オーバークロックとは、主に自作PCにおいて、CPUなどを定格の周波数よりも高い周波数で動かす行為である。通称OC。OCを常習的に行う人のことを、「オーバークロッカー」と呼ぶ。
なお、メーカー保証外の行為のため、オーバークロックを行ってCPUなどが全損しても一切救済措置はない。
単純に言えば「オーバークロック」とは、CPUなどが定格動作周波数を超える周波数で動くよう、BIOSの設定を変更することである。
CPUの動作原理については他記事やWikipediaに譲り解説するとして、たとえば「最高4GHzの周波数(クロック)上限に設定され売られているCPUを、たとえば5GHzで動作させる」ようなことである。ただし4GHzのCPUを5GHzにオーバークロックしても単純に性能が5/4=1.2…倍になる、というわけではない。CPUの性能は単純に周波数に比例するわけではなく、処理を行う「コア」がいくつあるか、ストレージやメモリ等のスペックによるレスポンスの違いなど複数の要因で決まるからだ。
オーバークロックの醍醐味は、なんといっても「通常使用では得られない、秘められたパワーを引き出せる」というところにある。かつては高価なCPUを買うよりも、廉価なCPUを買ってオーバークロックをした方が大幅にパフォーマンスに優れるということもあった。特に2000年代初頭には1万円や2万円のCPUが5万円、6万円するCPUを抜かすこともあり、特にPentium IIからPentium IIIの時代にかけてオーバークロッカーが急増した。
で、オーバークロックの旨味は少なくなっている。また
オーバークロックは、一言で言えば発熱との戦いだ。オーバークロックに耐えうる強力な冷却性能が必要である。高性能なCPUクーラーは必需品で、CPUボックスの標準添付品よりずっとデカいヒートシンクを備えたものや、簡易水冷装置、ペルチェ素子の入ったクーラーなどがある。ここまで程度なら最近は敷居が低く、多少自作PCに通じるだけでも運用できる。重症なオーバークロッカーたちは自前で一から組み立てた本格水冷装置を使うことも多く、あっちの世界に逝ってしまわれたクロックの亡者たちは液体窒素を持ち出し始める。ここまで来ると、もはやオーバークロックに取りつかれあちらの世界へ逝ってしまわれたと言わざるを得ない(誉め言葉)。
CPUは、処理を行う内部の本体部分を、ヒートスプレッダ(放熱のための金属板)で包み込んだ構造になっている。そのため、もともとあるヒートスプレッダを強引に外し、より熱伝導性の高い物質で覆うという、通称「殻割り」という行為もある。保証対象外となるのは言うまでもなく、失敗すればCPU自体を自らの手で物理的に壊し二度と使えなくするおそれすらある。それでも、オーバークロッカー達はCPUの殻を次々と割り、強靭な冷却用アーマーで武装することをあきらめないのだ。
オーバークロックするのは何もCPUだけではなく、メモリなどもオーバークロックの対象になる。かつてはCPUをオーバークロックするためにはシステム全体のオーバークロックが必須条件で、メモリなどもあわせてオーバークロックすることが多く、単体で話題になることが少なかった。現在は比較的容易にメモリを独立してクロックアップすることも可能だ。ただし,CPUをオーバークロックするのに比べ、高いリスクに見合った高い効果が得られるとまでは言えない。
グラフィックボードのGPUもCPU同様にオーバークロックが可能だが、市販のグラフィックボードは既にオーバークロックされた状態で販売されている製品も少なくなく、(リファレンスモデルよりオリジナルモデルの方がデカくてファンの数が多いのはその為)CPUほど大胆なオーバークロックは求められない場合が多い。
グラフィックボードやメモリをオーバークロックする時も、CPU同様に冷却に気を遣わなければいけないのは言うまでもない。ただしグラフィックボードの冷却性能強化は、CPUに比べて難易度が高い。(最近のグラフィックボードはデフォで2スロット以上のヒートシンクが装備されており、水冷化するのでなければ強化する必要は薄いが・・・)
オーバークロックはパーツに負荷をかける行為である。マザーボードの仕様や動作に最適な電圧など、様々な動作原理を理解している必要がある。また自己責任であり、できないようならやめておいた方が良い。
クロックを速くすればするほどCPUの要求する電圧は高くなり、安定性も失われていく。クロックや電圧が高すぎると計算に支障が出始めOSが起動しなくなったり、起動しても高負荷時にブルースクリーンが出やすくなる。通常使用では起こらないような高熱を帯びたりし、最悪の場合はCPUが壊れて起動できなくなったり、発煙・発火に至ったりする。このため、オーバークロックをする場合は通常使用時に比べ、きわめて強力にCPUを冷却する必要がある他、メモリやマザーボードなどのパーツも高負荷に耐えられるものを慎重に選ばなければいけない。当然初心者にはお勧めできない。ついでに言うと寿命も通常使用時と比べて短くなる事も頭に入れておくといいだろう。
