TGV(テジェヴェ)とは、フランスの国鉄が誇る高速鉄道の名称である。
TGVとは「Train à Grande Vitesse」、「高速度列車」の略称である。
概要
当時、航空機や自動車等の競合交通機関に押されて「斜陽」とみなされていた鉄道を活性化させるため、日本で新幹線の計画が進んでいた1960年代に構想が始まったと言われている。
具体化したのは1967年のことで、最初はガスタービンによる発電機を搭載した機関車を用いる予定であり、実際に1972年にはその試作車も製造された。が、翌年起こったオイルショックの影響で石油消費が激しいガスタービン車を用いることは現実的ではないと判断され、フランスが誇る原子力発電所からの電力を用いた電気機関車方式に計画変更された。
1981年に初の路線である南東線が開業。パリ・リヨン間を最高速度260km/h(後に270km/h)で営業走行し、この日よりTGVは「世界で営業最高速度が最も高い列車」の栄冠を手に入れることとなった。
その後、高速運転可能な専用線(LGV)として南東線に続き、大西洋線、地中海線、北線などが順次開業。TGVは専用線以外にも在来線へ乗り入れ、隣国であるドイツ・スイス・イタリア、更にイギリスやオランダにまで乗り入れをしている(ただし海外へ乗り入れる列車の場合、システム上はTGVであっても、諸事情からそう名乗らず「ユーロスター」や「タリス」といった別の名称で運行されていることがある)。
後の技術進歩により、現在では営業最高速度は320km/hまで引き上げられている。将来的には360km/hへの営業速度向上を予定しており、また高速試験走行では2007年に574.8km/hと、リニアモーターカー並の速度を出したことさえ有る。
マスコミ等では同じ高速運転を行う日本の新幹線に見立て、TGVを「フランス(版)新幹線」と報じることもあるが、新幹線と比較した場合、
- 日本の新幹線はモーターを数多くの車両に搭載して編成全体の粘着力を高める「動力分散方式(電車方式)」を採用しているが、フランスのTGVは高出力の電気機関車で無動力の客車を挟み込む「動力集中方式(機関車方式)」を用いている。
- 日本の新幹線は新在直通区間(山形新幹線・秋田新幹線)など一部例外を除き、原則として在来線とは完全に切り離された独自の線路を用いて運行されているが、フランスのTGVは都市部など高速運転を行わない区間では在来線への乗り入れを行い、高速運転を行う区間だけ専用線(LGV)に乗り入れる方式を採用している。
- 高速新線についても、日本の新幹線は住宅密集地を通ることが多いが、フランスの場合は上記の理由もあってほぼ田園など人口希薄地帯に敷設されている。
- 日本の新幹線を始めとする大半の電車は、1車体に各2つの台車を履いたボギー台車方式であるが、フランスのTGVは小田急ロマンスカーやE331系電車と同様、1台車を2車両で共有する連接台車方式を採用している。
- 日本の新幹線は輸送力を稼ぐため、車体規格を在来線車両よりも大きくして1列に5人が(上記の新在直通運転用車両は除く)座れる構造にしているが、フランスの場合は絶対的な輸送量がそこまで多くないこともあり、1列は4人がけであり、軽さを重視して車体も在来線車両より小さめにしてある。
等々、システム的な相違点が大きいため、「フランス新幹線」の呼称は不適切とみなされる事も多い。
TGVはその技術を積極的に海外へ売り込むことにも熱心であり、ヨーロッパ以外でもTGVのシステムを用いた高速鉄道が敷設されることがある。アジアでは韓国のKTXが該当する。また車両のみの輸出となったが、アメリカのアセラ・エクスプレスもTGVの車両をベースに設計された(客車はボギー台車構造となっているが)。
尚、製造元であるアルストム社ではTGVの後継車両も開発している。こちらはAGVと呼ばれており、車両も動力分散方式を採用するなど大きな違いがある。イタリアで導入される模様。
関連動画
関連項目
- フランス
- 高速鉄道
- 新幹線(日本)
- ICE(ドイツ)
- ユーロスターイタリア(イタリア)
- AVE(スペイン)
- KTX(韓国)
- 台湾高速鉄道(新幹線と受注を争った)
- TGV12
- ETR575
- 海外鉄道
- 鉄道車両一覧
- 鉄道事業者・路線一覧
- 2
- 0pt