継ぎはぎして「やったぜ。」とは、文学と聴覚の融合芸術であり、知識と関心の結晶である。
概要
2006年8月16日にインターネット上のホモ向け掲示板に書き込まれ今ではあまりにも有名になった「やったぜ。」の文章を、「『特定カテゴリの幅広いジャンル』から、音声群の一部だけを切り分けて素材化させて」朗読させた動画のこと。
「やったぜ。」については変態糞親父の記事を参照。
「やったぜ。」の朗読といえば2009年に投稿された『岡山の変態糞親父 やったぜ。
』朗読動画が最も認知度を得ているが、2014年(筆者の主観的な感覚としてこの頃と記憶している)からニコニコでは変態糞親父(変態糞土方とも)に関連した動画が増えていき、同じように声真似での朗読を試みたり
、「やったぜ。」の文章を異なる形式へ改変
したり、先述の動画から音声を抽出し動画素材化したり
、ものづくり系ゲームのプレイ動画でメインテーマに起用したり
と多種多様に利用され、加えて派生先の動画から新たに別の動画へと派生するといったように多くの動画を生み出すに至っている。
そして2020年。コロナ禍の中、新たな発想を持った動画投稿者が一本糞の動画をニコニコにドバーっと出してきた。
それが『洋楽を継ぎはぎして「やったぜ。」朗読』であった。
この動画では、「洋楽」というカテゴリに音声素材を限っているにもかかわらず音楽のジャンルや世代を問わずに幅広い選択肢から「そう聞こえる」音声を選び出しており、「ひとつのことがらに特化した嗜好」と「特定の分野に囚われない広い見識」というある種相反した条件を両立している点が視聴者から高い評価を得ている。
洋楽に対して関心がある場合、「興味のある音楽ジャンルの楽曲や特定のアーティストの音楽に深くのめり込む」ということや「メジャーソングやミリオンヒット曲に詳しい」といったように嗜好に偏りを持つことがしばしば起こり得るが、音声素材の選出にあたってそのような好みの偏りを感じさせず、それでいてワンフレーズ訊いただけで元の楽曲を思い起こさせる聴かせどころもしっかりと押えている。また、継ぎはぎされた音声素材一つ一つに対して出典元の楽曲情報を提示しており、投稿者が洋楽に深く突うずるっ込んで精通しているであろうことがそこかしこから伺える。
その後、「洋楽」というカテゴリで作られたこの動画に対して「邦楽」という対照的なカテゴリで同様の試みを行った動画も登場するのだが、こちらも呼応したように多角的な分野の邦楽からの素材化を実践している。
ともすれば模倣や二番煎じとも言える動画でもあるが、実は以下のような点を踏まえると先述の洋楽版と対応する部分があるので、インスパイアと言う表現の方が適切とも思われる。
邦楽版における洋楽版との(正直どうでもいい)比較分析
①イントロでの導入部に坂本九の上を向いて歩こうを採用している。この曲は日本出身者の楽曲としては唯一ビルボードHot100(一言で言うとアメリカの音楽人気ランキング)で週間一位を記録した楽曲であり、洋楽という存在に肩を並べるには唯一無二の邦楽と言える。
②本文歌い出しの「やったぜ。」に、洋楽版はOffspringのAll I Want、邦楽版ははっぱ隊のYATTA!を採用しているが、どちらの楽曲もインターネット上の動画コンテンツを経て、前者は日本国内で、後者は海外で空耳ネタと由来して人気を有した経歴がある。
③「ドバーっ」の字面から感じる勢いをデスボイスシャウトで再現。担当音源は洋楽版ではSepultura、邦楽版はマキシマムザホルモン。
④「三人で出した」に洋楽版で二回も自然体を出したSunnyDayを逆輸入し、松任谷由実のSunny day HolidayからそのままSunnyDayというフレーズを採用。
⑤「ああ~~(ああ^~)」の読み上げで大胆にも十分な尺を設ける。洋楽版ではLed zeppelinのImmigrant song(移民の歌)。邦楽版はクリスタルキングの大都会。この二曲に大きな共通点はないものの「これがやりたかっただけだろ」と言わせる説得力がある。
⑥「気持ちええんじゃ。」の語尾に特撮ヒーローの主題歌から「~レンジャー」を採用。洋楽版ではAerosmithのAngelからタイトル通りAngelを採用しており、RとLの発音区別はあるもののレンジャー(ranger)という韻を踏める親和性がある。というより、ここに関してはどちらも飛び道具のような単語選びで気持ちええんじゃ。
⑦「射精したんや」。正直、原文を見ても特別取り上げる部分とは言えない。本来音声素材の継ぎ接ぎにあたって尺を取り過ぎるとテンポが悪くなるところではあるのだが、洋楽版ではKillswitch EngageのMy Curseのロングトーンシャウトを採用しており、ここでは直前に射精と言う単語が挟まることで射精の快感や絶頂感を持続・強調させる効果を使って居る。邦楽版でも同様に北海道民謡のソーラン節からロングトーンを採用している。音圧としては劣るが元の楽曲を踏まえると洋楽版には出せない独特の情緒が感じられる。
⑧「男汁を出した」の構成は圧倒的音圧重視で構築されており、特にアーティストを重複させずに一文字単位で素材を継ぎはぎした力強い構成は洋楽版に倣っていて熱いリスペクトをしこたま感じる。
⑨2回目の「ああ~~」では同じ「ああ~~」でも1回目とは装いが大きく変わり、美しく清涼感のある素材を採用。洋楽版はイタリアオペラ歌手のLuciano Pavarotti。邦楽版は日本を代表するアイドル松田聖子。方向性は大きく違うが、日本人にオペラがあまり身近ではないことを踏まえると、海外では身近ではないが日本では広く認識されているアイドルの存在は、国際文化の対比ともとれる。
⑩締めの「糞だらけでやろうや。」では、洋楽版は本文歌い出しと同じくOffspringのAll I Want、邦楽版はCHAGE&ASKAのYAH YAH YAH。どちらの曲でも繰り返し「ヤー」と発する楽曲だが、ここで採用されている音声素材はどちらも「歌い終わり」の一言を切り出したもので「一連の朗読を終える」という役割を持っている。また余談として、All I Wantの曲を利用したFlash動画のDoRaeMooooooooooooN!!!!のラストでYAHYAHYAHのジャケット画像が使われているため、着想としてFlash動画が影響した可能性があるかもしれない。
その他、ワンフレーズでクリスマスシーズンを感じさせる洋楽版のマライアキャリー(素材通し番号124番)と同様、ワンフレーズでクリスマスシーズンを邦楽版でも山下達郎(素材通し番号55番)が再現しているなど、探せばまだまだこじつけを見つけられる可能性があるため、もう一度観直したいぜ。
関連商品
1つの動画に200以上の音声素材元の作品があるため紹介しきれない。
構成楽曲をまとめたプレイリストを構築できるヤツ、至急公開してくれや。
関連動画
原典
やはり、大勢が一丸となると最高やで。
邦楽版
関連項目
- 27
- 0pt

