アバカム(泣き落とし)とは、チキュウという世界における解錠魔法である。
概要
対象となる施錠された扉を解錠する魔法である。
魔法ではあるが、MP(Money Point)の消費が「基本的には」ゼロであることを最大の特徴とする。
解錠の原理
アバカムが純然たる魔力により、その発展系であるアバカム(有料)もまたMP消費により解錠を行うのに対し、当魔法は基本的にはMPを消費しない。
これは、術者が直接に錠前に対して何らかの積極的働きかけを行う魔法ではないことによる。
具体的には、解錠の上進入したい施設内部の人間に働きかけ、間接的に解錠という結果を得る。
つまりこの魔法により、施設内部の人間に施錠が無意味であると誤認させ、自発的に解錠を促すことが、当魔法によって解錠が行われる原理である。
この原理上、解錠魔法ではあるが、「結果」ではなく「作用」に注目した場合、むしろ魔法の系統樹としては幻惑魔法、もしくは混乱魔法に近縁の魔法として区分する方がより適切と考えられる。
行使に当たっての条件
先の「解錠の原理」を満たすため、解錠を行う施設内部が有人である必要がある。
行使について
当魔法は大きく分けて「ナキオトシ」「ギャクギレ」の二要素から成り立っている。
この要素はナキオトシが主、ギャクギレが従であると言え、魔法は最終的に主の要素であるナキオトシによって発動することが多い。
また、ギャクギレは行使に失敗すると、最悪の場合称号「ゼンカイッパン」の授与や、それにつながる危険のあるイベント「ショクムシツモン」が発生する可能性があり、ナキオトシに比べて相対的にハイリスク・ローリターンな要素であるといえる。
しかしながら、ギャクギレはその定義においてナキオトシと非常に良い対比を示す要素であり、その対比からナキオトシの、ひいては当魔法の成功率を高めることを目的として、多くの術者によって使用される要素であることもまた事実である。
そのため、本項目においてはギャクギレは決して不要な、あるいは省略可能な要素ではなく、当魔法における必須の要素という立場を取る事とする。
魔法要素の行使はギャクギレ→ナキオトシの順番で行われることが一般的であるが、二要素間の大きな対比を使用するという性質上、逆の順番で行使することも原理的には差し支えない。
また、二要素の両方を実行しても魔法の発動が認められない場合、最初に実行した要素を再度実行することも可能である。
構成二要素
以下に、二要素それぞれに対する概説を行う。
「ナキオトシ」
チキュウの一言語であるニホン語にて「アバカム(泣き落とし)」と命名されていることから分かるとおり、この魔法において最大の要点となる要素は、「ナキオトシ」と呼ばれる要素である。
ナキオトシは、
魔法の被術者が「己の肉体的、精神的、社会的立場及び状況がいずれも術者と比較して相対的に『不当に』高い状況であり、この状況を産み出している何らかの『術者にとって不都合な状況』を早急に是正しなければならない」という感情を術者に対して極めて強く抱くように、術者が被術者の思考及び感情を能動的に制御する
当魔法における「術者にとって不都合な状況」とは扉の施錠であり、その状況を被術者が是正、つまり解錠に導くことが魔法の最終目的であるため、このナキオトシが当魔法の要諦であるといえる。
当魔法においてのナキオトシの実際については、エミリア・ユスティーナによる行使を記録した関連動画を1:22より参照いただきたい。
ナキオトシ実施における基本的な技法的要点は下記のようになる。
- 複雑な呪文は不必要であり(不必要どころか有害な場合すらある)、呪文が成立しなくなる寸前まで情報を削り、簡略化する
- 呪文及び詠唱にあえて「雑音」を乗せる
- 詠唱に大きく、不自然と思われるまでの抑揚を付ける
1の技法について、具体的には「術者はこの扉を解錠することを求める」を意味する以外の情報は必要ないことが多い。この情報さえ乗せることが可能であれば、実際に自然言語を用いる詠唱はどこまでも短くすることが可能である。
