目の色が違うわ!とは、コズミック・イラ(C.E.)の歪みを表す一言である。
『機動戦士ガンダムSEED』第45話(HDリマスター版43話)『開く扉』の回想(?)シーンにおいて放たれたセリフ。
物語全体のクライマックスに入る同話では、ラウ・ル・クルーゼを追ってコロニー・メンデルの研究所跡地へ侵入したムウ・ラ・フラガとキラ・ヤマトが、クルーゼから「それぞれの父親の秘密」を暴露されるというお話が展開される。
その前振りとしてクルーゼは、現在の世界を二分するきっかけとなった、コーディネイターの誕生とその広まりについて語る。件のセリフはその語りの中で挿入される、かつて「出来損ないのコーディネイター」を生んだ名も無き母親(担当声優不明)の悲鳴である。
受精卵の遺伝子を人為的に調整され、常人より高い知力・強靭な肉体を得るばかりか、容姿すらも決められるようになったコーディネイター。だが、生育は母親の胎内で行われる都合、胎児は母胎の影響を受け、必ずしも調整通りに形質が発現するとは限らない。実際に生まれたコーディネイター達の中には、親が「与えた」容姿と才能を十分に得られずに生を受けた者もそれなりに存在した(外伝『ASTRAY』のイライジャ・キールがそれ)。特に髪や肌や目の色は、生まれた瞬間に一発で調整の成否がわかってしまう。
調整手術には多額の金がかかることもあり、そうした「出来損ない」の中には親から虐待されたり養育を放棄されたりと、過酷な子供時代を強いられた者もいる(外伝『DESTINY ASTRAY』のカイト・マディガンがそれ)。
「生まれて初めて目を開けた子供にかけた言葉は、子供が「失敗作」だと分かった失望」であるという救いがたい描写。SNSやガチャ課金ゲームの誕生前であった放送当時は、当然ながら「親ガチャ」という言葉は存在せず、「毒親」という概念も希薄だった。このため当時は「目の色1つでメチャクチャ言うな…流石にこんなクズ親いねーだろ……」程度の感想だったのが、リマスター版で再見すると「あぁ、こういう親もそりゃ出てくるよね」と嫌に納得してしまった……という視聴者もいるようだ。
親のエゴ丸出しの発言者であるこの母親の姿は描かれず、ただ声が流れるのみである。にも関わらず、ガンダムシリーズでも特に荒んだ世界観(倫理観)で有名なC.E.世界の実像を端的に表しているこの台詞は、「やめてよね」だの「ナチュラルの捕虜なんか要るかよ!」だの「YATTAAAAA!」だのと並んで、『SEED』ファンが作品の名セリフ・名シーンを語る際に話題に上ることが多い。
人類最初のコーディネイター、ジョージ・グレン。フッフッフッフ……
奴の齎した混乱は、その後どこまでその闇を広げたと思う?
あれから人は、一体何を始めてしまったのか知っているのかね?
テーブルの陰に隠れた2人に拳銃を向けつつ、照明の電源を入れるクルーゼ。
メンデルの廃墟に、在りし日のコーディネイター調整病院の活気がよみがえる。調整手術の工程や、生まれ来る「優れた我が子」を待ちわびる夫婦のイメージが映される中、様々な台詞が交錯する。
母親A「目は、ブルーがいいなぁ。髪はブロンドで……」
父親A「子供には、才能を受け継がせたいんだ」
医師A「優れた能力は、子供の未来への贈り物です」
アバターを作るように子供の外見を選ぶ母親。
「自分には受け継がせるに値する才能がある」と信じて疑わない父親。
生命倫理の欠片もない、都合の良いセールストークをする医師。
クルーゼの言う「金で命を弄ぶ愚か者」の夢……。
父親B「流産しただと!? 何をやってたんだ!
