完結したので、勝手に本作のストーリーを(主にラスボスの視点から)解説してみる。ネタバレ注意。(白文字なのでCTRL+A押して読んでね)
1000年以上前、人間に強大な生命力を与える力を持つ「若さの泉」の力により、栄華を極めていた古代都市があった。「若さの泉」はドラゴンの群れによって守護されており、人間が容易に手出しをすることは出来なかったが、ドラゴンと人間は力のバランスを保ち、一種の共存関係にあった。
しかしある時、古代都市を統括する役人が、魔法使いの力を借り、泉の水の独占とドラゴンの全滅を画策する。この計画に加わった魔法使いの一人が若き日のモーダミアであり、ドラゴンへの対抗手段である「アミュレット」は彼が開発した。アミュレットは掲げている限りドラゴンの攻撃を受けないという画期的な発明だったが、刻まれたルーン文字を読むことでドラゴンに攻撃する際、その効力がドラゴンのみならず使用者にも及ぶという致命的な欠点があり、ついにモーダミア自身は(ただ掲げる以外に)アミュレットを使用することは無かった(主人公がLevel7で見た夢の描写からして、軍隊に渡して使用させたと思われる)。
計画は実行に移され、ドラゴンはそのほとんどが殺害された。ドラゴンが棲むダンジョンへの道は軍隊によって閉ざされた(ダンジョンを塞いだら泉の水も入手できないのでは…と思えるが、情報が少なすぎるため詳細は不明)が、そのうちの一頭が軍隊の包囲を抜け出し、古代都市を怒りの火炎で焼き尽くし全滅させた(本作の説明書には「竜の炎で壊滅したと伝えられる古代都市」という記述があり、史実のうちこの部分だけが伝承されたと考えられる)。
しかし、黒幕である魔法使いモーダミアはただ一人生き延び(Level8における「殺されたが魂だけが生き残った」という台詞は誤訳であり、実際は「ただ一人だけ生き残った」という訳が正しい)、おそらく戦闘のどさくさにまぎれて入手した泉の水の力で1000年の長きを生き続けることになった。だが、それだけの年月も彼のドラゴンに対する復讐心(自分から戦闘を仕掛けたのだから全くの筋違いなのだが)を失わせることは無かったようだ。
1000年近い月日が経ち、モーダミアは高い実力を持った魔法使いとして、ダンリックや主人公のような優秀な魔道士を指導・育成していた。しかし、その目的は自身のアミュレットを弟子たちに使わせることで1000年前の宿敵であるドラゴンを殺害し、再び若さの泉を手中に取り戻すことであり、そのために姿をくらましたフリをして古代都市の廃墟にダンリックと主人公を導いた。
その際、モーダミアはダンリックの娘であるアンナをさらい、自身が操っていた(?)トロールたちに人質として引き渡すことでダンリックを従わせようとしたものの(恐らくダンリックがモーダミアの計画に気づいたためと思われるが、どの段階で気づかれてしまったのかは不明)、アンナがリングの力を使って姿を消した事とダンリック本人の強情さにより、計画は破綻。ダンリックは捕らえて拷問にかけ、手下のウリンドアを使って主人公にアミュレットを使わせようとした。
しかし、主人公の勇気と機転を侮っていたモーダミアは、ダンリックが主人公に手渡した「マグネットハンド」の魔法によりアミュレットを奪われ、ドラゴンの火炎を浴び絶命。結局、1000年前の宿敵の前に再び敗れることになったのであった。
その後、主人公は(恐らくドラゴンに代わって泉の守護者となっていた)ノーラックを倒した現在の古代都市の住人・ゴブリンたちの協力により、「若さの泉」の新たな水源を発見。若返ってアンナと結ばれることになったのであった。めでたしめでたし。
疑問点
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ダンリックはいつモーダミアのたくらみに気づいたのか?
- 定かではないが、少なくともダンジョンの探索開始時には気付いていなかったと思われる。罠と知りながらモーダミアを倒すためあえてやって来たと考えることも出来なくはないが、モーダミアの目的から言って彼の野望を阻止するには単にダンジョンに来ないだけで十分なわけで、ノコノコやってきて捕らえられていたなら相当な間抜けである。
- 人質に捕らえられたアンナを助けるため仕方なく…と考えることも出来なくはないが、それならわざわざモーダミアがダンリック宛にメッセージを残す必要も無い。あるいはモーダミアはあらかじめ万一の保険のためにアンナを誘拐していたが、当初からそれに気付いていたダンリックは何も知らないフリをしてその場にやってきた、と考えることも可能かもしれない。
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何故モーダミアは1000年もの間ドラゴン退治を保留していたのか?
- 本作のプロットで最も不自然なのは、ドラゴンを始末して若さの泉を手中に取り戻したがっていたはずのモーダミアが、1000年もの間何もせず座して機会を伺っていたらしいということである。仮にドラゴンがアミュレット以外の手段では倒せなかったとしても、適当な奴を騙して呪文を読ませればそれで済むのだから、本作のように手の込んだ真似をする必要は無いはずである。
- あるいは、アミュレットの呪文を読むためには高度な魔法力が必要で、騙すにも自身の直弟子である主人公やダンリッククラスの魔道士でなければ意味が無かったのかもしれないが、それでも1000年もの時間をかけて適合者を探す必要は感じられない。ダンリックや主人公は普通の人間なのだから、仮に1から魔道士として直々に鍛え上げたとしても50年もあれば適合者を育成することが可能だったはずである。
- ここから先は筆者の憶測になるが、Level4における主人公の夢に登場するモーダミアは「優しそうな暖かい雰囲気」を持っていたらしいということから推察して、近年になるまでモーダミアはドラゴンへの復讐を行うことを考えていなかったのではないか?若さの泉で手に入れた長寿の力で、案外平凡に余生を終えるつもりだったのではないか? (そうだとすると、主人公やダンリックを育成した動機も、ドラゴン退治が目的ではなく純粋に教師の仕事にやりがいを感じていたからだとも考えられる)
- そんなモーダミアを今回の事件に駆り立てた要因としては、陳腐な想像だが、老いと死への恐れがあったのではないかと筆者は考える。若さの泉の与える長寿は1000年もの長きにわたるものではあったが、決して無限ではない。いつの日かそれを悟ったモーダミアは再び若さと力を手中に取り戻すべく、泉の奪還を図ったのではないか?
- そうなると、ドラゴン退治の主要な動機は先に書いたような「復讐」ではなく、あくまでも泉の奪還こそがモーダミアの最終目的であったことになるが、彼がどちらの動機に行動のウェイトをおいていたのかは今となっては知る由も無いことだろう。
- いずれにせよ、この考察が正しいとすれば、師に騙されていた主人公は結局師に打ち勝ったのみでなく、師の一番欲しかったものまで手に入れてしまったことになり、皮肉な話である。
参考リンク
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