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エラリー・クイーン(Ellery Queen)とは、アメリカ推理小説フレデリック・ダネイ(1905-1982)とマンフレッド・リー(1905-1971)の従兄弟同士の2人による合作ペンネームである(ダネイとリーの名前ペンネーム)。

早川書房から出る本での表記は「エラリイ・クイーン」。また別名義バーナビー・ロスがある。

シリーズ『Xの悲劇』『Yの悲劇』といった作品で「フェアな論理に基づいた作者読者の推理ゲームという本格ミステリの理想像とされる形式を確立した、本格ミステリ神様である。

作中に登場する同名の名探偵についても本記事で解説する(以下、作家名は「クイーン」、作中の名探偵名前は「エラリー」で区別する)。

概要

1928年、マンハッタンで働きながら親しく交際していたダネイとリーは、7500ドルの賞に釣られて、当時大人気だったS・S・ヴァンダインのを受けた探偵小説を書き雑誌の懸賞小説に応募。受賞はしなかったものの出版社に気に入られ、1929年、名探偵エラリー・クイーンの登場する『ローマ帽子』でデビューした。以後『フランス粉の』『オランダ靴の』とタイトル名を冠したシリーズとして刊行され、ベストセラーになる。

1932年に専業作家となり、執筆にあてられる時間が増えたことでバーナビー・ロスという別名義を作り、シェイクスピア俳優ドルリー・レーンが探偵役を務める《レーン四部作》の1作と2作になる『Xの悲劇』『Yの悲劇』を発表。この年はクイーン名義でも『ギリシャ』『エジプト十字架』を発表、ミステリー史に残る歴史傑作を4作続けて出したこの年はファンの間で「奇跡の年」と呼ばれている。当初バーナビー・ロスがクイーン別名義であることは表されておらず、またクイーン合作ユニットであることも表されていなかったので、ダネイとリーがそれぞれクイーンとロスとして覆面対談するという手の込んだ二人二役も行われた(クイーン=ロスであることは1940年に表された)。

解決編の前に読者へ推理に必要な手がかりが全てったことを宣言する読者への挑戦」という形式を確立し、フェアな論理パズルとしての本格ミステリ完成させたクイーンだったが、ダネイとリーは徐々に純論理パズルとしてのミステリに行き詰まりを感じ始め、シリーズは9作の『スペイン岬の』(1935年)でストップ。その次に出た『中途の』(1936年)あたりからは登場人物の人間ドラマも重視するようになっていく。『災厄の町』(1942年)から始まる架地方都市ライツヴィル舞台にした作品群や『九尾の』(1949年)は、中期から後期のクイーンの代表作とされる。

合作創作法は本人たちは明確にしなかったが、基本的にダネイが全体の設計図となる概を作り、リーがそれに小説として付けするという手法であったことが明らかになっている。2人は1958年の『最後の一撃』で名探偵エラリーの登場する作品は終わりにするつもりだったが、結局その後もリーの死去まで書き続けることになった(リーが執筆を担当していない作品や、名義貸しについては後述)。

小説以外では、1939年から1948年まで、名探偵エラリーが活躍する犯人当てラジオドラマ『エラリー・クイーンの冒険』の脚本を担当し、これによって全での知名度が飛躍的に上がった。ラジオドラマの脚本は短編に書きめられたものも多く、ラジオドラマの脚本集も複数出ている。
1941年からはダネイが推理小説専門誌「エラリー・クイーンズ・ミステリマガジンEQMM)」を創刊して新人作家の発掘にを注ぎ、アンソロジーの編纂で埋もれた名作の発掘にも貢献した。これらの働きから、「エラリー・クイーンはアメリカミステリそのもの」とも評されたという。

1971年、リーが死去し、小説家としてのエラリー・クイーンの活動は終了した。1982年にダネイも死去し、現在アメリカではほぼ忘れられた作家になっているが、その作品群はを隔て、日本ミステリー界にあまりにも大きすぎるを与えた。

ちなみにダネイはデビュー当時から親日で、作品にはときどきタマカ・ヒエロとかマツォユマ・タフキなる妙な)日本人名や日本人キャラが登場する。晩年には来日して、日本人作家アンソロジーを編纂したりした(『日本傑作推理12選』全3巻、1981年82年、カッパノベルス刊)。