オーバークロッカーは、CPUを「力を秘めた宝石」になぞらえ「石」と呼ぶ。オーバークロックには、「石」がどれだけの力を秘めているのか試すというバクチ的側面も多分にある。個々のCPUによって発揮できる力にはバラつきがあるのだ。
もっと踏み込んで言うと、「同じ商品名だが動作周波数だけ異なるCPU」が型番違いとして販売されている(たとえばIntelの第8世代Core i5なら8400、8500、8600、8600Kがある)が、これらは実は製造段階では区別されていない。全く同じように造られつつ、どうしても性能には生まれつきん歩バラツキが生まれてしまい、たまたま持った性能によって「少ない電力で高速処理が行える優秀な個体たち」をオーバークロックを見据え高い周波数上限の設定された最上位モデルに、「同じ処理により多くの電力を要するやや劣る個体たち」を控えめな周波数の下位モデルに、それぞれ刻印して売っているだけなのだ。
つまり、同じ品番のCPUの中にも「上位寄り」の個体と「下位寄り」の個体とがあり、「上位よ寄り」の個体は「アタリ石」、「下位寄り」の個体は「ハズレ石」があるのだ。「アタリ石」だと数倍の周波数で動かせるが、「ハズレ石」だとちょっとOCするとすぐ不安定になるということもある。ただし、以前に比べるとこのバラツキ自体はかなり小さくなっている。かつては「製造週」「原産国」も重視された、現在は製造国によるバラつきはかなり減っているようだ。
オーバークロッカーは、オーバークロックに魅入られオーバークロックにすべてを捧げる人のことだ。
液体窒素を持ち出すような域に達すると、もはやオーバークロックは性能向上の手段というよりオーバークロックそのものが目的であり、いかに高速で動作させられるかを競う競技の様相を呈している。実際、秋葉原等でオーバークロックの大会が開かれることもよくあり、中にはAMDなどの(オーバークロックを保証対象外としているはずの)CPU会社が大会を開くことさえある。ジャンキーたちは新CPUの発売とあらば、最も早く売り出される秋葉原に徹夜してでも乗り込み、数万~十数万円もする高価なCPUを惜しげもなくオーバークロックしまくる。
一歩間違えればCPUが即死し(だけで済めば良いのだが、最悪他のパーツや家屋、人的被害がでることすらあるとか……)、当然メーカー保証の対象にもならない。一般人から見れば札束を火にくべるがごとく映るが、オーバークロッカーにとってそれらはさしたる問題ではないらしい。世界的に活躍する日本人オーバークロッカーも存在し、たびたび日本から世界記録が生まれている。
一般的には瞬間最大風速的な(数秒でも動けば良いというレベルの)周波数ではなく、少なくとも数分間のベンチマークを一周できる程度の安定動作を実現しなければ重要な記録とは見なされない。オーバークロックをウリにしているマザーボード会社なども存在し、著名なオーバークロッカーはたびたびメーカーから製品の提供を受けて「世界記録」にチャレンジしている。
オーバークロックは自己責任の行為だ。基本的には自力で方法を調べ上げられ、理解でき、「何があっても自己責任」と覚悟ができる人でなければやめておいた方が良い。「質問して教えてもらった通りにやったら失敗した」となれば、教えた方も後味が悪くなる。
具体的な方法はあえて提示しないが、(BIOS/UEFI辺りがヒントである。)オーバークロックの難しさとは、
の2つのせめぎ合いだ。よって、やることもただひたすら電圧と周波数の上げ下げと、ベンチマーク(CPU温度と安定動作の確認)との繰り返しだ。なお以下の方法は、近年主流となっているCPU動作倍率の変更を前提としている。
オーバークロック自体はどのCPUでもできるため、ここでは記憶と記録に残るCPUを紹介する。
掲示板
21 ななしのよっしん
2017/12/24(日) 14:16:07 ID: J4K5uU7d+N
今でもダブルグリスバーガーなの?
ゲームやるなら殻割りしたほうがいいってこと?
22 ななしのよっしん
2019/11/20(水) 20:08:02 ID: 8OGon1nP92
今はもう3Dゲームするのに殻割が必要なくなり、OCしなくても問題ないくらい優秀なCPUが増えた。
2019年現在、オーバークロックの敷居は驚く程低くなった。デフォルトでオーバークロック領域定格クロックを持つIntel Core i9-9900KSも登場。しかし今はAMDのCPU「Ryzen」が圧倒的性能なのでIntelは玉座を奪えないでいる。
23 ななしのよっしん
2020/04/02(木) 11:37:49 ID: VlPeJz+/Vc
いや、9900KSは選別でデフォルトOCされてるもんだしむしろOCして遊ぶもおもちゃだと思うんだけど 同時にIntelも1回まで無償交換のOC保証始めたし
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最終更新:2024/11/28(木) 01:00
最終更新:2024/11/28(木) 00:00
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