アスタ ラ ビスタ(スペイン語: ¡Hasta la vista!)とは、「さようなら」「またいつか」を意味する言葉である。英語の "See you again." とほぼ同義。
一方、英語の "Goodbye." にあたるスペイン語は "¡Adiós!" (アディオス。なお、アクセントはオ)。
概要
- hasta アスタ(h は発音しない) : ~まで(「あした」が訛ったもの)
- la ラ : 定冠詞(英語の the)女性単数形
- vista ビスタ(v は b と同じ発音で、下唇は噛まない) : 一目会うこと、
つまり、「一目会うその時まで = さようなら、またいつか」となる。
方言によりニュアンスはやや異なってくるが、専ら、しばらくの間会えないのが決まっているか、今度いつ会えるか判らない、もう二度と会えないかもしれない、といった状況で使われる表現である。また、冗談めかしたり皮肉や悪意を交えて「もう会わんかもしれんけどな!」「もう会いたくないけどな!」「また来世!」といった意味にもなる。
「地獄で会おうぜ、ベイビー」
ニコニコで、というより日本で Hasta la vista というフレーズが一般に浸透したのは映画『ターミネーター2』だろう。実は日本に限らず海外でも同様らしく、ウィキペディアでは英・独・仏・西・葡・波語版で独立項目が立てられているほどである。以下ネタバレ若干なので、未見の人はここで Hasta la vista and someday come back here!
不良少年ジョン(一応主人公)は、自分を護衛する堅物ターミネーターをからかいつつ不良の流儀を吹き込もうとする。同意を求められたら「了解した」(Affirmative.)」じゃなくて「ノープロだ」(No problemo. 米製西語で No problem.)、ムカつく態度の奴には「俺のをしゃぶれよ」(Eat me.)という風に。それらに続く煽り文句として出てくるのが Hasta la vista である。
ターミネーター: Hasta la vista, baby.
ジョン: そう、で、その後に「この間抜け」。誰かキレ出したら「頭冷やしな」。組み合わせてもいいぜ。
(Yeah but later, dickwad. And if someone gets upset you say, "chill out"!
Or you can do combinations.)
ターミネーター: 頭冷やしな、この間抜け。(Chill out, dickwad.)
ジョン: いいね!解ってきたじゃないか!(Great! See, you're getting it!)
映画ではこの遣り取りが後々の伏線ともなっているわけだが、未見の方はぜひとも映画で確認していただきたい。
日本では字幕や吹き替えで "Hasta la vista, baby." が「地獄で会おうぜ、ベイビー」あるいは「さっさと失せろ、ベイビー」と訳され、特に戸田奈津子による前者の俗っぽい軽薄さと攻撃的なニュアンスを伝える印象的な翻訳がつとに有名である。
とはいえ、先述したこのフレーズの正確な意味とその伝わり易さを重視するならば後者の方が適訳と云え、それが前者に対する批判としてその賛否が問われることがしばしばある。しかしながら世界的に有名になったフレーズの訳としては、後者は普通過ぎてほとんどインパクトが無いのも事実であり、どちらが絶対的にいい翻訳であると断定することはできない。ま、こまけぇこたぁいいんだよ!!
なお、スペイン語(カスティーリャ語)版吹き替えではこのフレーズが "Sayonara, baby." と訳されたとか。テイスト・オブ・ハニーの「Sukiyaki」(「上を向いて歩こう」英詞カバー)ラストフレーズやメアリー・マッグレガーの「SAYONARA」(アニメ映画『さよなら銀河鉄道999』主題歌)などからも想像されるように、「サヨナラ」という言葉は欧米人にとって永遠の別れを予感させる響きがあるらしい。
別作品では「花の慶次-雲のかなたに-」にて、カルロスが慶次との一戦を交え琉球へ戻る際に”Hasta la vista”のワードを使用している。この場合の訳は「また会おう」であり、慶次が惚れた利沙を巡って再び戦う約束を交わしていた。
別れの表現あれこれ
というわけで、いずれにせよ使い処を間違えると色々と大変そうな表現なので、スペイン語で普通にお別れしたい時には以下の表現を使おう。
- "¡Adiós!" (アディオス 「さようなら」。英語の "Goodbye." あるいは "Farewell." 汎用的な別れの挨拶で、「神に(貴方をお任せします)」を省略したもの。なお Goodbye も God be with ye. 「神が汝(ら)と共に在らん事を」の省略形)
- "¡Hasta mañana!" (アスタ・マニャーナ 「また明日」。英語の "See you tomorrow."ABBAのアルバム『Waterloo』収録曲のタイトルとしても知られる。)
- "¡Hasta luego!" (アスタ・ルエーゴ 「また後で」。英語の "See you later." で、その日の内にまたすぐ会うつもりの場合)
- "¡Hasta pronto!" (アスタ・プロント 「またその内に」。英語の "See you soon." で、すぐ会えるかは決まってなくてもいい、やや社交辞令的表現)
- "¡Chao!"/"¡Chau!" (チャオ/チャウ 「じゃあね」 英語の "Bye." で、親しい間柄向き。イタリア語ヴェネツィア方言より)
なお、スペイン語の間投表現は感嘆符「!」と倒置した感嘆符「¡」(小文字の I ではない)で囲んで表現するので "¡Hasta la vista!" となるが、別に勢い込んで言う必要は無い。他の欧米諸語と同じく、ここでの感嘆符はあくまで普通の文章から区別される独立的な間投表現であることを表す文法的な標示に過ぎない。ちなみにスペイン語では疑問表現も同様に "¿...?" とする)。まあウェブ上では先頭の倒置した符合はよく省かれるので、余り気にしない。
また、「vista」はラテン語で「見る」という意味の動詞ウィデーレ videre に由来する単語であり、ビデオ(video)、ビジョン(vision, -vision)等とは親戚関係にある。ロマンス系言語(ラテン語を祖に持つ言語)であるイタリア語、ポルトガル語はもちろん、英語などにも「vista」という単語が採り入れられており、いずれも「眺め」や「見ること」といった意味である。項目「ビスタ」も参照されたい。
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関連項目
- スペイン語
- ビスタ
- ターミネーター
- 花の慶次-雲のかなたに-
- 戸田奈津子
- あしたまにあ~な
- 少し、頭冷やそうか
- お疲れさまでスター! - 英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語版ではアスタ・ラ・ビスタを元にした翻訳がなされている。
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