Digital Audio Workstation (デジタル・オーディオ・ワークステーション)の略。読みは「ディー・エー・ダブリュー」のほか、しばしば英語読みの「ドー」や、日本語読みで「ダウ」とも読まれる。
概要
一般的に、コンピュータを使用した「統合型の音楽楽曲製作ソフトウェア」のことを言う。「統合型」と言われる理由は以下のとおり。
前史
かつてMIDI規格成立~MIDIブームの時代、コンピュータを使用した音楽制作は、シンセサイザーに搭載されたミュージックシーケンサーで直接シーケンス入力するか、ハードウェアシーケンサーおよびソフトウェアシーケンサーを使用してMIDIデータを作成し音源モジュール等を自動演奏することしか手段がなかった。オーディオ波形の編集や発声が可能なソフトウェアは当時も存在したが、それらは非常に高価であるか限定的な物で、 個人が趣味の範囲で簡単に手に入れられるような物ではなかった(金持ち除く)。ツールとしてユーザーに浸透してない故、略称で呼ばれることもなかった。
この時代のコンピュータミュージックと言えばいわゆる打ち込み系、ゲーム音楽やテクノ、エレクトロ系の音楽に使われるのが大半であり、その他の多くのジャンルにおいてはMTRやアナログミキサーなどのアナログ機器を用いてスタジオレコーディングやミキシングが行われていた。
オールインワンの時代へ
その後、音楽スタジオの各制作工程におけるデジタル化が進み、オーディオレコーディングやミキシングのための機材も多くがソフトウェア化、PC上でのエンジニアリングが可能となる。それに伴い、MIDI打ち込みに特化していた「Cakewalk」などの商用シーケンサーにもオーディオ録音・編集機能が統合されるようになり、以降はかつて分離されていた「打ち込み」「マルチトラックレコーディング」「ミキシング」「マスタリング」等々の工程は単体のソフトウェア上で完結できるものが主流となった。それと同時に、かつては「デジタル音楽を作るもの」とされていたDTMが、ロックからオーケストラまであらゆるジャンルの音楽制作に欠かせないものとなった。とはいえアナログ機材も多くのスタジオ、宅録ミュージシャンの間で現役であり、DAWにすべてが取って代わられたわけではまったくない。
今日のDAWは「打ち込みから完パケまで」の一連の流れを(品質は問わず)作業として行うことができるものが (特にソフトウェアDAWにおいては) 多いが、「打ち込みができること」はDAWの必須条件ではないことも覚えておく必要がある(一例として、ARDOUR等が存在)。また実際の音楽制作においてDAW1本ですべてを完結させることは少なく、ソフト・ハード問わず複数のプロダクトを併用するのが一般的だが、それらのすべての中心となるのがDAWと言えるだろう。
DAWそれぞれの違い
DAWは「音楽制作における一連の工程」をすべてまかなえるものではあるが、MIDIシーケンサーベースで発達したもの、レコーディングツールから派生したもの、ループシーケンサーとして登場したものなど、それぞれの発達の歴史に応じて長所・短所がある。インターフェースにも大きな違いがあり、DTMで音楽制作を行う人間はそれぞれこだわりを持ってソフトを選び、使っている(たとえば中田ヤスタカやZUNはCubase、コナミ作曲家陣はLogic、畑亜貴や宇多田ヒカルはDigital Performerユーザー)。
現在はWindows系ではSONAR、Cubase、Mac系ではLogic、次いでDigital Performerが主流で、レコーディングスタジオなどではPro Toolsが根強い人気を持つ。また、作曲家やアレンジャーがエンジニアと同じソフトを使うとは限らないこともあり、各DAW間でデータのやり取りを円滑に行うため、アシッダイズWAV、REX、OMFなどのファイルフォーマットや、ReWireなどの同期規格、VSTなどのプラグイン規格と、汎用性を重視した規格が多く策定されている。
DAW以外の選択肢
DAW以外の音楽制作に関するソフトウェアは、その種類によって以下のように分類されている。
- MIDIデータの打ち込み = MIDIシーケンサー /MIDIエディター
- オーディオデータの編集 = 波形エディター/Audioエディター (Windowsにおいてはwavエディター)等
- 他、用途により多数
ニコニコ内で名前を見かけるDAW (ABC順)
メーカー製品
MIDIブーム時代からDTM文化を支えた国産メーカーであるYAMAHAがSteinbergと提携して海外製DAWの代理店業務に専念し始めたため、現在商用DAWで純国産と呼べるのは事実上INTERNET社のSSWぐらいである。丸カッコ内の表記は基本的にベンダー/ブランドであり、国内パブリッシャーについては記載しない。 角カッコの[W]はWindows専用、[M]はMacintosh専用、[H]はWindowsでもMacintoshでも問わないもの(ハイブリッド)を示す。
- Band-in-a-Box (PG MUSIC) - [H]
- Cubase (Steinberg) - [H]
- Performer / Digital Performer (MOTU [Mark of the Unicorn]) - [H]
- FLStudio (Image-Line) - [W]
- GarageBand (Apple) - [M]
- LIVE (ABLETON) - [H]
- Logic (Apple) - [M]
- MIXTURE (INTERNET) - [W]
- Music Creator(Cakewalk) - [W]
- MusicMaker (MAGIX / AH-Software) - [W]
- Pro Tools (Digidesign) - [H]
- Reason (Propellerhead) - [H]
- Record (Propellerhead) - [H]
- Samplitude (MAGIX) - [W]
- SOL (YAMAHA,廃盤) - [W]
- SONAR (TASCAM(Gibson)) - [W]
- Singer Song Writer (INTERNET) - [W]
- Studio One (Presonus) - [H]
- Tracktion (Tracktion Software) - [H]
- Vision / Studio Vision (opcode,後にGibsonに買収後廃盤) - [M]
- XGWorks (YAMAHA,廃盤) - [W]
フリーウェア/シェアウェア
- ARDOUR (GNU フリーウェア)
- Music Studioシリーズ→Music Studio Producerを参照
- REAPER (Cockos) → v0.999 までは無料で、それ以降は有料。詳細は記事を参照。
- KRYSTAL (Presonus Studio Oneの原型)
- LMMS GNUライセンスで作られたフリーウェア。Win,Linuxで動作
- 他
関連商品
関連項目
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