若竹七海(わかたけ ななみ)とは、日本のミステリー作家。夫はバカミスの提唱者として知られる評論家の小山正。
1963年生まれ。立教大学時代からミステリクラブに所属し、創元推理文庫の折り込み冊子で書評コーナーを担当していた。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。「日常の謎」ミステリとして高い評価を集めた。
人間の悪意をさらりと上品に描くブラックな読み心地のミステリと、いわゆるコージー・ミステリを得意とする。前者の代表作は『プレゼント』『依頼人は死んだ』『悪いうさぎ』『さよならの手口』『静かな炎天』『錆びた滑車』『不穏な眠り』と続く女探偵・葉村晶の活躍を描くハードボイルド《葉村晶シリーズ》、後者の代表作は『ヴィラ・マグノリアの殺人』から始まる、神奈川県の架空の市・葉崎市を舞台にした《葉崎市シリーズ》だろう。
ちなみにどちらも同じ世界観上で展開されており、葉崎市シリーズのレギュラーキャラクターが葉村晶シリーズに顔を出したりするほか、それ以外の単発作品(『遺品』『死んでも治らない』など)にも葉崎という地名やおなじみの名前がちらほら登場する。また、中公文庫で出ている《御子柴くん》シリーズは、葉村シリーズの第1作『プレゼント』からのスピンオフ。
文学賞やミステリランキングでの扱いにはあまり恵まれず、長らく「無冠の実力派」的ポジションの作家だったが、2013年に短編「暗い越流」で日本推理作家協会賞を受賞。2014年に刊行した葉村晶シリーズ13年ぶりの新作『さよならの手口』が「このミス」4位、「週刊文春」「ミステリが読みたい!」10位などなぜか突然高評価を集め、続く葉村シリーズの短編集『静かな炎天』は「このミス」2位にランクインするなど、ようやくその実力が評価を集め始めている。
コージーや日常の謎の作家というイメージを持っている人もいるだろうが、葉崎市シリーズなどのコージー路線の作品でも笑えないブラックさが滲み出ることが多く(特に葉崎市シリーズ第3作『クール・キャンデー』のオチは強烈)、基本は人間のどうしようもない部分を醒めた目で見つめるブラックな作風の作家である。また、単に黒いだけでなく、ミステリとしても非常に凝ったプロットや大胆な仕掛けを駆使してくるため、本格ファンにもオススメしたい。
書店でアルバイトをしていた頃、毎週土曜日に書店に50円玉20枚を千円札に両替しに来る奇妙な客と遭遇。作家デビュー後にその経験を話したところ、その客の謎に対する解答編を様々な作家が競作する企画に発展した。解答編は一般公募も行われ、受賞者には後の剣持鷹士と倉知淳がいる。この企画は『競作 五十円玉二十枚の謎』として本にまとまり、「日常の謎」初期を代表するアンソロジーとなった。北村薫『ニッポン硬貨の謎』や青崎有吾『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』など、その後もこの企画の解答やオマージュ作品が書かれている。
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最終更新:2024/11/08(金) 15:00
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