんなこんな感じであれば、国語で満点取るのは楽勝だろう。
掲示板
119 ななしのよっしん
2023/07/15(土) 20:54:11 ID: CRdF69OEl8
面白い試みだなこれ。
浦島太郎を老人にした罪…小学校で“乙姫”を児童らが弁護する模擬裁判 愛知県弁護士会の弁護士らが企画
https://
女子児童:
「逆に玉手箱を開けないでいた状態の方が姿がおかしいから、本来の姿に戻っただけなので無罪だと思います」
弁護の甲斐があって乙姫は無罪に。子供たちは弁護士の仕事の難しさを実感していました。
120 ななしのよっしん
2023/10/24(火) 12:41:29 ID: 1MTlG6T6C3
しっぺ返しがエグいだけで構造としては鶴の恩返しと同じだから
なんかこういう物語が生まれる共通のきっかけがありそう
121 ななしのよっしん
2024/01/29(月) 02:22:06 ID: KwSbfEKhHd
そもそも浦島太郎の善意や人間性はどうでもよくて適当な人間モニタリングするための異星人プロジェクトだった説。
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最終更新:2024/11/25(月) 16:00
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