93式近距離地対空誘導弾 単語


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93式近距離地対空誘導弾とは、陸上自衛隊に配備されている地対空ミサイルSAM)である。

防衛省内での略称を「SAM-3」、隊内では「近SAM」とよばれる。
尚、愛称の「クローズドアロー」が無視されるのはいつものこと・・・

概要

高機動車の後部キャビンに、8発の91式携帯地対空誘導弾携SAM)を装備したランチャーターレットを搭載したシステム。射程は短いが1台で完結しているためレーダー揮管制などの車両や煩雑な準備が必要なく小回りが利くメリットがある。

ランチャーターレットのサイトには可視TVカメラIRセンサーレーザー発振器、レーザー部を装備している。中央頂部の網状のものはIFF(敵味方識別装置)。

射撃班は3名で編成される。

ランチャー、班長、発射手はそれぞれ距離を置いて配置に付き、それぞれの装置はケーブルで接続される。射撃統制コンソールは普段は助手席にセットされており、内から操作することも一応は可

近接防火器という性格上レーダー等は搭載されておらず、班長は視で標を捜索する。標を発見すると標諸元を測定して射撃統制コンソールに送信、それを受けて発射手がコンソールを操作しランチャー標に向け、TVカメラIRセンサ標を捉えた後、ロックオンしてミサイルを発射する。

近SAMはDADS(師団対情報処理システム:79式対レーダーを中心として、敵味方の航空機情報を高射大隊の各対火器に送信するデータリンクシステム)のネットワークには組み込まれていないが、情報のやり取りは可で、データリンク用のアンテナターレット後部に装備されている。

開発

陸上自衛隊では防用近距離火器として、スイスの老舗機関メーカー・エリコン社の「35mm2連装高射機関 L-90」を配備していた。L-90は「レーダー射撃統制装置」と「定機」で構成された射撃統制システムスーパーレーダーマウス」を機関に組み合わせており、これらのシステムに制御されたL-90の命中率は当時としては驚異的であり、陸上自衛隊高射特科部隊の代表的火器であった。

しかし、開発当初は驚異的な性を誇ったL-90だったが、技術の進歩と戦場の高機化につれて陳腐化したため、後継となる近距離装備を開発することになった。

93式SAMは個人携帯地対空ミサイルスティンガー」(→FIM-92)と汎用輸送ハンヴィー」を組み合わせた陸軍の近距離システムアベンジャーシステム」と同様に、既存の個人携帯対空ミサイルと汎用車両組み合わせることで開発期間の短縮を図り、1987年から研究1990年から開発を始め、1993年に制式採用、その翌年に部隊配備となった。

参考にしたアベンジャーではスティンガーの最近射程以内に入った標と交戦するために12.7ミリランチャーと同軸に搭載しているが、93式にはこれがないので、200m以内に不意に現れた標には対処することはできない。[1]

その他

93式SAMシステムは1両で完結しており、5両1セットでいずれも牽引式だったL-90より機動性、即応性が向上している。これだけなら陸軍アベンジャーシステムと大差ないが、93式近SAMはこれを駕する機を持っている。

一般的にアベンジャーなどの車載距離対空ミサイルシステム指揮官と射手の2名で運用し、指揮官標を発見したらその方向を射手に示し、射手はその方向示に従い発射機を向けて発射する。

だが、射手は示を基にカメラ映像を見ながらジョイスティックなどで発射機を操作しなければならないため、近距離という即応性がめられる状況でも、元の個人携帯対空ミサイルより即応性が落ちているといわざるをいえなかった。

そこで、防衛省技術研究本部面妖な変態技術者は考えた。

ジョイスティックで動かすのが面倒なら、指揮官が見た方向に直接発射機を向けられるようにすればよくね?」

と言ったのかは定かではないが、かくして93式SAMには近SAMとしては初の視照準器が装備されることとなった。

視照準器を使用するには、使用する隊員(通常は指揮官である班長)のヘルメット視照準装置を装着し、コントローラーを首から下げる。班長は外で標を視で捜索し、射手は射撃統制コンソールを操作する。そして、いざ班長が標を発見した際は、標を見つめたまま手元コントローラーボタンを押せば、発射機が自動で時に標を向き射撃態勢に入る。そして、射手は発射機の先にいる標を可視カメラまたは赤外線センサーで確認したら、コンソールジョイスティックに付いた発射ボタンで発射する。これにより、発射時の即応性を向上させることが可となった。もちろん、前述の通り射手がジョイスティックで操作し発射する事も可である。

駐屯地の一般開放などの展示で体験させてくれることもあるので、ぜひ一度体験してみて欲しい。
自分が向いた方向にランチャーウィンウィン動くのは結構楽しいぞ!

調達と運用

これら高性な機を有した93式近SAMは、まあ自衛隊の装備調達では毎度のことではあるものの、諸外の同等装備品にべて1式:5億5000万円~9億5000万円という高額な調達価格となってしまった。

そして2008年までに、高射教導隊をはじめとする全の高射特科部隊に合計113セット配備されてた後、2018年から編成が始まった『即応機動連隊』の本部管理中隊に小隊規模で配置換えが行われている。

近SAMで更新されたL-90は、2010年3月に最後の部隊から退役している。[2]

関連動画

関連コミュニティ

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関連リンク

関連項目

陸上自衛隊の地対空ミサイル

脚注

  1. *日本の防衛力再考」兵頭二十八 銀河出版 1995
  2. *機関砲から眺める航空兵器の脅威 陸自「L-90」高射機関砲が臨んだ実戦待機とは(写真12枚)exit
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