シリーズに関して

クイーンの作品に《シリーズ》《レーン四部作》《ライツヴィルもの》といったシリーズがあることはちょっとミステリ興味のある方ならクイーンを読んだことがくてもご存じであろう。以下、それぞれどういう区分なのかを軽く説明する。

まず、大雑把な区切りとしてクイーンの作品は名探偵エラリー・クイーンもの」「ドルリー・レーンもの(レーン四部作)」「ノンシリーズ単発作品」の3種類に分かれる。クイーンの(正典とされる)長編は全部で38作あるが、このうち『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』の4作がバーナビー・ロス名義で書かれた《レーン四部作》。また、『ガラスの村』と『孤独』の2作がノンシリーズ単発作品である。つまり、残る38作中32作がエラリーの登場する作品である(エラリー自身は出てこないがリチャードクイーン役の『クイーン警視自身の事件』も便宜上ここに含む)。でもって、シリーズ》と《ライツヴィルもの》はエラリーものの内部シリーズということになる。

クイーン作品は基本的に各作品ごとに話は独立しているので、どこから読んでもさほど問題はない。ただし、《レーン四部作》はできれば刊行順に読むのを推奨する。

以下、代表的な3シリーズについて簡単に解説する。

国名シリーズ

デビュー作の『ローマ帽子』から始まる初期作品シリーズ。具体的には以下の9作をす。タイトル表記は、最も広く読まれただろう創元推理文庫旧版のもの/現行の角川文庫版のもの。()内は発表年。え?ローマ名じゃない?こまけぇこたぁいいんだよ!

  1. ローマ帽子ローマ帽子秘密(1929年)
  2. フランス粉のフランス粉の秘密1930年)
  3. オランダ靴のオランダ靴の秘密1931年)
  4. ギリシアギリシャ秘密1932年)
  5. エジプト十字架エジプト十字架秘密1932年)
  6. アメリカアメリカ秘密1933年)
  7. シャム双子シャム双子秘密1933年)
  8. チャイナチャイナ蜜柑秘密1934年)
  9. スペイン岬のスペイン岬の秘密1935年)

いずれも名探偵エラリーが活躍し、「読者への挑戦状」が(『シャム双子』を除いて)作中に入っている。また、エラリーの物語紹介者として、J・J・マックなる架の人物による「まえがき」が毎回ついている。ローマ帽子』のまえがきで、エラリーが結婚してリチャード警視や妻子とともにイタリアに隠居してることになってるのは黒歴史

クイーン作品の中でも最も知名度・評価の高いシリーズであり、クイーンって何から読めばいいの?」というときは、とりあえず『Xの悲劇』『Yの悲劇』かシリーズから読んでおけばいい。ちなみに作中の時系列で一番最初になるのは4作の『ギリシャ』だが、『ギリシャ』から読むべきかと言われるとやや疑問。

なお、日本ではニッポン(創元推理文庫での訳題、ハヤカワ文庫では日本庭園の秘密)というタイトルで出ている作品があり、かつては原題が「THE JAPANESE FAN MYSTERY」であるとされ、シリーズの10作として扱われていた。しかしこれは江戸川乱歩が広めた都市伝説で、実際の原題は「THE DOOR BETWEEN」であり(かつては「戦時中に対日感情の悪化のため題された」とか「雑誌掲載時から単行本化の際に題された」とかもっともらしく言われていたが、現在はどちらもデマとされる)、現在では『ニッポン』(もしくは『日本庭園』)はシリーズには含まれないとするのが定説である。実際、現行の角川文庫で出たシリーズには『ニッポン』は含まれていない。

その代わりなのか、現行の角川文庫版では『スペイン岬』の次に出た長編である『中途の』をシリーズに準じる作品として「シリーズプラスワン」という形で扱っている。ちなみに『中途の』のまえがきには、前述のJ・J・マックの口を借りて「なんでタイトルが『中途の』なの? 『スウェーデン寸の秘密』でいいじゃん!(大意)」というセルツッコミが入っている。

日本では有栖川有栖太田がこのシリーズに倣って名や都市名が入るシリーズを展開している。また、綾辻行人の館シリーズや、笠井潔の矢吹シリーズが全10作予定とされているのは、当時はまだ『ニッポン』を入れて全10作というのが定説だったシリーズに倣ったもの。この件について綾辻行人は「国名シリーズは全9作なのですな。「クイーンの国名シリーズに倣って全10作」と云ってきた「館」シリーズも、ならばもう9作で良いのかも、などと(笑)exit」とか冗談めかしてっている。

