オトマティック自走対空砲とは、イタリアの兵器メーカー“オート・メララ”が自社資金で開発した試作対空戦車である。言っておくがオートマチックでも乙女チックでもないぞ!
概要
イタリアは機甲部隊に随伴する自走対空砲としてSIDAM対空自走砲を1985年より装備していたが、開発したオートメララはその性能に満足しなかったのか自社資金で強力な対空戦車の開発に乗り出す。こうして1987年に発表したのがオトマティック自走対空砲である。
機体解説
有名なドイツのゲパルトや日本の87式自走高射機関砲ではスイス・エリコン社製35mm機関砲を搭載している。それに対しオトマティックは何をトチ狂ったのか自社製76mm62口径艦載砲『コンパクト』を戦車のシャーシに乗っけてしまったのだ。本来コンパクトは無人砲塔なのだが、車載化にあたり3名が乗り込む砲塔に砲だけマウント。つめる砲弾は90発で、本来の業務である対空砲弾のほかに対装甲車両用のAPFSDS弾や榴弾も搭載可能。APFSDSは目標までの距離2000mで150mmの装甲をぶち抜く程度の能力があり、距離しだいでは戦後第1世代戦車(T-54/55)すら撃破可能。何ゆえのバカ火力。余談だが試作1号車はパルマリア自走榴弾砲、2号車はレオパルド1の車台にオトマティックの砲塔を載せている。やっぱりオート・メララの中の人は戦車と殴りあわせる気だったんじゃなかろうか。
砲塔には追跡レーダー・捜索レーダー・光学追尾装置を備えコンピュータ化されたFCSを装備。砲の最大射程は実に16km、撃墜できる最高高度は6kmという超高性能。まぁ実際に有効な射程は最高高度と同じ6kmだったようだが。これ、どれだけすごいかと言うと当時のソ連の対戦車ヘリMi-24に搭載されていた空対地ミサイル「9M114“シュトゥールム”」の射程が5kmだったため敵ミサイルの射程外から攻撃できるというところからわかってほしい。
全く売れなかった。
どうしてそうなった
オート・メララは航空ショーで盛んにオトマティックを出展し、トーネードを追尾させることで高性能振りをアピールした。しかし各国の軍関係者はと言うと。
- 射程6kmって中途半端だよね。攻撃機の放つ対地ミサイルって射程数十キロのオーダーだよね。
- これだったらホーク対空ミサイルを改良したほうが射程も長いしお得じゃね?
- もうすぐMEADSってミサイル出るらしいし買い控えたほうがよくね?
てな感じででそっぽをむかれてしまったのだ。あとお値段も相当高かったらしく、値段については詳しい資料がないが恐らくゲパルトと同程度かそれより高かったというのは想像に難くない。ちなみに87式自走高射機関砲のお値段は16億(!)、多分これぐらいするんじゃなかろうか。
オート・メララとしてはたまったもんじゃないと砲塔を軽量化し追跡レーダーを取っ払った『AMRAD』砲塔なるものを開発したがこちらも全く売れず。それでもあきらめきれないオート・メララはAMRADを元にさらに改良を加え『ドラコ』砲塔を開発。これがようやくイタリア軍に売れたらしく、チェンタウロ戦闘偵察車のシャーシに乗っけてSIDAM対空自走砲の後継『チェンタウロ・ドラコ』として配備予定らしい。
関連動画
↑オトマティックのベースとなった76mm砲(ただしコンパクトよりも給弾速度の向上した「スーパー・ラピッド」)の参考動画。
関連項目
- 軍事 / 軍事関連項目一覧
- イタリア / イタリア軍
- 軍用車両の一覧
- AFV / 装甲車 / 自走式対空砲
- 87式自走高射機関砲
- チェンタウロ戦闘偵察車
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