Pentium 4とは、Intelが展開していたCPUのブランド名である。
x86系の第七世代であり、Netburstマイクロアーキテクチャを採用した最初のCPUである。
概要
2000年に発表された。ダイの設計により5つの世代に分かれる。
特徴
効率を多少落としてでもその分爆速でぶん回せば性能は上がる、という富豪的な発想で作られたアーキテクチャ。一般にCPUの実行効率を高めるのは大変でトランジスタを必要以上に食うため、なるべく全体をコンパクトにまとめたい思惑もあってこうなったらしい(実際Pentium 4のダイサイズは最初から小さめで量産に有利だったとのこと)。「クロック高い方がマーケティング上凄そうに見えるから」という意見もあるが、これは売り方が結果的にそうなったというだけで、技術的な背景はちゃんとしたものである。
最初から効率は捨てる方向を取っているため、同クロックの性能では先代Pentium IIIよりも落ちる。その代わりクロック数が最初からかなり高く、第2世代で早くも3GHz超えを達成。最終的に4G, 5GHz超えを目標として高速化路線をひた走っていた。
ところが、同時期に問題となり始めていた半導体微細化による電流漏れの影響がIntelの予想を超えて深刻化。4GHz超えなんぞしようもんならCPUが溶けるんじゃねえかという程の発熱となってしまい、電力食うわ性能上がらんわの仏滅アーキテクチャ扱いされるようになる。ライバルのAMDが設計を真逆に振ったAthlonシリーズで大躍進したこともあって、Intelは一時期かなりヤバイところまで追い込まれてしまった(Macの人にしか関係ないが、「PowerPCは超効率いいぜヒャッハー!」と煽りネタにもされていたり)
結局Intelも次の世代からは効率重視の設計に方向転換し、クロック数はPentium 4よりずっと低い数字で動作するようになる。製造技術の向上で同じクロック数を出せるようになるのは、アーキテクチャ3つ先のSandy Bridge(のターボモード)からだから、どんだけ無茶な計画だったか分かろうというもんである。
- Willamette
- 2000年11月に発売されたPentium 4前期の第1世代。
製造プロセス0.18μm、FSB400MHz、動作周波数1.3~2.0GHz、TDP48.9~75.3W。
全モデルの製品名が単純な周波数表記。
- NetBurstアーキテクチャの特性上、P6アーキテクチャ(Pentium Pro/II/III)に最適化されたソフトでは演算効率が低下するという問題があり、条件によっては先代であるPentium III(Tualatin)の同周波数品に敗れる場合があった。また、当初IntelはSocket423を採用し、i850と組み合わせることによりRDRAM RIMMの普及を狙っていたが、コストが高いことを理由に市場に受け入れられなかった。
これらの問題から発売当初の評判はよくなかったが、前者の問題はTualatinを大幅に上回る周波数の製品を投入することにより、後者の問題はRDRAM普及を断念してSoket478とi845の組み合わせへ移行することにより、それぞれ解決し、Northwoodの登場までそれなりに成功を収めている。
- Northwood
- 2002年1月に発売されたPentium 4前期の第2世代で、通称「北森」。Willametteの製造プロセスを微細化したもの。
全製品がSocket 478で、製造プロセス0.13μm、FSB400~800MHz、動作周波数1.6~3.4GHz、TDP38~89W。
製品名は周波数表記だが、新旧製品区別の為、FSB400MHz版のうちWillametteと周波数が被っているものは周波数の後に"A"、533MHz版で400MHz版と被ったものは"B"、800MHz版で533MHz版と被ったものは"C"が付けられている。わかりにくい…
- 競合するAthlon XP(Thoroughbred/Barton)に対して終始優位を保ったPentium 4黄金期の世代であり、「Pentium 4=北森」というイメージを持つ人もいる。特に後期のFSB800MHz版はPrescott発売以後も性能と発熱の良好なバランスから根強い人気を持っていたが、2005年3月に惜しまれつつ製造終了した。対応するチップセットは初期がi845シリーズ、中期以降はi865シリーズとi875シリーズ。
FSB800MHz版の一部製品ではHyper-Threading Technology(HT)が利用可能となった。しかし一般用途では効果を実感できる場面が極めて少なく、デメリットもNetburstの設計上大きかった。結果として悪評が定着してしまい、後のNehalemやAtomといったより高度なHTが実装されたCPUでも多くのユーザーが忌避する結果となり、この世代から導入された技術であるということ自体が忘れ去られつつある。
- Prescott
- 2004年2月に発売されたPentium 4後期の第1世代。