せっかく高い金をかけて、遺伝子操作したものを!」医師B「妊娠中の栄養摂取には特に気を付けてください。日々の過ごし方もこの指示通りに……」
医師C「完全な保証などできませんよ。母体は生身なんですし、それは当然胎児の生育状況にも影響します」母親B「……目の色が違うわ!」
……夢、破れたり。
父親の秘密を聞かされたキラは放心状態。負傷したムウが隙を窺う中、クルーゼはさらに続ける。
高い金を出して買った夢だ。誰だって叶えたい。誰だって壊したくはなかろう
メンデルを拠点にコーディネイター技術を研究するヒビキ博士は、設計図に100%忠実な「最高のコーディネイター」……後に言われる「スーパーコーディネイター」を作り出すため、母胎を介さずに胎児を育成する「人工子宮」の開発に没頭するようになる。その過程では無数の命が散ることになった。
3号機、エマージェンシーです
くそぉ…濾過装置のパワーを上げろ!
心拍数上昇、血圧200を越えますもう止めて! あれは物ではない! 命なのよ!?
わかっている。だからこそ! 完成させねばならないんだ!
命は生まれいずるものよ! 創り出すものではないわ!
「No.0035236」と表示された被検体が失敗に終わり、ヒビキの妻は涙ながらに夫を諫めるが、既にヒビキも愚か者たちと同じ狂気に囚われていた。
やがてヒビキ博士の夢は、最初の、そして最後の成功例にたどり着くことになる――
人は何を手に入れたのだ? その手に、その夢の果てに……!
『より良きものを』と、人は常に進んできたんだ!
それは、そこにこそ幸せがあるからだ!
生命倫理の欠落や人心の荒廃がとにかく目に付くC.E.。『SEED』本編では語られない公式設定(裏設定ではない)では、この有様にも説明が行われている。
C.E.以前の時代では、度重なるBC兵器や放射性物質を用いた宗教・民族的テロリズムが行われた結果、当時の総人口の20%が「健康な次世代を残せない」レベルの遺伝子損傷を負っていた。こうしたテロの被害者を救済するため、両親の遺伝子を無傷な部分で繋ぎ合わせて受精卵に移植し、次代に遺伝子損傷を引き継がせない遺伝子操作技術が研究・確立され、それが後にジョージ・グレンを生む技術の元になった(なお、「自分が遺伝子調整を受けた人物だ」と最初に告白したのがグレンだっただけで、彼以外にも同等の調整手術を受けて誕生したコーディネイターもそこそこいたらしい)。こうした経緯から、最初のコーディネイターブームが富裕層で広がった際にも、遺伝子調整に関しては肯定的な人々が割と多かったのだ。
そして、C.E.22年に発見された外宇宙生物の化石や、C.E.30年のコーディネイター製造に関する宗教関係者会議の決裂によって、宗教の権威は失墜。これによってますますコーディネイター寛容論が広がっていった。
しかし、第一世代コーディネイターが高い実績を残し、彼らの子供である第二世代も親と同じ能力を受け継ぐことが判明した辺りで、コーディネイターとナチュラルとの対立が深まり始める。そしてC.E.53年のグレン暗殺、翌54年のナチュラルのみに感染する疫病の蔓延により、オーブ連合首長国などの数少ない例外を除き、ナチュラルとコーディネイターは断絶することになる。
ちなみに、ヒビキ博士がパトロンを得て本格的に人工子宮研究を始めたのがC.E.46年ごろ。技術を完成させたのがC.E.55年だった。
掲示板
137 ななしのよっしん
2025/02/25(火) 21:18:31 ID: SZfAPpVPCB
酷いセリフだとは思うけど、ゲームのキャラクリ画面で満足のいく見た目ができても、ゲームプレイ中になんか違う見た目のキャラ出てきて残念に思ったことあるから、俺はこのセリフは非難できないのかもしれない…
138 ななしのよっしん
2025/02/26(水) 02:55:09 ID: TjN1uVHsHj
>>136
完全な保証してて違うのが生まれたらまだ施設側の責任になるけど
"完全な保証など出来ませんよ。母胎は生身なんですし、それは当然胎児の生育状況にも影響しますよ"
なので希望と違う子が生まれたら何やってたんだになる
139 ななしのよっしん
2025/03/10(月) 12:16:25 ID: f1TbhHNZiR
>>125
今になって思えば、実験体に自分の双子の子供の片割れ(キラ)を選んだのも責任感ゆえの行為ではないかな。
今度こそ失敗するわけにはいかない。次の失敗は自分の子供を殺すことになるのだ、と自分を追い込むための行為だったと。
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最終更新:2025/04/21(月) 05:00
最終更新:2025/04/21(月) 05:00
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