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アコニチン(Aconitine)とは、トリカブトに含まれるアルカロイドである。
概要
アコニチンは、トリカブト属の植物に含まれる猛毒のアルカロイドである。トリカブトはアコニチンのほかにもメサコニチン、ヒパコニチン、ジェサコニチンなどの類縁体を含有している。これらアコニチン類は神経細胞のNa+チャネル(ナトリウムイオンが通過するタンパク)に作用する。これによりNa+チャネルが開口し続け、脱分極が持続する(神経興奮が持続する)。中毒量を摂取すると、嘔吐、痙攣、呼吸困難、不整脈などを引き起こし、死に至る。解毒薬はないため、摂取した場合は胃洗浄を行う。LD50(半数致死量:投与された動物の50%が死亡する量)は、経口投与で5.97mg/kg(ラット)。
ごく少量の摂取であれば、鎮静作用や強心作用を示す。そのため、トリカブトの根は医薬品として利用されている。ハナトリカブトやオクトリカブトの塊根をオートクレーブ法により高圧下で蒸気処理し、アコニチンによる毒性を弱めたものが生薬「附子(ブシ)」として日本薬局方に収載されている。強心薬として用いられ、漢方薬の八味地黄丸や真武湯に配合されている。なお、毒物としては「附子(ブス)」と読む。
フグの毒として知られるテトロドトキシンは、アコニチンと相反する作用を示す。つまり、アコニチンとテトロドトキシンの両方を適量投与すると、作用が拮抗し毒性が現れない。ただし、薬物は生体内で肝代謝や腎排泄を受け、時間の経過とともにその血中濃度が減少していく。テトロドトキシンの消失半減期はアコニチンのそれより短いため、いずれはアコニチンの作用が優位となり毒性が発現する。過去、このことをアリバイ作りに利用したと考えられる殺人事件(トリカブト保険金殺人事件)が発生した。
構造
アコニチンは、トリカブトに含まれるジテルペンアルカロイドである。極めて複雑に縮環した多環式化合物であり、その基本骨格上に多くの酸素官能基を有する。2016年時点で、アコニチンの全合成(生物学的なプロセスを経ることのない完全な化学合成)は達成されていない。構造活性相関(分子の構造と薬効や毒性との関係)の研究もほとんど進んでおらず、エステル結合の加水分解により活性が減弱することが分かっている程度である。しかし、2012年に類縁体のカスマニンの全合成が達成されるなど、アコニチンの全合成や構造活性相関の研究は少しずつ進展している。
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