自責点単語

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自責点とは、野球において投手責任とされる失点のこと。防御率の計算に用いられる。

概要

野球ルールの中でもかなりややこしい部類に入るものであり、誤解も非常に多い。

大雑把に言えば、投手の失点のうち、エラーが絡んだ分を除いた失点」が自責点である。しかしこの「失点」というのもくせ者であり、これまた誤解している人が非常に多い。なのでまず「失点」と「自責点」の関係から説明する。

「失点」と「自責点」

野球記録の原則として、投手Aの出した走者の生還による失点は、原則として投手Aの失点」となる。

たとえば、以下のような状況がプロ野球では非常によく見られる。

投手Aがヒット四球で走者2人を残し、投手Bに交替
→ 投手Bが後続の打者に二塁打を浴び、相手に2点が入る
→ その後、投手Bは後続を断つ。

この場合、投手Bの2失点」だと認識している人が非常に多い(スポーツ記者にすら稀に居る)が、これは誤解である。この場合は、投手Aの失点2、自責点2」となるのが正しく、投手Bには失点も自責点も記録されない。

このため、走者のいる状況で登板し、前任者の走者を生還させたあと、自分の出した走者は返さず抑えるため防御率が良いリリーフ投手とは言わない)は防御率詐欺ファンから揶揄される。

つまり、端的にまとめれば「失点」とは「その投手が許した走者が生還した数」であり、「自責点」は前述の通り「失策絡みを差し引いた失点数」である。投手Aに失点はつかないが自責点はつく」という状況は記録上あり得ない記録上においては、必ず失点≧自責点である。くれぐれも誤解のいように注意されたい。

自責点がつかない場合

では、自責点がつかない場合とはどんなものか。

失策によって出塁した走者の場合

まず第一に、失策(捕逸、打撃妨守備妨害を含む)によって出塁した走者による失点は自責点にならない。また、ファウルフライ落球後に安打などで出塁した走者による失点も自責点にはならない。要するに、「失策がなければ出塁しなかった走者」による失点は、自責点とはみなされない。

たとえばこんな状況である。

投手Aに対し、走者で打者Bはファウルフライを打つが捕手が落球。その後打者Bはセンターヒットで出塁。
→ 続く打者Cはサードゴロとなるが、三塁手の悪送球で出塁。死1、3塁となる。
→ 続く打者Dがホームラン。3点が入る。

この場合、投手Aは3失点だが、自責点は打者Dの得点による1点だけである。

塁上にいた走者が失策によって生還した場合

次に、たとえばこういう状況である。

投手Aは、一死走者から打者Bにヒット、打者Cに四球を許し一死1、2塁となる。
→ 続く打者Dは正面のサードゴロとなるが、サードがこれを後逸。二塁走者Bがその間に生還、1点が入る。
→ 続く打者E、打者Fを三振に打ち取り、スリーアウトチェンジ

この場合、失策がなければ得点にならなかったと記録員が判断すれば、投手Aの自責点とはならない。

塁上にいた走者が失策による進塁がなければ得点しなかったと思われる場合

上とほぼおなじ。例えばこういう状況である。

投手Aは、走者から打者Bに二塁打を許し死2塁となる。
→続く打者Cのサードフライサードが落球し、死1,3塁となる。
→続く打者Dが安打を打ち、B(3塁走者)が生還。

この場合、失策による進塁がなければ得点にならなかったと記録員が判断すれば、投手Aの自責点とはならない。
基本的に走者の進塁数=打者の進塁数で判断する(この場合打者Dの進塁数は1なので走者Bは失策がなければ本塁まで帰れず3塁止まりだったと判断され、自責点にならないのが普通。つまり、打者Dが2塁打以上なら自責点となる)。
この「たられば」のような考えは野球ではあまりしないので間違えている人が多い。

失策がなければチェンジ(3アウト)になっていたと思われる場合

最後に、こういう状況がある。

(例1)
投手Aは、打者Bと打者Cを打ち取り二死とするが、打者Dのセカンドゴロを二塁手が後逸し、二死1塁となる。

→ 続く打者Eにヒットを打たれ、二死1、2塁となる。
→ 続く打者Fがホームラン。3点が入る。

(例2)
投手Aは、打者Bを打ち取るが打者Cに安打を打たれ一死1塁となる。
→続く打者Dのセカンドゴロを二塁手が後逸し、一死1、2塁となる。
→続く打者Eを三振に打ち取り二死1,2塁となる。
→ 続く打者Fがホームラン。3点が入る。

この場合、打者Dのセカンドゴロで失策ければチェンジ(3アウト)になっていたと見なされるため、投手Aの自責点はである。この後投手Aがそのイニング間に何失点しても、自責点がつくことはない。ただし、投手Aが別の投手に交代した場合は、交代後の投手は失点すると自責点がつく。

この状況においては、大量失点したにも関わらず自責は0ということが起こりうる。現実にあった例としては、2007年4月1日楽天vsオリックスにおいて、オリックス吉井理人が3回裏に二死1、2塁から味方の失策満塁とされ、ホセ・フェルナンデス満塁本塁打を浴びた。さらにそこから3連打で再び満塁とされ、山崎武司にも満塁本塁打を被弾。その回合計で8失点を喫したが、自責点は0という記録が生まれた。

また2009年9月11日ソフトバンクvs楽天では、3-1の2点リード登板した馬原孝浩が、二死からホセ・オーティズ失策が絡んで同点とされ、さらに鉄平満塁本塁打を被弾し計6失点したが、自責点は0だった。これは悪い夢以外の何物でもない!