シリーズ最大の発明は「読者への挑戦」という形式を確立したこと、とはクイーン研究者として知られる飯勇三の弁。クイーン以前にも「読者への挑戦」があるミステリは存在したが、によればクイーンの「挑戦」は、「作中の手がかりから読者犯人を導き出せるか」と問うているのではなく、「作中の手がかりからエラリーがどう推理したのか」を読者に問うているのが画期的なのだとか。

また新保博久は、シリーズの新規性はそれまでの本格ミステリが「容疑者をある程度まで限定した中での犯人探し」を成立させるために「お屋敷での遺産相続」という形式を必要としたのに対して、クイーンや「劇場」や「デパート」や「病院」を舞台にしたことで都会を舞台に成立させたこと、と評している。ちなみにクローズド・サークルという形式の長編の最初期の作例がシリーズ第6作の『シャム双子秘密』である(アガサ・クリスティそして誰もいなくなった』より6年い)。

ライツヴィルもの

中期から後期にかけて発表された、架地方都市ライツヴィル舞台とする作品群。長編は以下の6作が該当する。いずれもハヤカワ文庫刊。

  1. 災厄の町(1942年)
  2. フォックス殺人1945年
  3. 十日間の不思議1948年
  4. ダブルダブル1950年
  5. 帝王死す1952年
  6. 最後の女1970年

こちらも全て名探偵エラリーが活躍する。ただし『帝王死す』はメイン舞台ライツヴィルではない(エラリーが物語の後半で聞き込みのためにライツヴィルに向かう)。また、短編にもライツヴィルが登場する作品がいくつか存在する。

各作品のストーリー独立しており、共通するのは舞台ぐらいで、作品内容にはシリーズのような統一感や、レーン四部作のような連続性はない。シリーズの頃よりも登場人物の人間ドラマを重視しているのは確かだが、それは中期以降のクイーン作品全体の特徴である。

なお、ライツヴィルものではない長編『九尾の1949年)は、物語の上では『十日間の不思議』の続編にあたるので、可な限り『十日間の不思議』を読んでから読んだ方が良い。だから可及的速やかに『十日間の不思議』の新訳版を出してくださいよ!お願いしますよ早川書房さん!

レーン四部作

シリーズと並行して発表された、聴を失ったシェイクスピア俳優ドルリー・レーンが登場する四部作。このシリーズには名探偵エラリーは登場しない。

  1. Xの悲劇1932年)
  2. Yの悲劇1932年)
  3. Zの悲劇1933年)
  4. レーン最後の事件1933年)

『Yの悲劇』が突出して有名なので、『Y』だけ読んだ、という人も結構いるだろうが、四部作全体を通してドルリー・レーンという名探偵物語になっているので、できれば四部作を通して読んでもらいたい(まあ、『Z』と『レーン最後の事件』は本格ミステリとしては『X』『Y』より出来が落ちるのは、クイーンファンも否定できないところではあるが……)。

日本ミステリで『○の悲劇』というタイトルがついていれば、ほぼ間違いなくこの四部作をパロったもの。静子『Wの悲劇』とか森博嗣χの悲劇』とか米澤穂信『Iの悲劇』とか。タイトルをパロっただけで中味は関係なものから、倉知淳片桐三郎XYZの悲劇』のように中味までこの四部作のパロディになっている作品までいろいろある。

ちなみにこの四部作、日本で一番最初に訳されたのは最終作の『レーン最後の事件』だったとか(訳題は『殺人事件』。戦前の話である)。なんというか、そんなムタイな。

その他の作品

上記以外の作品では、ハリウッド舞台にした『悪魔の報酬』『ハートの4』のハリウッド2部作(『ドラゴン』も入れてもいいかも)、エラリーのリチャード警視が主人公スピンオフクイーン警視自身の事件』とその続編『真鍮』などが一応シリーズ扱いできるが、特別分類する意味もあんまりない。ガラスの村』と『孤独』以外はエラリーが出てくる、とだけ覚えておけばいい。

前述の通り、基本的に話はそれぞれ独立しているのでどこから読んでも大丈夫である。まあ、いきなり中期や後期のマイナーな長編から読むのはあんまりオススメしないが……。

代作に関して

さらにちょっと本格ミステリ古典興味のある人なら、「クイーンの作品にはいくつか別の作家による代作がある」という話は聞いたことがあるだろう。エラリーが登場し、後期作品の中では評価が高い『盤面の敵』が代作というのはある種のトリビアのようにられたりする。フランシス・M・ネヴィンズによる詳細な評伝が出るまで情報がはっきりしない部分が多かったため、今でもクイーンの代作問題については、あやふやな理解の人が多いと思われる。