極端な例となるが、仮に"A"という一音で「解錠せよ」「開け」という意味となる自然言語がチキュウに存在するとするならば、"A"と連続で詠唱するのみで充分であり、場合によっては推奨されすらする、ということである。
2の技法についてであるが、一見すると1の技法の「情報を削る」という趣旨からは外れているように見える。
しかし本項の当初に「己(註:被術者)の肉体的、精神的、社会的立場及び状況がいずれも術者と比較して相対的に『不当に』高い状況」と定義した通り、被術者の立場を一時的にでも不当なまでに高める、逆に言えば己の立場を一時的に不当なまでに貶めることこそが、ナキオトシ最大の要点であることを念頭に置く必要がある。
つまり、ここで本来呪文には必要ない「雑音」を乗せることにより、術者自身が「もはや呪文を正しく構成して誤解無く詠唱する能力を喪失している」という状況を意図的に作りだし、被術者の相対的立場を不当に高めることを目的とした技法であると解釈できる。
ここで言う「雑音」とは「呪文に本来必要のない余分な情報」「音声以外のノイズ」の2つを指す。
前者については「なんでも良い」。小売業者の廉価販売に乗じて不当に利益を得ようとしたことに対する懺悔、己の胸囲に対する諦念混じりの開き直り、主を護衛しきれなかったことに対する謝罪、浪費を咎めるための命を賭した哀願など、なんでも構わない。
しかしながら、ナキオトシの定義及び1の技法との整合性を考えた場合、「脈絡を欠き、謝罪を中心とする」を念頭に置いて選定すべきと言えるだろう。
後者については具体的な定義は難しいが、一般的には術者自身を落涙、甚だしくは号泣している状態へ自然に、あるいは意図的に追い込むことにより容易に実現可能となる。
3の技法については、先の1及び2の技法の効果をより高めるための付随的技法であると解釈できる。つまり、詠唱の抑揚を不自然な物とすることにより、術者は感情の制御が困難であり、すでに呪文詠唱能力を半ば失っていると言うことをより積極的にアピールする技法である。
これ以外にも
などの付随的技法が多用される。
「ギャクギレ」
ナキオトシの対となる要素がこの「ギャクギレ」である。
ギャクギレは、
魔法の術者が「被術者の肉体的、精神的、社会的立場及び状況がいずれも術者と比較して相対的に極めて低い状況であり、被術者が『術者にとって不都合な状況』を早急に是正しなければ術者がその立場を使用して被術者に大きな不利益を故意に発生させる」と被術者に認識させ、正常な判断が下せない状況に追い込むために、被術者の思考及び感情を能動的に制御する
ことを目的とした要素であると定義できる。
ギャクギレはその定義においてナキオトシのほぼ正反対に位置する物であるが、被術者に対して「術者にとって不都合な状況を是正しなければならない」と思考させる点についてはナキオトシと同様である。
しかしギャクギレ実施におけるその方法論は被術者に対する力による魔法発動の強制であり、被術者が実際には術者と対等以上の力を持っている場合、あるいは被術者が何らかの事態の打開が可能な魔法の行使が可能な状態である場合においてはほぼ無力となる。
これがために、ギャクギレは当魔法の主たる要素となることが難しく、ナキオトシのアクセントとして使用される地位に甘んじているとも言える。
また、当魔法におけるギャクギレは基本的に「ナキオトシとの大きな対比を産み出す」目的で実施されるために、この定義を満たす技法はナキオトシよりも多数、かつ属人的である。そのため、ナキオトシのように基本的な技法的要点を挙げることは非常に難しい。
しかしながら、ギャクギレ実施時に採用すべき技法を決定するための判断基準はいくつか存在する。
- 術者は感情の制御が困難である、あるいは困難になりつつあること
- しかしながら、術者は思考能力及び詠唱能力を失ってはいないこと
- 上記2点を主な理由とし、このままでは術者が被術者に対して不利益を与える可能性が高いこと
