91式携帯地対空誘導弾とは、陸海空自衛隊に配備されている個人用近距離地対空ミサイルである。
防衛省内の略称はSAM-2、隊内では携SAM・PSAMと呼ばれている。
尚、愛称のハンドアローが(ry
開発までの経緯
冷戦まっただ中の1960年代、技術の進歩と共にミサイルの高機能化・小型化が進み、従来は車載や牽引式でなければ運用できなかった地対空ミサイルを限定的ながらも兵士1人で運用する事が可能となった。
これらは携帯式防空ミサイル・システム(通称:MANPADS)として東西両陣営で研究が進められることとなる。
アメリカでは世界初のMANPADSであるFIM-43「レッドアイ」を開発、ソ連も9K32「ストレラ2」(NATOコードネーム:グレイル)を開発。これらは必ずしも優れていたわけではなくいくつかの問題もあったものの、費用対効果に優れており、低価格で機動性に優れ、従来の高射特科部隊など特定の部隊にしか配備する事ができなかった高射砲などとは違い、歩兵はもちろんそれ以外の多くの兵科の将兵、さらには非正規軍であるレジスタンスなどにも非常に多く配備することが可能であったため、東西両陣営の多くの国の軍(はたまたその抵抗組織)に配備された。
しかし、当時陸上自衛隊は対空戦力のミサイル化に着手したばかりであった。ただでさえ少ない予算がHAWKやナイキなどのミサイル調達に当てられており、MANPADSを新規に調達するような余裕はなく、近短距離防空は従来通り高射特科の高射砲・高射機関砲に頼るしかなかった。
そして20年を経た1981年、遂にレッドアイの改良型の西側第二世代MANPADSである「スティンガー」をやっとこさ導入、ついに一般部隊の防空も進むかと思われた・・・
だが、部隊配備は遅々として進まなかった。スティンガーはアメリカとの有償軍事援助(通称:FMS)による導入が行われていたからである。このFMSがなかなかの曲者で、購入は全てアメリカ政府を通す必要があり、発注したはいいが納入が遅れるわ、代金を払ったのに未納扱いになってるわ、修理はアメリカ本国に送らなきゃならないわ、とまあ色々問題があるようで、スティンガーに限っては発注から納入まで最大3年もかかるというgdgdっぷりである。
(同様にFMSで導入した航空自衛隊のE-2C早期警戒機も同様の問題から稼働率が低下しているとか・・・)
この不安定な供給に不安を感じた自衛隊の中の人は国産MANPADSの開発を決意。国内有数の電気メーカー(兼軍需メーカー)である東芝が1983年から開発を開始したが、MANPADSはまったく未開の分野であったため開発は難航。約10年と言う非常に長い年月をかけ、遂に1991年に制式採用され部隊配備するに至った。
つーか、一段飛ばしでいきなり第二世代MANPADS開発しようとしたからなんじゃ・・・
91式PSAMの特徴
91式PSAMは当初、スティンガーの代替として開発が計画されていたが、いつものように変態技術者たちが「どうせ作るならもっとスゲーもん作ろうぜ!」と奮闘してしまったため撃ち放し方式である点や使い捨てである点こと以外はスティンガーとは似ても似つかないものとなってしまった。
91式PSAMのスティンガーには無い特徴として、可視光CCDによる画像認識によるイメージホーミング(画像認識追随)が採用されている点がある。
スティンガーなどは赤外線センサーで目標の発する赤外線を捉えてミサイルを誘導しているため、フレア(物によっては太陽や熱せられた岩)などの妨害に脆弱であった。しかし、91式PSAMはミサイル先端のシーカーと言われる部分に取り付けられたCCDカメラによって人間と同じように目標を「形」として捕らえて誘導・追尾するため、フレアによる妨害にもほとんど影響を受けない。このイメージホーミング技術は世界で初めて91式PSAMが採用したもので、MANPADSの命中率を向上させる画期的なものであった。もちろん発射後に射手が誘導する必要がない打ち放し式なため、射手は発射後即退避出来る。
ただ、この方式は夜間や悪天候時に使用不可能という欠点があるため、補助用の赤外線シーカーも備えている。だが、IRシーカーはあくまで補助用なためこれだけでは精度はスティンガーに劣る物と考えられる。
この欠点を解消すべく、2007年から改良を加えた個人携帯地対空誘導弾(改)に調達が切り換えられている。
ライフサイクルコストの低減や、シーカーの変更、夜間照準具の採用による夜間交戦能力の向上、信号処理能力の向上による低高度目標対処能力の改善、煙の少ない推進薬の使用等の改良を加え生存性の向上、さらに携行SAMとしてはまたまた世界初で初めて赤外線画像(IIR)誘導方式を採用している。これにより夜間や悪天候時でも最大限の戦闘能力を発揮することが出来るようになった。
また、外見はスティンガーと非常に似ているが、IFFアンテナ(筒の前方右上のカゴみたいなヤツ)の肉抜き穴の形状で見分けることが出来る。スティンガーは1段。91式PSAMは2段になっている。
91式PSAMの調達と配備
91式PSAM(改)は、2013年までに77セット取得・運用コストの低減を図り、一式4550万~6150万となっている。
前任のスティンガーに比べると、はるかに高い価格になっているが、スティンガーの納入が大幅に遅れ、部隊防空に穴が開いていたことを考えれば、一概に高いのが悪いとはいえない。
現在、陸上自衛隊の普通科、機甲科、特科など高射特科と後方職種部隊を除く各部隊の自衛用として配備されている。また、1993年から基地防空用に航空自衛隊基地警備隊や海上自衛隊陸警隊に配備されている。
陸上自衛隊への配備は連隊で一本くらいと少ない為、陸自の駐屯地祭より空自の航空祭で目にすることが多い。
関連動画
↓91式PSAM評価試験の模様。なんでこんなものがニコ動に・・・
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そんなもんありませんよね、そうですよね・・・
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関連項目
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- ミサイル / SAM(ミサイル)
- 自衛隊
- 陸上自衛隊 / 海上自衛隊 / 航空自衛隊
- TRDI
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