というわけで簡単にまとめると、クイーンの代作にはおおまかに分けて2つのパターンがあり、
1.ダネイが作ったプロットを元に、リー以外の作家が文章を担当したもの
2.ダネイもしくはリーが一応監修しているが、プロットも文章も全に別の作家によるもの(名義貸し)
とに分かれる(もうちょっとややこしいのもあるが後述)。

1に相当するのが60年代に発表された長編のうち4作で、この時期はリーがスランプに陥り、ダネイの概をもとに、2人のSF作家が執筆を担当した。『盤面の敵』ではシオドアスタージョン『第八の日』『三角形の第四辺』『真鍮ではアヴラムデイヴィッドスンが執筆を担当している。この4作については、ダネイが概を作ったことがはっきりしているため、現在ではリーが執筆を担当した他の作品と同様「正典」として扱われているようだ。漫画で例えれば作画担当が違うけど原作者は一緒だからどれも原作者による公式作品と見なして問題ないよね、ということである。

一方、2に相当する名義貸しのペーパーバックが本アメリカでは結構な数出ており(クイーン名義だけでなく、バーナビー・ロス名義のものも複数ある)、情報が少なかった時代にそのうちの1作『二ドルの死者』がクイーンの作品として他の正典とごっちゃになって早川書房から翻訳出版されていた。現在は、これらの名義貸しのうち較的評価の高い何作かが原書房から「エラリー・クイーン外典コレクション」として翻訳されているが、こっちはあくまで「外典」であり、正規のクイーン作品とは見なされない。また、「エラリー・クイーン・ジュニア」名義で出た児童向けの『ジュナの冒険』シリーズ現在角川つばさ文庫から『見習い探偵ジュナの冒険』のタイトルで2冊が出ている)も同様に全な別作家による代作。

また、1にも2にも当てはまらないややこしい例としては、ダネイ&リーの執筆によるエラリー登場パートと、他の作家による映画ノベライズとが混ざっている『恐怖の研究』がある。

「ややこしいんじゃボケ、こっちはちゃんとしたクイーン作品だけ読みたいからどれ読めばいいのかだけ教えろ」という方に簡単にまとめると、
・執筆担当がリーじゃない作品もダネイが話を作ってれば正典扱いだからこまけぇこたぁいいんだよ!
・でも『二ドルの死者』(ハヤカワ文庫HM)は全な名義貸しだから注意
・『恐怖の研究』(ハヤカワ文庫HM)を読むかどうかは各自の判断に任せる
ということである。具体的には、後述する作品リストに載ってる作品を読めば良い。

なお、短編にもリーのスランプ時期に発表されたものは別の作家が執筆を担当したものが含まれると思われるが、これはクイーン研究にもどれがそうなのか判断不能らしいので、やはり細かいことは気にしないが吉である。

日本での評価・影響力

戦前からクイーン作品は日本でも翻訳されていたが、戦前の長編ミステリ翻訳は原書から内容を大幅に省略した抄訳が中心だったため、緻密なロジックが売りであるクイーン作品の面さは抄訳ではうまく伝わらず、戦前は「長編より短編が上手い作家」みたいに扱われていたらしい。

戦後、きちんと長編が全訳されるようになると評価が急上昇。特に『Yの悲劇』は江戸川乱歩が絶賛し、横溝正史が強いを受けて『』を書くなどしたから、オールタイムベスト不動の1位として君臨し続けた。アガサ・クリスティジョン・ディクスン・カーとともに本格ミステリ黄金時代御三家とも称される。

とりわけ初期作品は純論理パズルとしての本格ミステリ完成形としてマニアの崇拝を集め、絶大なを誇った。ミステリー名探偵による論理的な(読者にも犯人摘可な)犯人当て」というイメージの形成にクイーン作品のが多大なのは間違いない。日本では本格ミステリというジャンルそのものの徴であり、本格ミステリ大賞トロフィーにはトランプクイーンデザインされている。また、作中に作者と同名の名探偵ワトソン役が登場する作品はだいたいクイーンである。