Socket 478とLGA775の二種類が存在し、製造プロセス90nm、FSB533~800MHz、動作周波数2.66~3.8GHz、TDP84~115W。
Socket 478版は製品名が周波数表記で、Northwoodと区別する為周波数の末尾に"A"又は"E"が付いている。LGA775版からは現在一般的なプロセッサ・ナンバーが導入された。Prescottは500番台で、末尾がが"0"又は"5"なのが初期版、"0J"又は"5J"がメモリ保護機能「XD Bit」を有効化した中期版、"1"又は"6"(同周波数の初・中期版より数字が1大きい)がx86-64関連機能が有効化された後期版である。
- 当時クロック周波数至上主義に傾倒していたintelは、キャッシュメモリアクセスの高速化やパイプラインステージ数の更なる増加など更なる高クロック特化の設計をPrescottで行った。しかし量産段階になって、そのような設計はIntelの90nmプロセスとの相性が悪いことが判明し、消費電力と発熱がNorthwoodからの性能向上に全く見合わないほど増加。ユーザーからの不評を買って人気がAthlon 64(Clawhammer/Newcastle)に流れ、Core2シリーズが登場するまでのIntel低迷の序章となった。対応チップセットはSocket478版がi865/i875、LGA775版がi915/i925/i945/i955/i965。
- Prescott-2M
- 2005年2月に発売された、Prescottの2次キャッシュを2MBに倍増した派生版。
- LGA775のみ、製造プロセス90nm、FSB800MHz、動作周波数2.8~3.8GHz、TDP84~115W。
プロセッサ・ナンバーは600番台。一の位は通常版が"0"で、仮想化支援機能を有効にした製品は"2"となる。
Prescottを大幅拡張してさらに高クロック化・HT高度化を目指したTejasが急遽開発中止となり(4~5GHzを前提とする設計にもかかわらず2.8GHzの試作品が消費電力120W台になるなど、実用に耐えないことが判明したためとされる)、穴埋めとして、Xeon用にPrescottを強化したダイであるIrwindaleを流用した。対応チップセットはLGA775版Prescottと同じ。
EISTによる低負荷時自動ダウンクロックなどで省電力機能が若干強化されたが、設計と製造プロセスのミスマッチを克服するには遠く及ばず、性能向上幅も僅かで、順調に性能を上げたAthlon 64(Winchester/San Diego/Venice)に対する劣勢は変わらなかった。
- CedarMill
- 2006年1月に発売された、後期第2世代にして最後のPentium 4。Prescott-2Mを微細化したもの。
- LGA775のみ、製造プロセス65nm、FSB800MHz、動作周波数3~3.6GHz、TDP65~89W。
プロセッサナンバーは600番台で、一の位は"1"。
後期Pentium 4最大の弱点である発熱が大幅に改善され、ようやくNorthwoodの正統後継と言える仕上がりとなったが、性能はPrescott-2Mと全く変わらなかった。Athlon 64には性能で未だ及ばず・抜本改善の成ったCore 2発売間近と既に時機を逸しており、ラインナップ展開の都合上周波数も抑えられ、注目されることのないままPentium D・Core2によって低価格帯に押し込められ消えていった。対応チップセットはLGA775版Prescottと同じ。
歴代Pentium 4の中で最も不遇なCedarMillであるが、実は高周波数を特徴とするNetBurstアーキテクチャと65nmプロセスの組み合わせにより、非常に高いオーバークロックポテンシャルを持っていた。特にキャッシュ削減版のCeleron D(CedarMill-V)は安くて流通量が多いことから優良個体の選別も容易で、液体窒素等を用いた競技OCでは8GHz超えを連発して大ブームを巻き起こし、2011年にAMD FX(Zambeziコア)が登場するまで到達クロックの世界記録を長期に保持し続けた。
- Tejas
- 知る人ぞ知るPrescottの次に採用される予定だった製品。定格での4GHz駆動やAMD64とは全く別の64bit拡張機能の独自搭載などでAMD64で躍進するAMDの勢いを止めたかったらしい。しかし発熱がPrescott以上でとてもサーバでもないPCへの搭載は不可能だったことと、64bit拡張機能についてAMD64を採用しているOSベンダーからかなり嫌われたことで開発中止となった。特にx86のエミュレーションの実装が予定より大幅に貧弱な上、OSやソフトウェア開発の難易度が高いItaniumで煮え湯を飲まされたMicrosoftは独自の64bit拡張機能の話に激怒。当時開発中だったAMD64対応の64bitWindowsに水をさされてはたまらないとIntel会長にビル・ゲイツ自ら電話でいいかげんにしろと抗議したとか。
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