ちなみに

投手自身もインフィールドプレイ中は野手となるため、投手自身が悪送球などの失策を犯すこともある。

しかし野球記録とは不思議なもので、投手自身の失策による失点は自責点にならない。ふしぎ!

ただし、ボーク、暴投は失策ではないので、ボーク、暴投による進塁がらみの失点は無条件で自責点となる(「塁上にいた走者が失策によって生還した場合」、「塁上にいた走者が失策による進塁がなければ得点しなかったと思われる場合」には該当しない)。当然元のランナーが自責点の対でない場合は自責点にはならないが。

一方面倒くさいことに牽制悪送球失策なので、牽制悪送球による進塁絡みの失点は自責点にならないことがある(この進塁は(「塁上にいた走者が失策によって生還した場合」、「塁上にいた走者が失策による進塁がなければ得点しなかったと思われる場合」における失策と同じ扱い)。つまり、牽制悪送球を使えば本塁打を打たれない限り防御率が悪化することはない(非現実的だが)。

さらに面倒くさいことに捕手の捕逸(パスボール)は失策扱いではないのにもかかわらず自責点にならないことがある(この進塁は(「塁上にいた走者が失策によって生還した場合」、「塁上にいた走者が失策による進塁がなければ得点しなかったと思われる場合」と同じ扱い)。頑って覚えよう。

ここらへんは野球に詳しい人でも間違えていることが多い。「牽制 自責点」とかでググって一番上に出るやつとか。

野手選択があった場合はどうなるの?

なんとなくエラーと似ている野手選択が絡んだ場合も自責点は付かなそうだが、この場合自責点はきっちり付く。

(例)
投手Aは走者で打者Bに2塁打を許すと、続く打者Cのショートゴロでサードに投げるも間に合わず野手選択死1,3塁となる。
→続く打者Dのホームラン。3点が入る。

この場合、打者Cの打撃結果が失策だった場合は、
Cの得点…「失策によって出塁した走者の場合」に該当し自責点は2であるが、野手選択の場合は自責点3になる。

野手選択が自責点になる理由は明文化されていないが、計算が複雑になるからという説が有である(例えば併殺崩れで得点した時の3塁走者の進塁も野手選択による進塁だが、これをどう捉えるかは非常に難しく面倒である)。

走者が入れ替わった場合はどうなるの?

前述の通り、「投手Aの出した走者の生還は投手Aの失点」が記録上の原則である。

すると、野球を見慣れた人なら、「フォープレイで走者が入れ替わった場合は?」という疑問が浮かぶだろう。具体例を示すならこんな状況である。

投手Aは先頭の打者Bに四球を許し、死1塁で投手Cに交替する。
→ 打者Dはセカンドゴロとなり、走者Bが二塁でアウト。打者Dは一塁セーフとなり、一死1塁。
→ 打者Eが右中間を破るタイムリーツーベース。走者Dが生還し1点が入る。

この場合、生還した走者Dは、投手Cの出した走者である。が、この場合は自責点は投手Aにつく併殺崩れでの出塁が出塁率に含まれないのと同じ理屈である。

日本とアメリカの違い

日本プロ野球アメリカMLBでは、自責点の判定の仕方が微妙に異なっている。日本では得点が発生した時点でそれが自責点か否かが判定されるが、MLBでは一旦保留され、イニング終了時に決定される。

たとえば、こんな状況でその差が現れる。

投手Aに対し、二死から打者Bが三塁打を放ち、二死3塁となる。
→ 続く打者Cの打席で、投手Aのボール捕手がパスボール。走者Bが生還し、1点が入る。
→ 打者Cはその後、センターヒットを放つ。続く打者Dが三振となり、スリーアウトチェンジ

この場合、日本では走者Bの生還は捕逸によるもののため、投手Aの自責点とはならない。しかしMLBでは、捕逸がなくとも打者Cの安打で走者は生還したものとみなし、投手Aの自責点となる。

チームの自責点と投手の自責点

チーム記録は出場選手の記録を合計すれば算出できるものがほとんどだが、自責点の場合は全投手の自責点の合計よりチーム自責点が小さくなる可性がある。これは上記のうち「失策がなければチェンジ(3アウト)になっていたと思われる場合」が関わっており、交代して登板した投手は交代前の失策などの状況を引き継がないため。

例えば失策が1回あって二死一塁で投手が交代した場合、交代して登板した投手普通に二死から登板したという扱いになるため、自分で出した走者が生還すれば自責点が付き、一方でチーム自責点はつかなくなる。

自責点にまつわる記録

シーズン記録

日本プロ野球
順位 選手名 所属 自責点 年度
1 真田重蔵 シフィック 163 1946
2 小林恒夫 松竹 158 1951
3 高野裕良 大洋 156 1950
4 長谷川良平 広島 150 1950
5 内藤幸三 ゴールドスター 134 1946
6 真田重男 松竹 1950
7 保義夫 阪急 1950
8 内藤幸三 広島 133 1950
9 田原基稔 国鉄 132 1950
10 小林恒夫 松竹 1952

通算記録

日本プロ野球
順位 選手名 自責点
1 米田哲也 1659
2 鈴木啓示 1588
3 東尾修 1588
4 金田正一 1434
5 梶本隆夫 1395
6 山田久志 1367
7 石川雅規 1337
8 小山正明 1336
9 三浦大輔 1309
10 山本昌 1285

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