有栖川有栖法月綸太郎など新本格ムーヴメントの中心作家が強を受けていたこともあり、21世紀の現在に至るまで日本では本格ミステリ神様としてその作品群が読み継がれている。単に読み継がれるだけでなく、クイーン作品は幾度となく評論・研究の対として様々に分析され、いわゆる「後期クイーン的問題」(「名探偵」の記事を参照)をはじめ、新本格以降の日本の本格ミステリに強いを与え続けている。

新本格以前は、クイーンは初期から晩年までダイイングメッセージを多用したことがよく特徴として挙げられ、都筑夫のようにその点について批判する評論家も多かった。新本格以降は「後期クイーン的問題」の方が重要視されるようになったためか、「クイーンと言えばダイイングメッセージ」とはあんまり言われなくなっている。

ちなみに日本国内では『Yの悲劇』が最も人気が高いが、本アメリカを含め海外では『Y』の評価はそれほど高くない。最も人気が高いのは『災厄の町』で、レーン四部作では『Xの悲劇』が最も評価が高いようだ。シリーズ日本でも海外でも『ギリシャ』と『エジプト十字架』が2強の模様。

で、どれを読めばいいの?

2020年現在では、越前敏弥訳のシリーズとレーン四部作が2009年から2015年にかけて角川文庫から出ており、たぶんこれが一番読みやすい(越前クイーンは他にハヤカワ文庫から『災厄の町』『九尾の』が出ている)。創元推理文庫からは2011年から中村有希訳のシリーズスローペースで刊行中で(2020年9月現在、9年かかってまだ9作中6作までしか出ていない)、レーン四部作は今となっては古めかしい1950年代に訳された鮎川信夫訳がまだ現役。

青田勝訳でハヤカワ文庫から出ていた中期~後期作品はほぼ品切れなので、古書店をあたろう。名義貸し作品を除けば、クイーン小説は全て邦訳され本になっているので、古書を探す苦労さえ厭わなければ、未訳作品の存在にがみする心配はない。

クイーン作品は論理的な推理はすごいけど話は地味で面くない」と言われがちで、実際ハラハラドキドキのサスペンス性やおどろおどろしい怪奇趣味などを期待して読むと残念な気持ちになる可性が高い。地な捜による手がかり集めを退屈に感じる人は、較的話が手な『エジプト十字架秘密』や『シャム双子秘密』あたりから読むのもいいかもしれない。あと『Yの悲劇』は有名作だけに思わぬところでネタバレされがちなので、なるべくネタバレを踏まないうちに読んでおきたい。

名探偵エラリー・クイーン

コナン・ドイル名前を知らない人でもシャーロック・ホームズ名前は知っている」ので名探偵作者と同名にすれば自動的に作者名も覚えてもらえる」という理論で生み出された作者と同名の探偵

広辞苑ではが書いたのか「初期の作品シリーズ主人公」とか書かれているが、前述の通り、実際はクイーンの正典38長編のうち31作、第1作から最終作までほとんどの作品に登場する。次の訂では直してくださいよ岩波書店さん。

本業は推理小説で、父親リチャードクイーン警視や、従卒のジューナ(途中でフェードアウト)とともに暮らしている。決め台詞は「Q.E.D.明終わり)」。シリーズで多数の作品に登場する名探偵は歳をとらないことが多いが、エラリーは全く歳をとらないわけではなく、『最後の一撃』の終盤では老年にさしかかったりしている。とはいえ年齢設定は曖昧。

初期は気取った引用癖やもったいぶった推理からいけすかない若者というイメージが強いが、中期作品以降では事件関係者とロマンスを繰り広げたり、犯人に自分の推理を利用されて深く苦悩したりと人間味が増していく。その一方で推理は衰えていく。

いくつかの長編とラジオドラマなどではニッキー・ポーターという秘書がいるが、クイーンニッキーには全く着がなかったようで、登場するたび容姿やエラリーとの関係などの設定がコロコロ変わる(たとえば初登場作ではそのままエラリーのになりそうな展開だったが、その後は特にそんなことはなかったかのようである)。ジューナは『ニッポン』を最後に登場しなくなるが、彼を役にした(名義貸しの)児童向けシリーズ《ジュナの冒険》が発表された。

ミステリー歴史において代表的な名探偵のひとりだが、エラリーがシャーロック・ホームズエルキュール・ポワロほどの一般的知名度がないのは、映像化のヒット作に恵まれなかったためか(映画化は何度かされているが、クイーンの理屈っぽい作映像化と相性が悪いようで、どれもあまり評判がよくない)。

