T-54/55とは、東西冷戦時の東側陣営の戦後第一世代主力戦車である。
概要
大祖国戦争におけるソ連の傑作戦車・T-34を下敷きにしつつ、戦訓を踏まえた改良をいちから反映させた新型戦車・T-44。しかしT-44の主砲に選定された85ミリ砲を強引にT-34に乗っけてしまったもんだから「性能に大差ない」とでも思われたか、実戦投入はされずに終わってしまう。そのリベンジとしてT-44に100ミリ砲をのっけてみたのがT-54、T-54にNBC防御の付与やエンジン馬力強化等の改良を加えたのがT-55である。外見的にほとんど変わらないので、T-54/55とひとまとまりにされてしまうことも多い(本記事もそれに倣う)。
特徴
被弾を極力回避するための低い姿勢、避弾経始を突き詰めて生まれたドーム型砲塔、西側中戦車を大きく凌ぐ100ミリ砲といった西側の戦車技術水準をはるかに越えた設計と、何より圧倒的なその生産量(詳細は後述)で東西冷戦初期の西側陣営を恐怖のどん底に陥れた画期的戦車である。ソ連軍のみならず東側主要国や第三世界諸国で供与・ライセンス生産が行われ、東西代理戦争の前線でも頻繁に姿を見かける兵器となった。
戦史
というわけで登場当初は西側の防衛関係者を恐慌に陥れたT-54/55だったのだが、中東諸国に供与された車両が中東戦争でイスラエル軍に苦戦するいっぽうだったことで「?」になり、イスラエル軍鹵獲車両を譲渡されたアメリカが徹底的に調べ尽くしたことで弱点が解明されてしまった。
低い姿勢は俯角をとりづらく複雑な地形での死角が広くなり、人間工学を無視した無理な小型化は乗員の動きを阻害して戦闘行動に支障が出かねない域。100ミリ砲も口径こそ大きいものの、実力は当時の西側主力戦車の90ミリ砲と同等レベル、おまけに照準能力の立ち遅れで長距離砲戦能力はほとんどないという有様。まあ現実はこんなもんだよね。
但しソ連陸軍当局も中東での苦戦、それを知らぬわけではなく、1980年代からT-72の技術を援用した近代化が施されている。具体的には電子化されたFCSの搭載、増加装甲の貼り付け、砲のAPFSDSへの対応などである。これでも同様に改良を受けた西側第二世代には辛いが、互角には近くなり、数量とドクトリン次第では侮れない存在であった。
特に我が国においては、74式戦車にAPFSDSが支給され、FCSが対応したのは1983年以降である。
それまではHEATしかない61式、あるいはAPDSが限界の74式で対抗せねばならず、相当な脅威だったといわれる。
(増加装甲を施されたT-55をAPDSで貫通は困難で、逆に粗悪品とはいえAPFSDSは74式を容易に貫通できる)
東側陣営の主力戦車・供与戦車となったことで、WW2後の戦車が投入された戦争ではT-54/55系の戦車が参加してない戦争のほうが少数派だったりする。高度な電子機器が使われていないことから発展途上国の技術力でも運用が可能なため、21世紀に入った現代でもバリバリの現役車両として砲火を交えている。またある程度豊かになった国々においては、先進国からの技術援助や自国で培った技術をつぎこんで第二世代戦車なみかそれ以上のレベルにまでT-54/55を強化するパターンも多い。特にルーマニア陸軍の場合、T-54/55を改修してTR-580を開発、
更にTR-85と言う戦車が配備されたが、これに至っては原形を留めないレベルの魔改造が施されている。
ウクライナ侵攻では、爆発物を満載したT-54/55がロシア軍によって戦車爆弾として運用されているのが確認された。
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https://twitter.com/CalibreObscura/status/1670510694838546436
生産
生産数が多い、多いといいつつ実数を出してこなかったのはこの数字を見てほしかったからである。
T-54/55シリーズ総生産数、10万両以上。
M4シャーマンシリーズの5万両弱、T-34シリーズの4万両弱といった国家総力戦のさなかに記録された数字をぶちぬいた、文句なく人類史上最多量産された戦車である。戦後第一世代とかいうけど数的基準で言えば西側戦車(M47:9,000両、M48:12,000両、センチュリオン:5,000両、61式戦車:お察しください)なんかじゃなくT-54/55世代って言えよコノヤロウと言ってもいいかもしんない。
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