この3点全てをアピール可能な技法を適宜発見、組み合わせて実施することとなる。
なお、ここで言う「思考能力」とは「理路整然とした思考」ではなく「当魔法及び要素に必要とされる付随情報を詠唱を滞らせることなく可能な限り多く発想できる」を指すことに注意されたい。
つまり、当魔法の詠唱に必要であれば「こんにゃくときゅうりでの晩餐に参加したい」と「別の場所で晩餐に参加してきたので解錠の上施設に入って休息を取りたい」が一度の詠唱中に並列でき、「理路整然とした思考」にあってはならない、これら相互間の矛盾は問題とは見なされないということとなる。
上記のように、ギャクギレは指針こそあるものの、汎用的と思われる技法そのものの定義が難しい。そのため、習得の一助となるであろう技法の概説は本項では残念ながら不可能である。技法の定義やより良い判断基準をご存じのニコ百諸賢におかれては、是非追記をお願いしたい。
直接のアドバイスでは無いが、当魔法の修行中の術者諸氏においては、何らかの対象に理不尽に立腹する状態を作りだし、その対象を貶める言葉を可能な限り多く早く自分の言葉で述べる、あるいは書き記す行為を繰り返すことがギャクギレ習得の一助となると考えられる。
これらの行為を繰り返し、選択される言葉の傾向、感情の移ろい、及びその際の身体動作を整理することにより、自分がギャクギレにおいて取るべき技法、取っても不自然ではない技法を選択してのギャクギレ実施の方向性が次第に明確となって来るであろう。
魔法が及ぼす影響
主たる影響は「解錠」であるため、ここでは悪影響について概説する。
当魔法による悪影響は主に
の2点である。
これらの悪影響が発生する理由は、主に当魔法の行使方法に原因がある。すなわち、日常生活での常識からは「常軌を逸した」と思われる方法で長時間詠唱を行い、時に用いる肉体的詠唱補助によって私有財、公共財に対し損害を与えるためである。
これらは当魔法に必須の行為であるが、現代ニッポンにおける社会問題となっている違法行為に酷似した行動と周囲に映ることがある。
そのため、違法行為と誤認した被術者あるいは周辺住民により召喚魔法「ヒャクトウバン」が行使され、「オマワリサン」と呼ばれる治安維持を目的とした使い魔召喚及び使い魔による強制イベント「ショクムシツモン」が発生する可能性がある。
オマワリサンは体術や「ケイボウ」と呼ばれる武器を使用した杖術に長け、「南方回転新式」と呼ばれる純然たる攻撃魔法も行使可能なため、オマワリサンの妨害を排して当魔法の行使を続行することは極めて難しい。
オマワリサンを召喚されることはニッポンにおいて極めて不名誉なこととして受け止められ、非公式ではあるが術者及びその関係者(被術者を含む場合がある)は魔法の詠唱地点周辺における社会的地位が一時的、あるいは永続的に低下する。
それでも再三行使を試みた場合、術者は徒歩、あるいは移動魔法により強制的に「コウバン」、甚だしい場合は「ケイサツショ」と呼ばれる施設へ移動させられる。「ケイサツショ」へ移動した場合は呪われた公式称号「ゼンカイッパン」付与の可能性がある。
コウバンやケイサツショには大量のオマワリサンが滞留しており、事実上自力での脱出は絶望的と見て良い。
また、再三行使を行っている状態で、被術者が公的にある種の申し立てをした場合、確定ではないが、上記の悪影響2番の具体例として
などの呪いイベントが発生する可能性がある。これらはゼンカイッパン、あるいはさらに上位の称号及びステータス異常である「チョウエキ」の付与を避けるために取引した結果として発生することもある。
いずれにせよ、当魔法を行使する場合、特に一度ではなく繰り返し同一箇所で行使する場合にはこれらのデメリットを慎重に見極めた上で注意深く行う必要があることに留意されたい。
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関連項目
- 7
- 0pt