作品リスト

名義貸し、アンソロジーなどはめんどくさいので除く。そっちのリストWikipediaでも見てくださいexit

長編(正典とされるもの)

  1. THE ROMAN HAT MYSTERY (1929) ローマ帽子
  2. THE FRENCH POWDER MYSTERY1930) フランス粉の
  3. THE DUTCH SHOE MYSTERY1931) オランダ靴の
  4. THE TRAGEDY OF X (1932) 『Xの悲劇』 ※バーナビー・ロス名義
  5. THE GREEK COFFIN MYSTERY1932) ギリシア
  6. THE TRAGEDY OF Y (1932) 『Yの悲劇』 ※バーナビー・ロス名義
  7. THE EGYPTIAN CROSS MYSTERY1932) エジプト十字架
  8. THE TRAGEDY OF Z (1933) 『Zの悲劇』 ※バーナビー・ロス名義
  9. THE AMERICAN GUN MYSTERY1933) アメリカ
  10. DRURY LANE'S LAST CASE1933) 『レーン最後の事件』 ※バーナビー・ロス名義
  11. THE SIAMESE TWIN MYSTERY1933) シャム双子
  12. THE CHINESE ORNGE MYSTERY1934) チャイナ
  13. THE SPANISH CAPE MYSTERY1935) スペイン岬の
  14. HALFWAY HOUSE1936) 『中途の
  15. THE DOOR BETWEEN (1937) ニッポン(『日本庭園の秘密』)
  16. THE DEVIL TO PAY (1938) 悪魔の報酬』
  17. THE FOUR OF HEARTS (1938) ハートの4』
  18. THE DRAGON'S TEETH (1939) ドラゴン
  19. CALAMITY TOWN (1942) 『災厄の町』
  20. THERE WAS AN OLD WOMAN1943『靴に棲む老婆』(『生者と死者と』)
  21. THE MURDERER IS A FOX (1945) フォックス殺人
  22. TEN DAY'S WONDER (1948) 『十日間の不思議』
  23. CAT OF MANY TAILS (1949) 『九尾の
  24. DOUBLE, DOUBLE (1950) ダブルダブル
  25. THE ORIGIN OF EVIL (1951) 『悪の起
  26. THE KING IS DEAD (1952) 帝王死す』
  27. THE SCARLET LETTERS (1953) 『緋文字
  28. THE GLASS VILLAGE (1954) ガラスの村』
  29. INSPECTOT QUEEN'S OWN CASE (1956) クイーン警視自身の事件』
  30. THE FINISHING STROKE (1958) 『最後の一撃』
  31. THE PLAYER ON THE OTHER SIDE (1963) 『盤面の敵』 ※執筆はシオドアスタージョン
  32. AND ON THE EIGHTH DAY (1964) 『第八の日』 ※執筆はアヴラムデイヴィッドスン
  33. THE FOURTH SIDE OF THE TRIANGLE1965) 三角形の第四辺』 ※執筆はアヴラムデイヴィッドスン
  34. FACE TO FACE1967) 『顔』
  35. THE HOUSE OF BRASS1968) 真鍮 ※執筆はアヴラムデイヴィッドスン
  36. COP OUT (1969) 孤独
  37. THE LAST WOMAN IN HIS LIFE (1970) 『最後の女』
  38. A FINE AND PRIVATE PLACE (1971) 『心地よく秘密めいた場所』

短編集(邦訳のあるもの)

  1. THE ADVENTURES OF ELLERY QUEEN (1934) 『エラリー・クイーンの冒険』
  2. THE NEW ADVENTURES OF ELLERY QUEEN (1940) 『エラリー・クイーンの新冒険』
  3. CALENDAR OF CRIME (1952) 犯罪カレンダー
  4. QBI: QUEEN'S BUREAU OF INVESTIGATION (1955) クイーン検察局』
  5. QUEEN'S FULL1965) クイーンフルハウス
  6. QED: QUEEN'S EXPERIMENTS IN DETECTION (1968) クイーン犯罪実験室』
  7. THE TRAGEDY OF ERRORS (1999『間違いの悲劇』

上記以外の小説

ラジオドラマの脚本集

最初の2冊は"The Adventure of the Murdered Moths and other Radio Mysteries"(1945)の分冊。3冊"The Adventure of the Crime Corporation and other Radio Mysteries"(1945)から。全て論創社刊、文庫化はされていない。

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